第23話 運命の人

“カサッ…”




奈々は白衣のポケットに安奈からの手紙をいれたままだった。




読みたい気持ちでいっぱいだが、何が書かれているか思うと不安だった。




今日中には読もうと思い学校に持ってきた。




もう放課後の時間でグランドでは部活生がスポーツをしている。




この学校には化学部があるがほとんど幽霊部員だった。




だから奈々は準備室に一人窓の外の景色を見ながら立っていた。




「うん…ヨシ!」




奈々は勢いよくポケットから手紙をだし、手紙を読み始めた。




奈々へ


安奈です。

封筒に名前を書いて

もし読まれずに捨てられたら…と思ったら

名前がかけませんでした。



最後まで卑怯な手を使ってごめんなさい。

どこに住んでいるのか

何をしているのかわからないので実家に手紙を出しました。



奈々、元気してますか?

私は父と一緒に元気に暮らしています。




奈々…色んなことをしてごめんなさい。

傷つけてごめんなさい。

今までの行動、本当にごめんなさい。




私、妊娠はしていないよ?

だって、妊娠するような行為はしていないから…

健さんはいつもはぐらかして、私が迫ってもダメでした。

だから私には魅力がないんだと落ち込んだこともあります。




奈々と最後に会った日、

私が妊娠していると嘘を言った日、あの日鈴と加奈子に怒られました。

何をしているのかと…

あの日、奈々は心からおめでとうって言ってくれたよね?

うれしかったし感動した。

奈々はきっと私と健さんで挟まれて苦しかったよね。

加奈子から健さんと奈々との今までの話も聞きました。




私はね、結婚に憧れてた。

そしたら、格好良くて優しい人が現れて

この人でいっかなって思った。

それから一緒に暮らすようになって居心地よくなって

健さんのこと好きになった。

だけど奈々や健さんのような好きじゃないってわかった。




クリスマスの日

デートしてみたんだ、初めてね。

私が微笑んだら微笑み返してくれて

腕を組んで歩いて…

周りのたくさんのカップルと一緒だと思った。

だけど愛し合っている人は一瞬で見つけるんだね。

健さんは奈々のこと、たくさんの人から見つけていた。

それみたら思ったの。

私も奈々と健さんみたいな恋がしたい。





どれだけ離れても磁石みたいにくっつく。

そんな恋がしたくて別れました。

入籍もしていません。

健さんの会社は健さんのおかげで今は安定しているし安心してね。

健さんは私がまた奈々に何かしないか、ずっと側でみていてくれたよ。

私のことが好きでそばにいたわけじゃないの。

そんなの愛じゃないよね…

健さんにも幸せになってほしいって思ってる。




奈々、

遅いかもしれないけど

幸せになってほしい。









今度は私奈々と健さんみたいな恋をして結婚したい。






「安奈…」




手紙を読んだら涙が止まらなくなった。




涙を拭うためにティッシュを取ろうとした瞬間




“パリン…”




「あ…」




奈々は手元にあったビーカーを割ってしまった。




「しまった…」




奈々は手紙をポケットにしまい、ビーカーの破片を拾い始めた。




“コンコン…”




放課後は滅多にノックされないドアがノックされた。




「はい…」(生徒かも、どうしよう~先生がビーカー割ったなんて…)




“ガチャ…”




「先生、ビーカー割ったんですか?」




「…え?」




どこかで聞いた台詞




あれも準備室だった。




聞いたことのある声




あの時は私がそう質問したんだ




ねぇ、先生。




今度はあの時と逆だね




これもまた運命なのかな













「先生ッ…」










低くて優しい声




優しい微笑み




大好きな先生が腕を伸ばして呼んでくれている




“パリン…パリン…パリンッ…”




ビーカーの破片を踏みながら先生の腕の中に飛び込んだ。




ねぇ、先生。




今まで色んなことがあったね




このビーカーの破片みたいに




色んな人を傷つけた




傷つけて




それでも先生のことが好きで




先生のことが忘れられなくて




離れても




磁石のようにくっついて




そしてまた反発して…




でもこれで最後だって信じていい?












ねぇ、先生。

   



これからも隣でずっとこう呼び続けてもいい?







                    【奈々バージョン完】

明日から先生バージョン開始

照らし合わせると

一つの物語になります

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