君はどの『文字』を愛す?

 次の日の昼。

 俺達は屋上に集まった。


「知ってるだろうが、一応紹介しておく、五十鈴凛だ」

 その言葉に「どうも」と端的な返事を返す凛。

「こっちが、山田大和。確かに頭は悪いがいいやつだ」

 という紹介に大和は、

「ひでー紹介だな親友。それより、これは何なんだ?」と反応する。

 ラインで言っとくべきだったか。

「忘れたのか? 昨日の約束の件だ」


「約束って……五十鈴ちゃんはお前の彼女だろ?」

 まだ、そう思ってたのか……。

「違うって、言ってるだろ。なぁ凛からも言ってやってくれ」

 凛に話を振ると、

「かかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかかか」と壊れた機械のような反応を示す。


 だめだこりゃ。

「五十鈴ちゃんってこんな不思議ちゃんだったのか? 意外だぜ」

「俺だって知らなかったよ、きっと『か』フェチなんだろうな。『か』意外の文字を許さない会の代表だろうな」


「とんでもねー代表だ。いっちょ挨拶しとくか。かかかかかかかかかかかかかかかかか」

 大和が加わり『か』を連呼している二人という、グロテスクな絵面に、俺は悪ノリした事を後悔する。

「いつまでやってんだ!」

 俺は二人の頭を軽くパチンと叩き正気に戻す。


「「はっ!」」

 いや大和、お前のその反応はまちがってるぞ。

「あぶねー危うく『か』信者になるところだったぜ」

 ふぅーと額を拭いながら馬鹿を続ける大和。

 俺は、

「で、凛大丈夫か?」

 と確認をとる。

「大丈夫よ……それで? こ・れ・は・何の集まりなの?」

「親睦会だ」

 俺は真実を答える。

「うちと、だ・れの親睦会なの? 直樹君?」

 答えようとすると、大和が割って入る。

「安心しろ五十鈴ちゃん! 五十鈴ちゃんと直樹の親睦会だ! お似合いだぜ!」といい終わると白い歯を輝かせて、親指を立てる。


 それを聞いて凛は、

「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」と再発する。

 だめだこりゃ、色々食い違いすぎて大変な事になってる。


「おい!こんな短期間で『か』の代表が『お』に鞍替えしやがった! おおおおおおおおおおおおおおおおおお」

 と大和は相変わらず悪ノリを続ける。


「はやく帰ってこい!」

 俺は二人の頭を軽く叩く。

「「はっ!」」

 こいつら仲良いな。

「あぶねー危うく『お』に鞍替えする所だったぜ」

 ふぅーと額を拭いながら同じ下りを続ける大和。

「三回目はやめろよ! 二回でも擦り過ぎだぞ!」

「わかってる! ふざけてないで飯食おうぜ、時間は有限だ」

 大和は弁当を広げ食べ始める。俺と凛もそれに続く。

「それで? どうして五十鈴ちゃんが来たんだ?」

 大和の疑問に俺は答える。

「聞いて驚け、この学校の女子は凛意外、全員彼氏がいる!」

 大和は固まり、凛は目を泳がせる。

「どうだ大和、今この学校では今世紀最大のホラーが展開されている。男達は肝を冷やしているだろうな」

「そんな事があってたまるかぁぁぁぁ! こうしちゃいられねー俺は転校する!」

 弁当を口に掻き込み、お茶で流し込んで、この場から去ろうとする大和の襟首を掴み取る。

「ぐふぇぇぇ」

 苦しそうに倒れる大和は俺を睨みつける。

 俺は大和を諭すように言葉をかける。

「馬鹿落ち着け、学生時代の恋人なんて99%別れるんだ。ここで転校すればお前の運命の1%も逃すぞ」

「そ、そうだな! 俺の運命の相手がこの学校に!」

 こういった話は女子から直接聞くのが一番早い。

「どうなんだ凛? 大和に脈がありそうなやつはいないのか?」

 凛は「んー」と考える素振りをして返答する。

「誰がいた気がする、思い出せない……」

 おぉー! 流石大和。馬鹿の希望の星だ。

「五十鈴ちゃん! 思い出してくださいお願いします」

 大和は恥も無く、凛に土下座する。

 凛はそれを見て、

「思い出したら言うね」

 と言い、薄く微笑み口角を上げる。

 いったい何を考えているやら。

「はぁはぁーー!!五十鈴様ありがとう御座います」

 凛は立ち上がり、俺に体を向け、

「直樹君、山田君をちょっと借りるわ」

 と言い、屋上を去っていった。

 俺はその背中に、

「お、おう、お手柔らかにな」

 と小声で投げかけ、心の中で無事を祈った。


 こうして無事?に第一回親睦会は終了した。

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お嬢様は(幼馴染み)ゲーム馬鹿 NEET山田 @neetyamada

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