第21話〜犬人族のコウユウ⑦
その後。
ボクは無事、とは言えませんが、家族の元へと帰ることができました。
途中戦闘に巻き込まれたり、捕まった仲間たちを解放したり、帝国の騎士団に追われたり、色々ありました。
でも、生きて帰ってくることができました。
正直なところ、ボクは最初から最後まで足手まといで…。
単なる偶然ではあるのですが、ユキさんやテルンさんの主人さまであるトモさんは、目的とは別にボクのことを助けるために行動してくれていたらしいのです。
なんでも偶然森で兵士に追われていたお父さんたちを助けて、そこでさらにボクの事を聞いたのだそうです。
トモさんは帝国、というか勇者について調べているようでした。
物語にも出てくる、実在する偉人を。
あ、トモさんとは直接話してません。
簡単な話をテルンさんに聞いただけです。
それも中途半端なところでユキさんにテルンさんがお仕置きされて終わってしまいました。
なんでも、口が軽すぎるのだとか。
「道中気をつけるんだよ」
「はいです!」
「無理はしないのよ」
あれから一週間が経ちました。
トモさんたちのおかげで、ほとんどの仲間は帰ってきました。
今ではようやく犬人族の村が新しく作られつつあります。
トモさんたちはあの日以来この辺りの森で何かやっているようです。
「お別れはすませたかしら」
「「「ワフッ⁉︎」」」
いつの間にかすぐそばにユキさんが立っていました。
ボクやお父さん、お母さんは驚いて変な声をあげます。
耳と尻尾が見事にシンクロしてます。
「……。」
そんなボクらの様子を見て、どこか笑うのを我慢しているような顔をしているユキさん。
あ、無表情に戻りました。
お別れ。
そうです、お別れです。
ボクはこのまま犬人族の集落から出て行くことにしました。
別にいらない子として捨てられたわけではないのです。
犬人族は忠義に厚い一族なのです。
命の恩人であるトモさんたちに恩返しをするために、雑用でもなんでもするから連れて行って欲しいと頼み込んだのです。
最初は断られましたが、犬人族のほぼ全員がついていきたいと頼み込んだところ、一人だけならいいと許可をもらったのです。
そこで族長の孫であるボクが、代表してトモさんたちについて行くことになったのでした。
ボクは少ない荷物を持ってユキさんの隣に立ちます。
ユキさん。
ボクより少し年上くらいの見た目なのに、凛とした雰囲気でどこか服従してしまいたくなる気配を持った女性です。
テルンさん。
人族ですが、獣人である僕らにも気さくに話しかけてくれて、この一週間は色々とお手伝いをしてくれた優しい人です。
トモさん。
…あれ?
「わふ…、あの、トモさんはどちらなのでしょう?」
まだ森の奥で何かしているのでしょうか?
なんでも犬人族の住処の周りの森に結界というものを張って、ボクら以外は迷ってしまい集落にたどり着けなくさせるのだとか。
その作業がまだ終わってないのでしょうか?
トモさん。
とても不思議な方です。
目の前にいてもどこかふわふわしていると言うか、目を離したら消えてしまいそうな。
ユキさんと同じく白い髪をしていて、おそらく人族?だと思います。
「トモさんなら私と一緒に戻ってきてるわ」
「わふ?」
ユキさんと一緒に?
っと、いきなり誰かに頭を撫でられました!
お父さん?
いえ、違います。
お母さんでもないです。
ユキさんは目の前にいます。
ではボクの頭を撫でているのは?
「…………。」
トモさんでした!
いつの間に⁉︎
あ、お父さんたちはまだ気づいてないです!
なんでしょう、トモさんて本当にただの人族なんでしょうか?
何はともあれ。
ボクはトモさんたちと旅に出ることになりました。
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