第33話〜いざ、冒険者ギルドへ!

街の名前はスーラといった。


街に入る際に身分証も何も持っていなかったので、とにかく異世界テンプレにありがちな記憶喪失&盗賊に襲われて身ぐるみを剥がされた設定で押し通す。


犯罪者や指名手配されている人物であるかどうかの確認と、人相や特徴、魔力などの記録を取られ、さらにはなけなしの所持金も街への入場料などで消えた。


そこで謙一は【鑑定】スキルの所持者が少ないことと、同様の効果を発揮する道具などは相当貴重なことを知る。


「よし、俺の冒険はこれからってね!」


思えば、これがフラグだった。




「うちの宿はどうだい!他より安くて飯も出るぞ!」


「ちょっとそこのお兄さん!冒険者ならうちの店に寄っといでよ」


「焼きたてのピッグモスの串焼きだよ!」


街に入って大通りを進んでいくと、喧噪に包まれて圧倒された。


前の世界というよりは日本にない活気だ。


海外の露店のノリに近いかもしれない。


「異世界に、来たんだなぁ」


人混みの中には鎧を着た物、背丈が三メートルを軽く越す者、明らかに人外と思しき鱗に覆われた者など。


半数以上は人だが、それでも多種多様な種族が入り混じっていた。


「うお、あれは本物のケモミミ少女じゃん。あれは猫科の獣人か?あっちは…馬?ケモナー垂涎ものだな。てか結構人寄りなのとほぼ獣なのが混じってるな」


スーラの街は豊かな森の資源と山々に挟まれる形で存在し、他の国々の仲介国の橋渡し的な位置としても利用されるため、商人や旅人など、様々な種族が訪れる街である。


帝国からは国を跨いでいる関係で獣人への差別意識も薄い。


その為スーラの街で働く獣人や亜人族は多い。


謙一はひたすら目に付いたものに、人もモノも関係なく【鑑定】を発動する。


「いろんな種族がいるもんだな。エルフとかはやっぱ世界樹の森とかに住んでて出てこないのかな。鍛冶屋に行けばドワーフはいるのかね」


防具店や武器屋など、日本にはなかった店を巡り、とにかく異世界の街並みを歩き回った謙一。


途中武器屋でボロいナイフや剣などの金属を小銭程度で売り払い、商品について質問したりすることで値段や物価について把握していく。


「やっぱ異世界にきたらまず貨幣と物価の把握だよな」


この世界の貨幣は大まかにはどこの国でも共通のものを扱っていた。


どうも何百年か前まであった大きな戦争が終わり、そこから段々と統一されて行ったらしい。


といっても国によって硬貨の絵柄やデザインに違いはあり、国を跨げば多少価値に変化はあるようだった。


ちなみに基本的な貨幣は7種類。


銅貨=10円

鉄貨=100円。

鋼貨=1000円。

銀貨=1万円。

金貨=10万円。

白銀貨=100万円。

白金貨=1000万円。


もっともこれは謙二がおおよその感覚で合わせただけで、銅貨8枚もあれば串焼きが買えるし、日用品ならば鉄貨か鋼貨で、庶民レベルだと銀貨はあまり使われない、というか持っていないようだ。


ここら辺は身分なども関係しているのだろうかと謙一は串焼きを食べながら考える。


ちなみにこれはピッグモスというモンスターの肉を串焼きにしたもので、銅貨15枚で二本買えた。


基本的に硬貨は10枚でセット。


つまり銅貨が10枚あれば鉄貨1枚に、鉄貨10枚で鋼貨1枚と同等らしい。


もっとも両替などをすると手数料がかかるし、どこの国の貨幣かでその価値も変動するらしいが。


「よし、腹も膨れて……はいないけど、とりあえずは行くか。冒険者ギルドへ!」

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