第19話〜犬人族のコウユウ⑤

痛いです。


熱いです。


あれからもうどれくらい時間が経ったでしょう?


一週間?一ヶ月?


背中に押し付けられた奴隷紋のせいで、夜も眠れないです。


奴隷紋についてはあの怖い人ではなく、隣の檻の人に聞きました。


臭いで他にも誰かいることは気づいてましたが、見張りだと思ってました。


でも話しかけてきたその人は、ボクと同じように捕まった人みたいです。


種族は人みたいですが。


なんでもすぱいようぎ?で捕らえられたんだとか。


人族のことはよく分かりませんが、この人は悪い人じゃなさそうです。


臭いが悪い人じゃなさそうです。


ちなみにここはこーりゅーじょと言って、本格的な牢屋に入れる前の罪人が入れられる所だそうです。


ボクは何も悪いことをしてないのに…。


「君が来てからそろそろ二日経つ。時間的にそろそろ夜明けだから、後数時間もすれば連れて行かれるだろうね」


なんと、まだボクがここに来てから二日しか経ってませんでした。


背中の痛みのせいでよく分からなくなってたみたいです。


「師匠がおれが捕まってることに気づいて助けに来てくれるかもしれない。定時連絡が出来なくなってもう三日経つし」


師匠さんというのがどんな人なのかは分かりませんが、ついでに助けてもらえるのでしょうか?


「しかし、ここは少し特殊というか、おそらく正規の勾留所ではないらしいな。君みたいな獣人の子供を攫い、奴隷紋を焼き付けるなんて。…もしかしたら当たりを引いたかな?」


あたり?


なんのことでしょうか。


ボクは質問しようとして、しかしすぐ口を閉じました。


いつの間にか部屋に知らない臭いがあったからです。


「テルン、ここで何をしてるの」


「⁉︎…ユ、ユキさん、いつの間に」


「質問に答えて」


「すいません、ドジりました…」


その人?はとても冷たい声で、でもどこか柔らかいような、怖くないような、そんな匂いでした。


これがボクとテルンさん、そして主人さまとユキさんとの出会いでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る