35.ヤツが来る
琴平の判断のあと、二人が乗った車が暗がりの路地から姿を消すのが見えた。
「了解」拳を握って日向が答えた。そして黒澤を一瞥してから「よろしくね、相棒」と言って勢いよく飛び出していった。
案の定、彼女を狙った砲撃がその後を追ったがひとつは壁を破裂させ、もう一つは黒澤の撃ったグレネードがそれを止めた。
「案外上手じゃないの」それを茶化すように日向からの通信が届いた。黒澤は顔色変えずに返事をする。
「真面目にやって」
黒澤は短くそれだけ言い放ち、電磁グレネードを打ち込んだ。一瞬、局地的に閃光が空気を走る。その光の筋の先に影を見つけ、日向がさらに飛び出す。近い。
(さすがにこの区域で広範囲の爆撃はしてこないか…事を大きくしたくないのは相手も同じなのかしら)
場所が倉庫街なので市街地から距離があるぶん多少の騒ぎは問題にならないだろう。だがそれも時間がたてば経つほど難しくなるし、二人とも長期戦で挑むつもりはなかった。しかし、どういうわけか相手はこちらに時折姿を見せるが、直接攻撃を仕掛けては来ない。不思議に思ってナビを一瞥すると、自分たちと同じ方向へ向かっていることがわかった。
「琴平、注意して。あなた方の車を狙っているみたいよ」
日向が叫ぶと、通信を介して聞こえて来たのは高見の悲鳴じみた声だった。黒澤が冷静に返事をする。
「焦るな、相手は電磁に怯まない。違法オートマタだ」
「ええ、承知してますとも。私たちの足を潰す気なら、そうはさせないわ」
日向が倉庫の角へ回り込むと、まるで彼女を待っていたかのように人影が倉庫の中に消えた。彼女は舌打ちをして黒澤につないだ。
「人型を確認。追いつくよ。一気にカタをつける」
「すぐ向かう」そう言いながら黒澤は暗闇の倉庫街を駆けた。
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