第12話 真相
「…奈々…奈々…」
「ん…」
「起きれる?もう昼前だよ。」
「え!?」
「「イッターー」」
奈々が勢いよく起きすぎて、先生と頭をぶつけた。
「ご、ごめんなさい!大丈夫ですか?」
「仕返し…」
そういって軽く頭をぶつけてきた。
「ふふッ…」
先生と生徒という関係がなくなった今ならこうやって一緒に過ごせたはずだった。
だけどそうはいかない、入籍していないとはいえ友達の内縁の夫、婚約者だ。
「話がしたいんだ。」
“ズキン…”
さっきまでは胸が高鳴ってドキドキしていたのに、カラダに突き刺さる感覚がした。
きっとこれからのことを話すのだろうと奈々は悟った。
それがどんな答えだとしても受け入れなければならない。
二人は服をきて、小さなテーブルに向かい合って座った。
「奈々…なんで俺が結婚というか結婚式を挙げたか知ってる?」
「…私が聞いたのは…先生のお父さんの会社の経営が危なくて、それを安奈のお父さんが助ける代わりに結婚って…安奈のお父さんに早くウェディングドレスを見せてあげたいって…」
「うん…知ってたのか…」
「うん…」
「母が自殺したのは俺のせいだって言ったよな?」
「うん。」
「親父も相当ショック受けて…親父まで死にそうになっていて…そのときに縁談の話もきて、結婚してもいいって思っていた。」
「…」
「あのホテルの日…朝起きたらもう奈々はいなくて…俺もあんな格好だったから見捨てられたと思っていたよ。」
「そんなつもりは…」
「結婚式の招待客リストを見たとき、お前の名前をみてびっくりしたよ…そっか、俺のことなんて何にも思ってないのかって。」
「私、安奈の相手が先生って知らなくて…招待状に名前書いてあったけど、いつも先生って呼んでたから下の名前知らなくて…」
「そっか…色々すれ違ってしまったな。」
「…そうですね…」
私たちはクロスしてはまた別の道を、そしてまたクロスする…
そんな人生を歩んでいた
「安奈と安奈のお父さんと親父と話がしたいと思う。」
「…話ですか?」
「あぁ、このままでいい訳がない。まだ入籍していない今なら引き返れる。もっと早く引きかえすべきだった。」
「…」
「…安奈のことが心配か?」
「…はい。」
いくら政略結婚とはいえ、安奈あんなに嬉しそうに先生のことを話していた。
きっと先生のことが好きなんだと思った。
“ピリリリリッ…”
携帯が鳴り、先生は自分の携帯に目をやる。
「じゃあ、俺いってくるよ。」
「はい。」
「また、明日塾で…」
「…」
不安でいっぱいで言葉が思うように出てこなかった。
玄関まで先生のあとをついていくので精一杯だった。
「奈々、大好きだよ。」
初めて先生に好きだと言われた
先生に好きだと言われたら嬉しくて飛び上がりそうだとずっと思っていた
だけど今言われた好きだという言葉は
うまく言えないけど
なぜか別れの言葉のように聞こえた
先生がドアを閉めてから涙が止まらなかった
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