第31話〜強くてニューゲーム

白い光が視界を埋め尽くす。


2度目の感覚が引き潮のように引いて行き、目を開くとそこにはどこかで見たような森が広がっていた。


『同じ場所、同じ時間に転移させといたぞぃ』


自称神の声が頭に響き、そして繋がりが途切れたことが感覚で分かった。


とりあえず謙一は【鑑定】スキルを発動する。


名前:ジョージ=ミート=謙一

種族:人族(異世界人)

職業:無職

状態:精神安定

レベル:16

スキル:【鑑定】【言語理解】【恐慌耐性】



問題なく【鑑定】スキルは発動し、謙一のステータスが表示される。


スキルの欄には【恐慌耐性】が加わり、状態には【精神安定】と表示されていた。


「レベルもスキルの熟練度もそのままで、新しいスキル。これが強くてニューゲームってやつか」


【恐慌耐性】による精神安定の効果のおかげか、まるで自室で寛いでいるように落ち着いている。


冷静に、ありのままに、今起こっている事と¨前回¨の出来事の事を思い出すことが出来る。


「あー、今だから分かるけど、結構俺混乱してたんだなぁ」


1周目の世界ではほとんど現実逃避気味に、半ばゲームだと無理やり思い込もうとしていたようにも思える。


あり得ない現実に、創作を自分に投影して、都合のいい事だけを見ていた。


こうして辺りを見渡してみれば森の木々は紛れもなく本物で、五感に触れる全てが現実だというのに。


肌で感じる森の空気、木々の濃い臭い。


耳をすませば小鳥のさえずりや虫の鳴き声が聞こえてくる。


ぴょ〜ぴょ〜と間抜けな鳴き声をあげて飛んでいる小鳥がいる。


種族名:マルモ鳥

性別:♀

レベル:2

状態:

スキル:【環境適応】【托卵】



【環境適応】:様々な環境に適応することが出来る。


【托卵】:他種族の巣に卵を紛れ込ませることが出来る。



鑑定しようと思ってスキルを使ってみれば、¨違和感なく¨使うことができる。


違和感がないことがおかしい。


前回は異世界に転生した驚きと喜びのせいで思い至らなかった。


¨都合が良すぎる¨。


落ち着いているからか、色んな事に気付くことができた。


「何はともあれ、とりあえず森からは出ようかな。多分今のレベルじゃシャドウウルフには勝てないだろうし」


どちらが森の出口だろうかと歩き出した謙二だったが、不意に甲高い悲鳴のようなものが聞こえて来た。


「そういや時間も場所も同じ場所だっけか。じゃあとりあえず、ゴブリンでレベル上げから始めますかね」

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