フェイク=リベリオン家本邸見学ツアー①

 チャット欄が収まったところで、次の出し物に移る。


 「さて、次のイベントに移らせてもらおう!次は我が家の案内だ!」


 せっかく作り込んだのだ。


 見せないのはもったいない。




 「我が家はイギリスの貴族の邸宅だけあって広いぞ!なにしろこのようなパーティーが開けるくらいなのだからな。ロンドンにある住居とは違って領地にある本邸だ!楽しんでいってくれ!」


 イギリス貴族は現代、様々な状況に置かれている。


 ロンドンの一等地に土地を持つ貴族は大体世界有数の大富豪となっているが、逆に片田舎に土地を持つ貴族は、固定資産税を払えずに没落していった家も多い。


 かつての城や邸宅を一般公開することで、その観光で得た収入でなんとかやりくりしている家も少なくない。


 フェイク=リベリオン家はもちろん架空の存在だが、ロンドン以外でこの邸宅を一般公開せずに維持でき、財力を見せつけているので、他の事業で大成功しているという部類に入れられるだろう。


 まあ、それはさておき。




 「さっそく案内していきたいと思う。まずは外に移動しよう。」




 会場から画面をフェードアウトさせ、邸宅全体を俯瞰できる位置に移動する。


 ジョージアン様式という18世紀ごろに流行した建築様式で建てられたカントリーハウスであり、テラスハウスという同じ形の窓が画一的に並ぶ様子が、とても綺麗に映えている。


 ちょうどこの建築様式が流行したのが産業革命の時代であり、その時に勃興した、もしくは財を成した貴族だということが覗える。


 レンガ造りの褐色と窓枠や柱を飾る白のコントラストがとても印象的だ。




 庭もとても造り込まれたものとなっている。


 ストウ庭園やチャッツワース・ハウスの庭園といったものに代表される、当時の流行の最先端だった風景式庭園の様式で造られており、大自然の優美さが追及されている。


 ガゼボと呼ばれる四阿(あずまや)も造られ、いかにもな貴族の邸宅というものを演出している。




 「中々綺麗な家だろう?普段はここで生活していて、用事や仕事のときはロンドンにでかけるというスタイルだ。もっと近くによって見てみよう。」




 入り口の方へと近づいていく。


 純白のファサードが付いた玄関が、その威容を示しながら出迎えてくれる。


 傍には黒塗りのロールスロイスが光沢を持って置かれていた。


 


 「普段はこの車を使って移動している。これで駅まで乗ってロンドンへ向かったり、空港へ向かったりしている。さあ、中へどうぞ。」




 そして玄関が開かれ、中へとカメラが移っていく。


 玄関ホールはとても広く、その広さに圧倒される。


 上から豪華なシャンデリアが垂れ下がっており、正面には巨大な風景画が飾られている。


 両端から上がっていく階段も見事で、手すりの装飾なども目を引く。


 床も大理石でできており、綺麗に磨かれたチェックがシャンデリアの明かりによって輝いていた。




 そして僕は正面の絵の下へと歩いていき、振り返る。


 自然な挨拶が口をついて、出てきた。




 「ようこそ、フェイク=リベリオン家本邸へ!」

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