第40話〜勇者狩り
「帝国からの返信はまだか!」
「報告後の返信はまだありません!」
「バリスター様は勇者候補だ。村人程度には傷付ける事も出来なかったはず…。噂の勇者狩りの可能性がある。目撃者を探せ!」
騎士団の一行は蜂の巣を突いたような騒ぎに見舞われていた。
その騒ぎは昨晩から続き、早朝まで収まる事なく続いている。
この騎士団の副団長を務めている男はひっきりなしに飛び込んでくる報告を聞き、場当たり的に指示を出して行く。
ただでさえ自分たちのトップとも言える騎士団長が何者かに害され、しかもその団長は自分たちでは及びも付かない実力者だったのだ。
冗談や洒落ではなく、騎士団長クラスの実力者であれば、本気を出すまでもなく村人を含め騎士団が単騎で全滅させられる力が十分にある。
そんな人物をあっさりと暗殺してのけるような、帝国に敵対するような人物がいるのだという事実が恐ろしい。
「通信用の魔導具から返信!半日ほどで調査隊が到着するそうです」
「目撃者ありません!凶器も見つかりませんし、バリスター様と護衛の者の死体には首の切り口以外の外傷は見られませんでした」
目撃者はなし、凶器も不明。
昨晩定期報告に訪れた部下が死体を発見するまで、誰一人としてバリスター=ドラコとその護衛たちが死んでいることに気付かなかった。
バリスターを含め馬車に乗っていた護衛6名は全員首を斬られて即死。
驚くべきことに、馬車のすぐそばに立っていた者たちは誰一人として馬車の中の惨状には気付いていなかった。
音や振動の漏れない特殊仕様だったとはいえ、警備を嘲笑うかのように護衛を含めた7名は絶命していたのだ。
護衛には万が一のために異常を外に知らせる為の魔道具や警備の持つものと連動したベルなどがあったというのに、それが使用された形跡もない。
本人の隙を突かれたか、もしくは反応する事も出来ないほどの早さで仕留められたという事だ。
護衛の実力は冒険者で言うところのB級の上位程度はあり、バリスター本人に至っては勇者候補と言われるだけあってA級冒険者並みの実力はあった。
それを誰にも気付かれる事なく抵抗の暇もなく暗殺して見せる者など、それこそ勇者並みの実力がなければ不可能だ。
「報告いたします。バリスター様の指示で貨物と共に馬車に乗せられていた、【鑑定】スキル持ちの男の姿が消えていました!どうやら騒ぎの隙をついて脱走したようです」
次から次へと問題が起こる。
副団長の男はあたりのストレスに頭を掻きむしりたくなる衝動に晒された。
ただでさえ、行方不明の村人がバリスターたちの死体のすぐそばで拘束された状態で見つかったのだ。
状況的に混乱している。
勇者候補死亡、村人誘拐、鑑定持ちの脱走。
騎士団を襲った混乱はとどまることを知らなかった。
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