第34話〜とてもほっこりした。
中略。
冒険者になりました。
G級冒険者ジミー=ケンイチ。
俗にいうゴブリン級、らしい。
G級なんて聞くと某ゲームでは結構な実力のように思えるのに、まさかのゴブリン級だった。
ちなみにこの国では別に苗字があっても貴族というわけではないため、フルネームで登録した。
「ていうか、いい人たちだったな…」
冒険者たちは一見すると荒くれ者ばかりだったが、初心者にはそれはもう丁寧だった。
いわゆるテンプレの初心者潰しなどはなかった。
どころか、
「おいおい、そんな装備で大丈夫か?」
「ふん、ちょうど買い換える所だったんだ、捨てるのもあれだしくれてやるよ」
「ったく、素人がいきなり冒険者だと?ここいらだと門を出て西側の森が初心者にはお似合いだぜ」
「ああ、雑魚モンスターばかりだから、素人が経験積むにはもってこいだろうよ」
などと、頑丈そうなナイフや初心者向けの狩場まで教えてくれた。
聞いたところによると他の国や街の冒険者の中にはまさしくテンプレな冒険者たちも多くいるそうなので、ここの冒険者ギルドにいる冒険者たちがずば抜けてお人好しなだけらしい。
謙一はとてもほっこりした。
(にしても、やっぱ冒険者なだけあって色んなスキル持ってるし、レベルも高いな)
さりげなく【鑑定】を発動しまくっていたので、側から見たら目線の忙しない奴に見られたことだろう。
もしかしたらそれで素人と判断されたのかもしれなかった。
素人で間違いはないが。
それはさておき、視界に入る限りの冒険者のステータスは観察することができた。
中にはG級の冒険者成り立てと思しき者もいたが、やはり冒険者になるだけあって戦闘に有利そうなスキルを持っている者が多かった。
レベルも平均すれば50ほどで、1番低い者でも20はある。
興味深かったのは人と獣人、その他の種族だと多少ステータスの表記が変わっていたところか。
名前:トモ????(?)
種族:人族(?)
職業:???、???、???
状態:???、???、???
称号:??の契約者
レベル:???
スキル:?????????
備考欄:▪️▪️▪️
「…え?」
不意に不思議なステータスが表示された。
すでに冒険者は全て【鑑定】したため、冒険者ギルドの至る所を視ていたのだが、誰もいなかったはずなのにトモ?という人のステータスが表示されたのだ。
ほとんどが???で埋め尽くされた、異様なステータス。
名前と種族にすら?が表示されている。
直前まで視ていた場所を見てみるが、そこには依頼の貼られたボードの掛けられた壁しかない。
近くには冒険者はいない。
トモ?という人物など存在しない。
バグだろうか?
いや、モンスターなどいる世界なので、もしかしたら幽霊のような者がいたのかもしれない。
「……っ⁉︎」
視界の端に白いものが見えた気がした。
しかしそこには何もない。
寒気を感じた謙一は外に出た。
依頼の一つでも受けようかと思っていたが、そんな気分でもなくなった。
辺りを見渡し、そしてため息をつく。
【恐慌耐性】のおかげで精神は落ち着いているが、疲労までは無くならない。
気疲れが溜まっていたのだろう。
謙一はとりあえず今日の宿でも探そうと大通りに足を向け、
「危ないぞ!」
走ってくる馬車に轢かれそうになる少女を見つけた。
そして……
そして冒頭の牢屋の中へと戻る。
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