動画制作で過去を語る

 「さて、動画作るか。」


 コラボ配信の前に動画を出しておきたい。


 リスナーを休ませる気などは毛頭ない。


 とことん僕を楽しんでほしい。




 動画制作を進めていく。


 前回は誘拐されたところで終わらせた。


 これは小学生の頃に誘拐された実体験をもとに作った。


 まあもちろん本物の僕の話だが。




 実際の誘拐は父の会社のライバル企業によるものだった。


 当時の双方の会社の前後の状況や連れ込まれた場所、実行犯等から総合的に判断して、ライバル会社によって仕掛けられたものだということは確信しているが、結果的に追い詰めることができなかった。


 さすがに動画内でこの通りにしてしまうと今後この企業を出さないといけないので、今回で完全に事件を解決させることにした。




 筋書きは、実際が会社の信頼していた社員に裏切られて反社会的勢力と結託されたというものに対し、動画内では家の使用人がライバルの家によって買収され、連れ出されたところをさらわれたというものにした。




 この経験は本当に僕に冷静であることの重要さを植え付けた。


 普通は人間を誰も信じれなくなると思うだろうが、僕の場合は少し違う。


 人はどういう時にどう動くのかということについてよく考えるようになった。




 普通、裏切るということには大きな心理的な障壁が発生する。


 この障壁を乗り越えるには、恨みや恐れと言った大きな心情か金銭や地位などの大きな利益が無いといけない。


 それがどう発生するか、今発生しているものは何かということを見極めることによって対策が立てやすくなる。


 だから人間を信じないのではなく、人間のプログラム性を信じているというのが正解だ。


 情も何も無い考えだともいうかもしれない。




 まあ、そんな僕の性格を形作ったイベントを語らないわけにはいかない。


 できるだけ筋は合わせるように動画を作っていく。


 使用人の裏切りから、相手の家へと連れていかれ、監禁される。


 使用人からの侮りと裏切った際の使用人が受け取る見返りについて聞かされ、どういう思考回路で裏切るように仕向けたかを考えていく。


 結果的には家からの救出が来て助かったが、小学生にして冷静な思考を身に着けていく様子を順序立てて描いていった。




 その後、中学生に進み、いじめに遭う様子も描いていく。


 これもまあ実体験だ。


 新興の家が、名門の家の出身である僕に対して張り合っていじめてきたというものは、そのままの構図を描いた。


 逆のパターンはよく物語として描かれるものではあるが、実際のところ名門の家の場合はそれによって家同士の関係を壊してしまうことを非常に恐れるため、明らかないじめを行わせないように躾ける。




 新興の家の場合、そういった背景を親自身も理解していないため、そういう方面で教育を行うことができずにいじめを発生させてしまうということがしばしば起こる。


 新興の家は名門とのつながりが薄いために、新興の家同士で結束することがよくあるのだ。


 そして結束したことによる全能感がいじめを誘発させてしまう。


 僕の友人たちはかばってくれたが、全能感に突き動かされた者たちを止めるのは中々難しい。




 僕もそれは良く理解していた。


 なので、少しずつ意思の弱いものから崩して行った。


 ある時には利益を持ち出し、ある時には家のつながりによる脅迫も行った。


 結果的にいじめの中心だった者を孤立させることに成功した。


 後は彼らの親に知らせて潰した。


 親が顔を真っ青にして謝りに来る様子は本当に爽快だった。




 まあそう言った様子を、ある程度忠実に再現していく。


 出来上がったところで動画をエンコードし、Youtubeに投稿した。

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