第14話 友達の反応

腫らした目で塾に行ってしまった。




林先生や生徒にも心配され、先生失格だなと思った。




今日は塾長の雑用しなくていいから帰れと林先生に言われた。




何があったか聞かないのが林先生らしい。




本当に聞かれたくないことは聞かないのが彼だ。




自分の雑用を終えて外に出ると加奈子がいた。




「加奈子…」




「…待ってたんだ、奈々を。」




「ずっと待ってたの?ごめんね。」




「ううん、連絡せずに来ちゃったから…奈々のお家行ってもいい?」




「…うん」




安奈から聞いてきたのだろうと思うとちょっと怖かった。




大学の友達は本当に居心地がよくて一番大事な友達だった。




だからこそそんな友達を傷つけ、冷たい目で見られるかと思うと寂しかった。




でも自分がまいた種だ。




塾から奈々の家まで徒歩15分、どちらも何も話さず家に着いた。




「コーヒー入れるね。」




「うん。ありがとう。」




“カチャカチャ…”




奈々がコーヒーを準備していると加奈子が本題に入った。




「奈々…安奈から聞いたよ。」




「…うん。」




「安奈のご主人のこと好きなの?」





「…うん。」




「高校時代からずっと?」




奈々はコーヒーを机に置いて座った。




「…うん。高校時代からずっと先生のこと好きだった。好きでずっと諦めきれなかった。」




「友達の旦那でも?」




奈々は黙りながら頷く。




“パンッ…”




加奈子は奈々の頬を叩いた。




最初はビックリしたが、仕方ないと思った。




加奈子がまた手をあげたので、次は目を瞑った。




“パンッ…”





「…?」




叩かれる音はしたのに一回目より痛みが感じなかった。




恐る恐る目を開けると加奈子の頬が腫れていた。




「加奈子…」




「馬鹿だよ!あんた馬鹿だよ!でも私も馬鹿だよ!」




「ちが…加奈子は馬鹿じゃ…」




「私は奈々のこと友達だって思ってた。そんな高校の頃から忘れられないような人がいたなんて知らなかった。」




「私が言わなかったから…」




「結婚式のとき、なんかおかしいと思った。高校のただ先生にしてはおかしいって。新居に行ったときだって…どうして気づいてあげれなかったんだろう…」




加奈子の大きな瞳からポロポロと涙が溢れ出す。




「私が知っている奈々は…友達の好きな人をとるような人じゃない…だからこそ、今回のことすっごく悩んだと思ってる。」




そういわれて奈々の目からも涙が零れた。




「辛かったね…」




そういって加奈子は奈々に抱きついた。




加奈子の優しさに包まれて、声にならないぐらい泣いた。




「これから…どうするの?」




「え?」




「私は奈々も安奈も友達だから…どちらの味方もできないけど、奈々はどうしたいのかなって。」




「…何もしないよ。時に身を任そうと思う。」




「…そっか…ねぇ、今日泊まっていっていい?先生との話も聞きたいし。」





「うん。いいよ。」




その日加奈子に高校時代のこと、今まで先生とあった出来事のことを話した。




自分の恋愛話を友達にするのは初めてだった。




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