40.ハイウェイの攻防
「げ? もしかして拳銃?」
「そのようだ。まったく……こんなところで出してくるとは」
冷静な受け答えをする琴平の目前では、展開されたシールドが数か所、硬質化しているのがわかった。ガラスにヒビが入ったかのようにバシっと音を立てる。幸い近くに一般車両は走っていない。
「相手の弾が切れたら砲撃する」
「了解。カーブに入る前に決めなきゃ」
「ところでシールドの強度は?」
「ヒビ割れがあまり増えると、割れて効果が無くなります」
「まもなくだ」
「げ」
高見がモニタをバックカメラの映像に差し替えると、微動だにせず粒子砲を構える琴平と、銃撃を受けて今にもひび割れそうなシールドの映像が映りこんだ。後続車はコンスタントに打ち続ける作戦に変えたようだ。
「キリがない。撃つ。合図をしたら一度シールドをOFFに。そのあとすぐ再展開」
「げぇ」
「急ぎたまえ」
「わかりましたよ!」
高見は半ばやけくそになり、シールド操作に手を置いた。前方も気にかけつつ、後方のカメラ映像に集中しようとした。ふと視線を感じたので右を見ると、隣車線を走る車に乗ってる子供がこちらを見ていた。サンルーフから身を乗り出している琴平が珍しかったのだろうか。
高見が苦笑いを返したとき、琴平の声が響いた。高見は慌ててシールドをOFFにする。そして粒子砲が一瞬閃光を発して飛び出していった瞬間を確認し、息もせずに再展開。粒子砲の軌道が流れ星のように宙を切り裂き、まっすぐ後方車両に突き刺さる。音はない。それはやがて高熱を帯びてじわじわと赤茶色に変色していき、中から慌てて人が飛び出してくる様子が暗がりの中でも見えた。そのあとようやく何かが弾ける音が響いた。
高見は運転席の窓を開けて、顔を出す。自分の髪が風に煽られ纏わりつくのがうっとうしかったが、どうでもいいくらいには驚いた。
「敵は撃ってくることに集中しすぎて、こっちも狙ってることに忘れていたようだ。一瞬でもあればこちらは照準を合わせられる。それだけだ」
わざわざ車の窓から顔を出した高見に、琴平が解説をはじめた。聞く気はなかったがなるほどな、とは思った。要するに彼は、ホログラムシールドで歪んだ視界の中でもある程度は手動で照準を合わせていたのである。そして高見がOFFにした一瞬で照準を合わせてトリガーを引いたのだ。放ってしまえば、こちらに飛んでくる銃弾など蒸発するだろう。
そんなことに気づかなかった自分に呆れつつ我に返る。先ほどの一撃で爆発はなかったが、突然の閃光に驚いて停車する車もちらほら見受けられて、これは早く退散しないとヤバイなと、高見は今更実感した。その停車している車を縫うようにして、また一台、追手が姿を見せた。他の一台は姿が見えない。巻き込まれたか退散したのだろう。
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