第5話 会いたい
私は県外の大学に通うことになった。
県外といっても隣の県だが、一人暮らしをすることになった。
だから家を決めたり、家具を買ったりで入学するまで忙しかった。
先生に会いたくなったけど、メガネと写真をみて寂しさを紛らわせた。
大学に入ってからも、サークルの歓迎会や勉強についていくのに必死だった。
正直ちょっと先生のことを忘れかけていた。
だけど、大好きな男性は先生だけ。
5月終わり、早速実家に帰ってきた。
お母さんの料理が恋しくなったし、先生に会いたくて仕方なかった。
「お母さん、私ちょっと出かけてくる。」
「え?もうすぐご飯だから早く帰ってきてね。」
「うん。行ってきます。」
可愛い服をきて、メイクをして高校へ向かった。
(卒業生が遊びにきたっていいよね?この写真渡しにきたっていうことで…)
職員室に向かう勇気がなくて、化学実験室へ向かった。
“ガラガラガラ…”
在校生もいないみたいでシーンとしていた。
“コンコン…”
準備室をノックするが返事がない。
「先生?」
入ってみるとなんか前と雰囲気が変わっていた。
パソコンが、先生が持っていたものとは違うものになっていた。
先生の匂いがまったくなかった。
「誰?」
後ろから声をかけられ振り返ると、女性が立っていた。
先生が着ていた白衣を着て――
「あ、あの卒業生なんですけど、綾部先生は?」
「あ~綾部先生の教え子か。綾部先生ならもうこの高校にはいないわよ。」
「え?」
「先生は学校辞めたわよ。」
「え…いつですか?」
「そうね、5月頭かな。色々あって辞めちゃったのよ。私彼と知り合いでここの教師を頼まれたのよ。」
「そう…ですか…あ、失礼しました。」
「え?ちょっと待って。あなた、名前だけでも…」
女性教師が呼びかけても、奈々は振り向きもせずその場を去った。
「この写真…」
奈々は化学部で撮った先生に上げる予定だった写真を落とした。
帰り道。。。
三年間歩いた道だから頭が動かなくても体が勝手に動いて家へと歩いて帰れた。
先生、どうして辞めたの?
どこにいったの?
遊びにきてもいいっていっていたのに…冗談だったの?
じゃあ、写真のとき指を絡めたのも冗談だった?
先生に会いたくてたまらないよ。
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