第2瞬「こっくりさん・起」

 皆さんはって知っていますか?

 簡単に言うと、素人向けのみたいなものです。


 そのは世代や地域によっても違いますが、そのほとんどが決められたに、通りに文字を書いたものと十円玉を使います。

 紙に書く文字は、ひらがなで五十音、濁点、半濁点、はい(肯定)、いいえ(否定)、数字などです。

 そして、これは文字ではありませんが赤色のペンでを書きます。

 五十音や数字、というは、占う内容ことによっては書くが必要ないものもありますが、、これだけは書かないといけません。

 そして、その赤色の鳥居の上に十円玉を置き、参加者がその十円玉に人差し指を乗せれば準備は完了です。

 他にも幾つかなやり方がありますので、もし、やり方が気になった方は調べてみてください。

 ただし、誤った気持ちでおこなって、何かが起きても私は責任は取れませんので、をやる時は自己責任でお願いします。


 愉快たのしいですよ。

 これから因縁するまつわる話を紹介します。


 では、どうぞ…………




 これは、私が小学生の頃、友達四人でおこなった時の出来事です。

 当時、は一種のとなっていて、元々占いが好きな女子だけでなく、な男子も一緒にをやっていました。


「こっくりさん、こっくりさん、られましたら返事をしてください。こっくりさん、こっくりさん、られましたら返事をしてください。こっくりさん、こっくりさん…」


 スススス…


「うわっ…マジか…」


「ひっ……」


「ね?ね?本当に動くっしょ?」


 その日、私と共にに参加していたしゅう凛子りんこ沙織里さおりの三人が、指を置いた十円玉が動くのを見てそれぞれに反応していました。

 本来ならば、に対して失礼となる行為で、あまりしてはいけないことらしいのですが、当時の私はそこまで詳しくなかったので、そのままを続けました。


「こっくりさん、こっくりさん、りられましたら、へ動きください。こっくりさん、こっくりさん…」


 スススス…


 私の言葉にこたえるように、十円玉がゆっくりとの上に動きました。

 私はことを感じ、呼び出しの儀式を止め、次の段階である占いへと進みました。


りたわよ。なにく?しゅう、なにか訊きたいことある?」


「いや…俺はいいよ…別に訊きたいこととかないし。」


 初めて参加したしゅうはやる前はバカにしていましたが、実際に十円玉が動いたのを見て少しみたいでした。


「あ…あの…私、訊きたいことある……」


「いいわ、凛子りんこ。じゃあ、私が先に言葉を言うから、それと同じに繰り返してから質問してみて。」


「うん……」


 しゅうと同じで初めてに参加した凛子りんこが訊きたいことがあるというので、私はやり方を教えてあげることにしました。


「こっくりさん、こっくりさん…」


「こ…こっくりさん、こっくりさん……」


「私の声が届いていましたら返事をしてください。」


「私の声が届いていましたら返事をしてください……」


 スススス…


 また十円玉がゆっくりとへ動きました。


「いいわよ、凛子りんこ。あとはに語りかけてから訊きたいことを言いなさい。」


「わかった……」


 この時、私は活発な男子のしゅうがビビっていたのに対して、内気で大人しい凛子りんこがわりと乗り気だったことが意外でした。


「こっくりさん、こっくりさん…私の声が届いていましたら返事をしてください…こっくりさん、こっくりさん…私の将来のは誰ですか?こっくりさん、こっくりさん……」


 スススス…


 凛子りんこの言葉に反応した十円玉がゆっくりと動きました。


 り、ん、こ、の、け、っ、こ、ん、あ、い、て、は…………


 十円玉の動きはそこで停まってしまいました。


「え…あれ…もしかして…私、結婚出来ないの…かな……」


「落ち着いて、凛子りんこ。名前とか結婚する年齢とか、具体的に質問してみたら応えてくれるかも知れないわ。あと、言い忘れていたけど、質問するときは、返事をしてくださいではなくて、応えてくださいと訊くほうがいいわ。」


 の返事が途中で停まってしまい、少し不安そうしていた凛子りんこに私は改めてやり方を説明しました。


「うん…わかった……こっくりさん、こっくりさん…私の声が届いていましたら応えてください。こっくりさん、こっくりさん…私の将来の結婚相手の名前は何ですか…こっくりさん、こっくりさん……」


 スススス…


 凛子りんこの言葉に反応した十円玉が再びゆっくりと動きました。


 り、ん、こ、の、け、っ、こ、ん、あ、い、て、は、く、ろ、た、゛…………


 凛子りんこの結婚相手はクロダ…………


 凛子りんこの二度目の質問に対して、が今度は最後まで応えてくれました。


「良かったわね、凛子りんこ。クロダって人と結婚出来るわよ。」


「うん…良かった……こっくりさん…ありが……」


「ダメ!!!」


「!!!」


 私はと言おうとした凛子りんこを静止しました。

 私の声に凛子りんこだけでなくしゅう沙織里さおりも驚いていましたが、これ以前にも私と一緒に何度もこっくりさんをやっていた沙織里さおりがその理由を説明してくれました。


「あはは、二人ともビックリしたっしょ?でもさ、凛子りんこが今こっくりさんにお礼言おうとしたじゃん?それこっくりさんをやるときの禁止事項タブーなんだよね。理由はよくわかんないんだけどさ、こっくりさんにお礼しちゃいけないらしいんだ。」


 その説明に凛子りんこしゅうもよくわからないまま納得していました。

 それから、私と沙織里さおりが幾つか質問をしてその日のは終えることにしました。


「こっくりさん、こっくりさん、私のが届いていましたらへ動きください。こっくりさん、こっくりさん、おかえりください。こっくりさん、こっくりさん…」


 スススス…


 十円玉がゆっくりとへ動いたのを確認し、私たちは十円玉に置いていた、その日のは無事に終わりました。




 如何いかがでしたか?

 今回の因縁するまつわる話は。

 には幾つかの禁止事項タブーがあり、その一つが

 そして、からはなどがあります。

 他にも幾つか禁止事項タブーがありますが、それはまた次の機会に教えることにします。


 え?

 何も起きていないですか?

 そうですね、何も起きてません。

 は大抵は何も起きないものなんです。


 では、最後にこの話のエピローグを載せておきます。




 これは、私、しゅう凛子りんこ沙織里さおりの四人が同窓会で久しぶりに再会したときのことです。

 皆がそれぞれ他のクラスメイトと話をしたあと、何となくが同席になり、近況を報告し合っていたときでした。


「そう言えば私、去年結婚したんだ。」


「えー!そうなんだ!この四人では凛子りんこが一番乗りじゃん!」


 小学生の頃の内気で大人しい凛子りんことは違い、明るくて可愛いという印象に変わっていた凛子りんこに、昔から相変わらずな沙織里さおりがさらに話を訊いていました。


「んでんで、結婚相手は誰なん?あたしらが知ってる人?」


「ううん、知らない人。会社に入ってから知り合った人だから。たぶん、ここにいる皆が誰も知らないと思う。」


「へー、んで名前は?名前くらい訊いてもいいっしょ?」


「えへへ……名前は省吾さん。」


 その言葉を聞き、その場にいた四人の内、凛子りんこ以外の三人が顔を見合わせました。

 小学生の時に一緒にをやり、に結婚相手を質問をした凛子りんこは、大人になって出会った人と結婚し、黒田くろだ凛子りんこになっていました。

 ちなみに、凛子りんこ自身はに質問した内容を全く覚えていない様子で、私を含めた周りの三人だけがに驚きを隠せませんでした。




 では、また次回のの話をお楽しみに。

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