第8話〜4人

「改めて自己紹介するが、副ギルドマスターからお前達をサポートするよう依頼を受けたディーンだ。こっちはテルン。ギルドホールではこいつが失礼した」


最低限の情報だけのやり取りを心がけながら、ディーンはトモとユキを観察していた。


そして分かったことは、先ほどのギルドホールでのやり取りから、ユキという少女は氷魔法とナイフを扱うということ、そしてトモは喋ることができないということだけ。


ユキは正直華奢という言葉が似合いそうな少女だ。


この辺りでは見かけない、白百合のように白くふんわりとした髪、冷たく透き通った瞳。


どこか獣のような、それも人と共存する猟犬のような印象を受けた。


2人とも旅装で、一見すると冒険者に見えなくもない装いだ。


身体の要所を最低限守るように装着したプロテクターと皮鎧。


しかし圧倒的に荷物が少ない。


背負っていたバックパックには必要最低限の必需品くらいしか入りそうにない。


北の寒い地方には2人のような白髪や銀髪が多いと聞いたことがあるので、そこから来たのかもしれない。


「わたしはユキ。この人はトモ。先ほどの件はわたしの方からも謝罪します。大抵の場合ジャマが入るので、あなたに過剰に返してみせたんです」


鈴の音を転がすような、と表現したくなるような綺麗な声だ。


「なるほど」


確かにトモとユキの組み合わせは目立つ。


おそらくトモだけならば絡まれるどころか、一切気づかれることもなく終わるのだろう。


しかしユキのような少女がいることでトラブルに巻き込まれる可能性が高くなる。


ユキは可憐な見た目で、服装を整えてやればどこぞのご令嬢にも見えるだろう。


まず始めにちょっかいをかけて来たやつを返り討ちにすることで、実力があることを認めさせているのか。


冒険者などの血の気の多い輩はとくに絡んできやすいからな。


「冒険者ならばここから酒場なりに行って友好を深めるんだろうが、俺たちには必要ないな。仕事の話をしようか」


ディーンはそう言って話を始めた。


テルンは最初から最後までほとんど口を出すことはなかった。


トモに関しては、存在を時々忘れられた。

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