第24話〜敵をバッサバッサなぎ倒す

さぁやってきました異世界!


どんな冒険が待ってるんだろう。


オラ、ワクワクすっぞ!




白い部屋で光に包まれて、気がついたら俺はどこかの森に立っていた。


最近のテンプレのパターンだな。


きっとこの後どこからか悲鳴が聞こえてきて、見に行くと盗賊とかモンスターに襲われてる女性、もしくは商人かに出会うに違いない。


そしてそこに華麗に登場して相手をバッサバッサとなぎ倒す俺!


そこから冒険が始まるわけだ。




キャーー!!



おお、さっそくか!


まだこっちはスキルの確認も出来てないってのに!


まさかこれがテンプレ主人公補正ってやつかな?


いくぜ、待ってろよ!


俺の冒険はこれからだ!






はい無理ー。


ないわー。


確かにモンスターに襲われてるっぽいやつはいたよ?


剣を構えてゴブリンの集団に奮闘する、遠目でも胸が大きくてぱっちりおめめの騎士風の女性?がね?


でもあれ人間じゃないわ。


ボブゴブリン(♀)だったわ。


近くに大量の普通のゴブリンの死体と、たぶんつがいのオスのボブゴブリンの死体が転がってたわ。




ゴブリンたちは何ていうか、緑色の皺くちゃの塊っていうか、餓鬼そっくりの見た目だった。


大きさはたぶん90センチくらい?


たぶん拾ったり奪ったりしたボロボロで汚れた防具をつけてて、同じくボロボロな剣とか棒とかを振り回してる。


【鑑定】スキルを使って見たけど、こんな感じ。



種族名:ゴブリン

性別:♂

レベル:12

スキル:なし



それでボブゴブリンの方はこんな感じだ。



種族名:ボブゴブリン

性別:♀

レベル:21

スキル:【剣術】



ボブゴブリン(♀)の方は緑色の肌をした人型生物?


とりあえずゴブリンの身長が130センチくらいまで成長して、皺くちゃだった顔とか皮膚が多少人間に近くなった感じ。


それでもなんか気持ち悪いな。


粗末な布切れとかで局部を隠してるゴブリンと違って、獣の毛皮の服っぽいものを着てるだけ多少は知恵もついてるのか?




とりあえず【鑑定】スキルだけど、最低限の情報しか分からないっぽいな。


ゲームとか小説にあるような【HP】とか【MP】とかの表記はなし。


攻撃力とか耐久力とか、そういった詳細は分からない。


まぁあのヒゲの長い神様?の話の中には熟練度とかあったから、使い込んで行けばもっと詳細まで分かるようになるんじゃないかな。


一応【鑑定】したいと思ったら発動したから、一々「鑑定!」って叫んだりしなくていいのは助かったな。


まぁスキルってのは技能が一定値を超えると発現するこの世界の恩恵みたいなものらしいし、わざわざ言葉にしないと発動しないんじゃ剣を振るたびに「剣術!剣術!」とか言わなくちゃいけなくなって不便だよな。


それと【鑑定】スキルはあんまり遠くのものには使えないみたいだ。


たぶん距離で七メートルくらいか?


まぁ検証が必要だな。


あ、ちなみに俺のもう一つのスキルである【言語理解】だが。


まさかのゴブリンたちの会話まで理解できてしまった。


なんかグキャグギャ言ってるのは聞こえるんだが、それがなんとなく意味が分かるようになったというか。


初めて外国語を聞いたときは理解できない音でしかないが、意味が分かると単語とか文章で意味が通じるようになるというか、とりあえずなんか不思議な感じだ。


例えばさっきから聞こえてくるゴブリンたちの会話がこんな感じだ。



グキャグギャ!

「いい加減諦めな!」


グキャギャ、グギャ!

「そうだそうだ、諦めろ!」


ギャギャググギャアァ!

「さっさと降参して俺らといいことしようぜ!」


グキャギャギャ、ギャクグ!

「あんたたちみたいな低俗な奴らに、屈したりはしないんだから!」




うん、聞かなきゃよかった。


というかモンスターの言葉なんて理解できない方が良かったわ…。


なんとなくでも内容が理解できてしまうせいで、野蛮な男たちに貞操を狙われる強気な少女みたいな嫌なシチュエーションが理解できてしまった。


とりあえず、この場は去ろう。


ボブゴブリン(♀)を助けてそこから始まるラブロマンスなんて、誰も望んでない。


それによく考えたら俺、丸腰だし。


敵をバッサバッサなぎ倒すとか、【鑑定】と【言語理解】しかない俺にはハードル高すぎぃ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る