34.簡単すぎる?
「簡単すぎる」
黒澤が意図せず発した言葉が、道を駆けつつ横に並んだ日向にも聞こえたのか彼女も黒澤を見て頷いた。珍しく厳しい表情をしていて、倉庫内に居たときよりも緊張感があった。
黒澤は端末のナビを横目で見る。琴平たちの乗った車が通りの角を右折してくるのがわかった。自分たちがこのまま直進できれば合流できる。頭上をコンテナが通り過ぎるのを待ち、「急ごう」そう言ってスピードを上げようとしたが、しかし瞬間的に足を止める。
急ブレーキをかけた形になり体がつんのめるが右腕を真横に振り上げて日向の体を止めた。実際は彼女の力が強くて体半分が前方に傾いたが、その目の前を猛スピードで何かが横切って行った。その勢いに日向の赤毛がなびき、同じタイミングで左方向から鈍い音が響いてきた。
二人はそれぞれ壁に背を預けて路地の様子を伺った。ナビの通知が、その前方に琴平たちが到着していることを知らせている。急がねばならない。向いでは日向が戦闘用グローブの装着確認をしながら軽くその場で飛び跳ねた。ウォームアップのつもりだろうか。挑戦的な声色で口を開いた。彼女を見て今更気が付いたが、こんな時でも日向は化粧をしていることに黒澤は多少なりとも驚いた。一種の武装のようなものだろうか。赤みがかった唇が斜めに吊り上がる表情は、どこか伊野田の面影を彷彿とさせた。雰囲気が似ているのだ。
「やっぱり襲ってきたのね」
「ある意味、読み通りだったな」
「私が出るから、援護してくれる?」」
「了解。相手は?」黒澤もスリンガーと小型ボウガンを確認しつつ、スコープを使って辺りを見回す日向にきいた。
「…見えないけど多くないはず」
「高見さん、俺たちの場所がわかるか?もう目の前にきてるが襲撃された。その位置から何か見えるか」
高見が応答する。
”近くの監視カメラを確認してます。そこから2時の方向に…ひとり?”
「ひとり?」
”ええ、この反応はオートマタです”
”探知されてはいかん。一旦離れて別の場所のナビを送る。切り抜けろ。必要ならば迅速に機体を破壊しなさい。目立つ行動は控えるように”
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