フェイク=リベリオン家本邸見学ツアー②
どんどん部屋内を案内していく。
調度品も細かく描いており、チャット欄からは「描き込みすごいな」とか「2Dでここまでできるなんて絵師どうなってんだ」といった感嘆のコメントが流れてくる。
実際描き込みの量はとんでもない。
一回の配信のためにこれだけの絵を用意すれば、大赤字も大赤字だろう。
MAYAで用意してアニメーションの負担を減らしているとしても限度がある。
視聴者もそれを分かっているからこそ、スパチャを投げてくれているという節がある。
もちろん誰も雇ってないなんて言えないので、そのスパチャを止めさせることなんてできないのだが、決して無理はしないで欲しい…
「スパチャありがとう!ただ君たちが破産しないようにだけ頼むぞ。まだまだ驚かせるような配信を作っていくつもりだからその日まで取っておいてくれ!」
推しているせいで破産しましたなんて聞いたら悲しくてしょうがない。
なまじ毎時エゴサをかけているだけあって、そんなことを呟かれたら絶対に知ってしまう自信がある。
ただ止めろと言うと余計に加速してしまう恐れがあるので、まだまだイベントがあると仄めかしておく。
そう言っている間に、見学ツアーはどんどん進んでいく。
玄関ホールを右に抜けると、こじんまりとした食堂が姿を見せる。
長テーブルには薄水色のテーブルクロスがかけられ、その上から白いレースのテーブルランナーがかけられている。
真ん中には花が活けられ、各椅子の前にショープレートとナイフフォーク、グラスが並んでいる。
奥には暖炉があり、伝統的なイギリス貴族の食堂を再現していた。
「普段はここで食事をしている。既に自己紹介動画で見た人もいるだろう。その場所がここだ。内輪で食事する場なので、パーティー会場とは違ってこちらは少し派手すぎないように作られている。」
そこまで言うと「いや十分金かかってる見た目だろ」「一般家庭はテーブルクロスとか引かないぞ」だとかいうコメントが流れる。
え、テーブルクロス引かないのか?テーブル汚れないのか?
「ま、まああまり普段見せない場所を見せるのも恥ずかしいから次に行こう!」
ごまかして次に行く。
食堂を抜けると、広い廊下に出た。
彫像や絵画が沢山飾られている。
「ここは画廊だ!先祖が描かせた肖像画や収集した絵画・美術品などを展示している。うちは特に色んな名画をそろえているので他の貴族にも良く自慢するぞ。」
フェードを多用しながら各々の美術品をピックアップしていく。
もちろんこれらのものは自分で一から描いた。
ターナーやコンスタンブル、ロセッティやミレイといった有名な当時のイギリス絵画の作品を読み込んで、自作でアレンジした。
そして画廊を抜ける。
本棚やピアノが置かれている部屋に出た。
そう、図書室だ。
「こっちは図書室だ!書斎は仕事部屋なのでまた違う部屋にある。こちらは父上が良く使うので紹介できないが、代わりにここを見ていってくれ。」
天井まで届く本棚が壁一面に敷き詰められており、唯一本棚が並んでいない側面はガラス張りとなっていて光がそこから入ってきている。
白く染められたピアノは真ん中に置かれていて静かにその存在を主張していた。
せっかくだから一曲演奏していこう。
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