第15話
ザ・パーフェクトのモットーは
流れに身を任せて、それを無理やり変えるような疲れることはしない。
自分の性格は好きだし、見た目も可愛くて気に入ってる。
周りがどうなろうと、自分自身は変わらない。
どんな状況になろうと、その中でどう楽しむかは自分の気持ちにかかっている。
異物であるサンシャイン・ダイナの存在も受け入れる。
たとえ彼女が世界征服を目論む極悪人であろうと、ザ・パーフェクトの反応はそれほど変わらない。
「あの。すみません、壁の向こうでも気づくんですか?」
ハート・ビート・バニーがそう口にした。
確かに言われてみるとモニターの中のロボットが壁の向こうの人間の動きにも反応していた。
よく見ているなーと感心してしまう。
ハート・ビート・バニーはいつも人の顔色を伺ってばかりいる。
そんな面倒なことよくするなぁとザ・パーフェクトは思ってしまうが、そのおかげで細かいところに目が行く。
「その通りです。温度による熱感知、微細な音にも反応。最新のテクノロジーがそれを助けます」
「フッ……人間を介護するためのロボットが人類を滅ぼすとは、皮肉なもんだぜ。だがロボットなら思考は単純なはずだ。裏をかけばいい」
「ハンちゃん冴えてるじゃん! 裏いいと思う、あーしも」
サンシャイン・ダイナがハンド・メルト・マイトの言葉に追従する。
ザ・パーフェクトが同じことを言われたらバカにされたと思ってしまうが、ハンド・メルト・マイトの性格とサンシャイン・ダイナの性格が合わさり、絶妙な漫才コンビを見ているようだった。
「バカなのですか?」
博士はもはや何の説明もないただの罵倒をしはじめた。
「ハンちゃんはやめろ。いいぜ、勝負するか? 人間が勝つか。ロボットが勝つか」
ハンド・メルト・マイトの顔には大きな傷がある。
まるでそれを見せつけるかのように長めの前髪をかき分けた。
「よろしい。私はロボットに賭けますぞ」
そう言って博士は白衣についていたバッジを叩きつけた。
そのバッジにどんな価値があるのかまったくわからなかったけど、缶バッジとは違い高級そうな立体感があり、周りの研究員も驚いてるところから、博士なりの覚悟がこもっているのだろう。
「吠え面かいても知らないかんね! みんな、気合入れてくよ。あーしは何すればいい?」
「いいえ、ダイナさんの出番はないです」
ピンキー・ポップル・マジシャン・ガールが冷静に答える。
明らかにピンキー・ポップル・マジシャン・ガールはサンシャイン・ダイナの扱いに困っている。
キャラクターが違いすぎて神経質な彼女にはやりづらい相手なのだろう。
「は? 意味分かんないんだけど」
「パフェさんと一緒に博士を警護してください。連絡なども担当する大事な役割です」
そう言われたサンシャイン・ダイナは返事もせずにザ・パーフェクトの顔を見る。
お返しに舌を出すと、彼女はわざとらしく指を目の下に持っていって泣き真似をした。
元々メイクが濃いせいか、微妙な表情というもの彼女にはあまりない。
そのせいかはわからないけど、感情を表現するアクションが多彩だ。
面倒くさいことにならなきゃいいけど、と思ったがザ・パーフェクトは表には見せなかった。
ロボットが相手ではザ・パーフェクトの能力はまったく意味がない。
ザ・パーフェクトの特殊能力は他人の関節をハックするものだ。
相手が見えていれば、その腕でも足でも相手の意志とは関係無く曲げたり伸ばしたりできる。
ラック・ザ・リバースマンで実験したところ、逆に曲げて骨折させるようなことも可能だった。
近くにいなくても、望遠鏡で覗いた相手や、ライブカメラで見た相手の関節でも動かせる。
二年前から寝食を共にしているゾンビの人形ゾングルちゃんの関節を動かすことで能力を発動してるようにみえるけど、本当はなにもなくてもできる。
こう言った他人に干渉する能力はイメージが一番大事で、媒介を動かすことでイメージしやすくなると超本営の能力研究部の人に言われて以来、ゾングルちゃんを使ってるだけだ。
ゾングルちゃんがなくても能力は使えるということは、チームのメンバーにも言っていない。
相手が人間で一対一であれば最強の戦闘能力だなんて言われたこともある。
火を出したり、水を変形させたりという能力と比べると地味なのは間違いない。
でもザ・パーフェクト自身はこの能力をとても気に入っていて、もしどんな能力でも選べると言われても、またこの能力を選ぶと思うくらいだ。
「ロボットの構造はどうなってますか?」
ピンキー・ポップル・マジシャン・ガールが尋ねる。
博士は口をへの字に曲げてそっぽを向いてわざと無視をした。どうもへそを曲げたらしい。
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