第30話

 現場に到着し、キヌは辺りを見回す。


 視界には動物の影はなかった。

 しかし、どこか嫌な重苦しい空気がある。


 カラフルマリーズが近くで戦っているはずなのに、それらしい物音がしない。

 背後で爆発、振り返ると爆風とともにスーパーヒロインが吹き飛ばされてきた。


「大丈夫ですか?」


 キヌが抱きとめた人物は、カラフルマリーズのリーダー、バイオレットケイトだった。


 スーツの傷が戦闘の激しさを物語っている。にも関わらず、バイオレットケイトはたおやかな笑顔で答えた。


「そなたたちは、ラブ・ストライクズですわね」

「名前、知っていてくれてるんですか!?」

「当たり前ですわ。妾たちのライバルですもの。少し油断してしまいましたがこれからですわ。そなたたちは逃げた動物をお願いしますわ」


 バイオレットケイトは立ち上がり、モデルのような立ち姿で髪を払いそう言う。


 キヌは顔を上げてバイオレットケイトの目を見つめる。


「いいえ、ここは私たちに任せてください。カラフルマリーズさんは動物のほうをお願いします」

「そなたたちが?」


 バイオレットケイトは目を細めてキヌを見返した。


 キヌの横にハナ、タエ、ウメ、トキが集まる。


「あた、私たちが、勝ちます!」


 ハナが僅かに声を震わせて言った。


 バイオレットケイトは、スーパーヒロインのトップであるという威厳と貫禄を兼ね揃えた目でラブ・ストライクズを見つめる。


 自分たちだって負けてない。

 以前、郷里に尋ねられた時だってそう思った。


 キヌが奥歯を噛みしめて見返すと、バイオレットケイトはフッと笑みを浮かべた。


「そう。そういう時なのですね。わかりました。バックアップは妾たちにお任せを。強いですわよ?」

「負けません!」


 タエがそう答えた。


 怪獣に向かい、ラブ・ストライクズが並ぶ。


「悪を切り裂く、ラブことタエ!」

「恐怖を止める、点ことウメ!」

「友を守る、ストことハナ!」

「愛で包む、ライことキヌ!」

「遊び呆ける、クズことトキ!」

「溢れる愛で胸を打つ、五人合わせて……」

「「「「「ラブ・ストライクズ」」」」」

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