だめぇっ! やめてぇッッ‼︎
「うおおおおおおッッッ!!!」
僕は叫んで走り出した。
観音崎さんを死なせちゃ行けない。
例え、僕がどうなろうともッッ‼︎
「下津間ッ⁉︎」
観音崎さんを突き飛ばして、僕は全力で駆けた。死への恐れ。巨大なゴリラと戦う怖さ。そういった何もかもを、彼女の隣に置き去りにして。
ゴリラが吠えた。こっちに突進してくる。巨大な腕のなぎ払い。紙一重で躱したつもりが少しだけ頭の横かすめた。すれ違う。背筋がゾッと泡立った。と、正面に岩の壁があって、僕は咄嗟に両手を突いた。
「下津間!」
あれ? 壁じゃねえやこれ。地面だ。側頭部から血が滴って地面の岩にポタポタと点を打つ。足がガクガクと震えて言うことを聞かない。左手で左の太腿を叩く。立て! 体! もう一度だ!
「僕が馬鹿でした観音崎さん‼︎」
一撃くらったしダメージは小さくないが、いい位置にこれた。
「あなたに大変に失礼なことを……これが僕のせめてもの償いです‼︎」
「やめなさい下津間! あなたが犠牲になることなんてありません!」
「生きるべきなのはあなたです。あなたが生き残ればこのパーティの生存率は50%。上出来だと胸を張ってください!」
崖っぷち。僕はまたゴリラに向かって走る。ゴリラも再び僕に向かって駆け出す。
「だめぇっ! やめてぇッッ‼︎」
観音崎さんが泣きそうな声を出す。
ゴリラの腕が僕を打つ。ボキボキと肋骨が折れる音がしたが、不思議と痛みはなかった。ナイフ。観音崎さんがくれたもの。僕が持つ唯一の武器をヤツの腕の付け根に突き刺さす。ゴリラが悲鳴を上げる。へへっ。痛いかエテ公。お前は俺と、地獄に落ちるんだ!
僕はゴリラにナイフを突き立てたままその腕を抱え込み、崖から空中へとダイブした。
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