第2話 強さの秘訣

<1週間の修行>


禮たちがレジスタンスの支部基地に運ばれてから3日後…


 瑠花「禮、そろそろ修行する?けがも治ってるみたいだしね。」


 瑠花は軽く笑いながら禮に話しかける。しかし禮は元気がない。


 禮「ああ。よろしく頼む。」


 瑠花「あら、元気ないわね。やっぱり負けたのが悔しいんだ。」


 禮「…まぁ。」


 瑠花「いいの。強くなれば負けなんてもの、塗り替えられるのよ。」


 そういって、瑠花は禮をある場所へ連れていく。そこは木々が鬱蒼と並んでおり、地面を見てみると草が一面に生えている。周りに機械や金属らしきものなどなく、そこにあるのは自然物ばかり。


 瑠花「ここがあなたの修行場よ。」


 禮「おう…ってちょっと待て。金属はどうした?」


 禮の能力は「周囲に金属がある」ことを前提にした能力。周囲に金属類らしきものはないこの環境下ではどう考えても無理がありそうだが…。


 瑠花「いえ、あるわよ?ごまんと。」


 禮「いやいやいや、金属らしきものなんか…。」


 瑠花「ふふっ、そう考えているうちは強くなれないわよ?」


 禮「どういうことだ?」


 そういうと、瑠花は答えた。


 瑠花「簡単にヒントを言うなら『頭を柔らかく』。そう。ただ『見えるものを操る』だけではない。」


 しかし、禮はどうも腑に落ちていない表情をしている。


 禮「…?」


 瑠花「まぁ、時間はあるわ。ゆっくり考えて。」


 禮「お、おう。」


 禮は戸惑いながら去っていく瑠花を見送った。


 瑠花(禮。あなたには考える時間が必要なのよ。強くなるために。)


 瑠花は微笑みながら、山から離れていった。


 禮「しかし…。どうすれば。周囲に金属類らしきものはない。それに瑠花は『見えるものを操るだけじゃない』って…。」


 禮は近くにあった切り株に座って、熟考していた。しかしいくら考えても時間は過ぎ去っていくのみ。そのなかで何度か寝落ちしかけるも、気を取り直すこともあった。


 夕暮れ時の事だった。禮がふと地面を見ると切り株の側で1匹の蛇が地面から頭を出し、舌をぺろぺろ出し入れしていた。


 禮「蛇、か。地面から出てきたんだな。」


 蛇が頭を使って再び地面に潜ろうとしたその時だった。


 禮「あ、地面…!そうか、地面の中にも『金属』はある…!それもごまんと!埋まっているもの、鉱石となっているもの、すべて含めても余るぐらいはある!そういうことか!!」


 禮は天啓を受けたかのように切り株から立ち上がり、右手に力を籠め始める。


 禮「出るんだ…!金属…!なんだっていい…!」


 禮は地面から金属を取り出し、操ろうとする。周囲の柔らかい土から金属の小さな破片が現れる。


 禮「うっ、うぐっ…(力を抜く)…はぁ…はぁ…。だめだ、なかなか出ねー。」


 しかし、言うは易く行うは難しとは誰が言ったのか、なかなかうまくいかない。小さめの金属の破片は出てきても、大きい金属は出てこない。


 禮「くそ…こっちに来ている感覚はするんだ。しかしこれ以上出てこねー。」


 その後朝になるまで地面の金属を取り出そうとする訓練を続けるも、なかなかうまくいかない。


 禮「一体どうすれば…畜生。」


 汗だくの禮はあおむけに倒れ、しばらく動けなくなった。


 禮が能力の修行で苦戦して倒れていた時だった。


 瑠花「あら、1つ目のヒントは分かったようね。はい、おにぎり。」


 瑠花が差し入れのおにぎりを持って倒れている禮を起こそうとした。


 禮「…瑠花か。すまない。」


 禮は瑠花のおにぎりを手に取り、それを口にほおばった。


 禮「なぁ瑠花。あんたの能力ってなんだ?聞いてなかったから聞いておきたい。」


 瑠花「…ああ!私の能力?これよ。」


 すると瑠花は両手を合わせ、力をため始める。それと同時に周囲の空気も冷え始める。


 瑠花「これが私の能力!」


 瑠花は右の手のひらから「氷」を生成し始める。それはだんだん剣の柄の形を模していき、次第に剣つば、刃、剣先までを生成していき、1本の剣の形を成した。


 瑠花「私は『空気中の水分を凍らせる「凍結」能力』を持っている。空気中には人間の目には見えないほど小さな水の粒が漂っている。それを凍らせることでこういった剣を生み出すことができるのよ。」


 禮「なるほどな。」


 瑠花が山を下りた後、禮は再び修業を始める。しかしその表情はどこか自信に満ちている。


 禮「水が粒状となっているのなら、金属や周囲の木々だって粒の集まりだよな…」


 禮は1つの考えを持って修行を始めた。

 …それからまた4日後、禮はシャワーを浴びるために基地に向かおうとしたが、そこでは厄介なことが起きていた…。


<イェソド再来>


 ところ変わってレジスタンス支部基地。瑠花が朝食を作っていたころだった。


 レジスタンス兵1「玄関前に異常はないっすね。誰も来てはいないっす。」


 レジスタンス兵2「そうか。一応外の見回りに行ってくる。」


 レジスタンス兵1「あ、いってらっしゃいっす。」


  レジスタンス兵の1人がそういって、外へ見回りへ向かった。しかし、いくらたってもその兵士は帰ってこない。心配になって、瑠花が外に出た瞬間だった。


 イェソド「ハローレジスタンス諸君。」


 そこには、1週間前禮を再起不能にしたイェソドが、大量の殴打痕と瘤で顔がぐちゃぐちゃになっているレジスタンス兵の形をした何かの頭だったものを怪物のように肥大化した右腕でつかんだままそこに立っていた。


 瑠花「嘘…!」


 イェソド「いや、事実リアルだ。」


 瞬間、イェソドがぐちゃぐちゃの死体を瑠花の頭めがけて叩きつけた。瑠花は横に回避したが、木でできた壁が吹き飛び、そのあたりはがれきの山と化していた。


 瑠花「なんて威力なのよ…。」


 瑠花はそう言いつつも空気を凝結させ、氷の剣を生成しだす。


 イェソド「ふっ、氷ごときで俺の『肥大化した右腕』を斬ることなんざできるとは到底思えんがな。まぁ、試してみるがいい。」


 瑠花「くっ!」


 瑠花はイェソドの挑発に乗ってしまい、肥大化した右腕を切り裂こうとする、しかしイェソドの右腕は斬れない。


 イェソド「な?無理なんだよ。氷で俺の右腕を斬ることなんざな!」


 イェソドは肥大化した右腕で瑠花を殴る。瑠花は氷の剣を自分の身長ほどある氷の壁に形を変え、防御する。

 何とか攻撃をしのいだが、くらっていたら死は免れられなかった。


 瑠花「次食らったら…やられる!やるしかない!」


 瑠花は氷のナイフを大量に生成し、イェソドの全身にあたるように飛ばす。


 イェソド「また氷かぁ?芸のない!!このまま氷のナイフごと貴様を吹き飛ばして決着と行こうかッ!!」


 イェソドは氷のナイフを瑠花ごと肥大化した右腕を使って吹き飛ばそうとした。その時。


 「させるかッ!」


 ザクッ、と刃物が肉に刺さる音がした。やられる、と思って目を閉じた瑠花が次に目を開けた時映っていたのは、肥大化していない「左腕」に鉄の刀が刺さっていて、その後ろにさっきまで修行していたはずの男…「斬月 禮」の姿があった。


 第3話「禮&瑠花 vs イェソド・メソッド」に続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新説-霊威学園生徒の叛逆物語 霧雨 @ZeRosigma16

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ