第51話 ごうぜい すきるを おぼえた

 【言霊ネイムド】――――フレイア。


 俺は早速、解放した火の精霊サラマンダーに名前を付ける。

 「なかなかイカす名前やね」とサラマンダー改めフレイアは、喜んでくれた。

 そもそも精霊は今まで総称で呼ばれていたため、個人としての名前がなかった。

 どんな名前であろうと、嬉しいものは嬉しいらしい。


 よし。さらにだ。


 【言霊ネイムド】――ドリー。

 【言霊ネイムド】――ウィンド。


 立て続けに【言霊ネイムド】を使う。

 ドリーとウィンドを召喚した。


「いやー、久しぶりやね、ドリアード、ジン。あ、えっと――今はドリーとウィンドやったかな?」

「お久しぶりです、フレイア。お元気そうで何よりです」

「元気! 元気! 100年もあんなとこに閉じこもってたんや。元気が有り余ってるよって」

「あ、あの……。ふ、フレイア。あまり私に近づかないでくれますか?」

「なんで? ドリーはうちのこと嫌いなん?」

「その……あなたと私は相性が悪いというか?」

「うちは、ドリーのこと好きやで」

「熱ッ! あつつつつつ! ちょ! 離れてください! 燃える! 燃えちゃう!!」


 ドリーのこんな悲鳴、初めて聞いた。

 なんかコント番組に初めて現れた女優みたいになってる。


「あ、あの~~。フレイア、それぐらいで。ドリーが困ってるみたいだから」

「そ~~お? 残念やわ~。100年ぶりに会ったのに」


 俺としては苦笑で返すしかない。

 すると、フレイアはターゲットを風の精霊ウィンドに向けた。


「ウィンドくんも久しぶり~!」

「うるせぇ! 近づくな。お前、暑苦しいんだよ」

「何を言うてんの。ドリーはともかく、火と風の間柄やないの。もっと仲良くしてもええやないか? それとも、100年前のあれ? まだ引きずってんの?」

「ひ――――ひきずってなんかねぇよ!!」


 ウィンドは声を張り上げる。

 その顔は真っ赤だ。

 どうやら、この2体の精霊には昔なんかがあったらしい。

 なんだ? 元カノとか?


 そこからも、フレイアは大はしゃぎだった。

 久しぶりに仲間と会ったからだろう。

 俺たちは精霊同窓会をしばし眺める。

 絵面として、半裸の少女2人と男1人だから、ちょっと際どいけどね。


「あれま?」

「どうしたの、フレイア?」

「なんかいきなり音が聞こえたんだけど」


 フレイアは周りを見渡す。

 条件を満たしたことによって、どうやらレベルが上がったようだ。



 名前   : フレイア

 レベル  : 3/5

    力 : ??

   魔力 : ??

   体力 : ??

  素早さ : ??

  耐久力 : +100


 ジョブ  : 火の精霊


 スキル  : 合成LV1



 一気にレベル3か。

 そして【耐久力】がプラスされるんだな。

 【耐久力】は魔法系スキルの耐性を担う数値だけど、高ければ高いほど毒や麻痺の耐性が高くなる。

 魔獣の中には、伝染病を引き起こすものもいたりするから、この【耐久力】プラスは生活をする上でも、かなりおいしいだろう。


 そして気になるのは【合成】だな。


「フレイア、この【合成】というスキルは【調合】と同じく、アイテムを掛け合わせるスキルなのかな」

「ん~~。ちょっと違う。うちはアイテムやのうて、スキルを掛け合わせることができるんよ」

「スキルを?」

「レベルがまだ低いから、2つのスキルしかできへんけど」


 2つでも十分だ。

 スキルの掛け合わせって、かなり凄いことだぞ。

 そもそもスキルって、レベル以上に上げやすいから、すぐ頭打ちになる。

 だが、【合成】を使えば、さらに強いスキルを使うことができるかもしれない。


 1度試してみよう。


「ミャア、ちょっと手伝ってくれる」

「あいあいみゃあ!」

「あのね」


 俺はミャアに耳打ちする。


「なるほど。さすがダイチみゃあ! それは凄いみゃ」

「早速、試してみてよ」


 俺は【言霊ネイムド】を使って、魔法鉱石ミスリルの塊を呼び出す。

 ミャアはその前に立って、拳を構えた。


「アイヤー! あの子、魔法鉱石ミスリルを壊すつもりか? いくらナックルガードを付けているとはいえ、怪我するアルよ」


 チンさんが、ミャアの姿を見て、驚く。


「まあ、見ててよ、チンさん」


 俺は皆とともに見守った。

 精霊たちも、魔法鉱石ミスリルの前に立ったミャアを見つめる。

 ウィンドが声を張り上げ、応援していた。


「いくみゃああああああああああああ!!」


 スキル【盾砕き】


 そして――。


 スキル【三段突き】!!


 ゴォォォォオオオオンンンンン!!


 魔法鉱石ミスリルの塊が、3度の打撃で壊れる。


「「「「おおおおおおおおお!!」」」」


 チンさんを初め、多くのドワーフが驚く。

 一際喜んでいたのは、ウィンドだった。


「ミャア、拳は平気?」

「平気平気! すごいみゃ、ダイチ。魔法鉱石ミスリルを簡単に壊すことができたみゃ」

「さすがです、ダイチ様。【盾砕き】と【三段突き】を組み合わせるなんて。


 ルナは感心する。

 彼女も、【盾砕き】を持っているから何が起こったのかわかったのだろう。


 スキル【盾砕き】は、【瓦割り】の派生スキルだ。

 その効果は、一定時間防御力ダウン。

 それと攻撃スキルである【三段突き】を【合成】させて、攻撃すると同時に防御力も下げるというスキルを生みだしたのだ。


「あはははは……。やるやないの、大魔王様」

「すごいよ、フレイアのスキルは。しかもいつでも制限なく使えるんだから」

「気に入っていただけて、何よりやわ」


 フレイアの顔がちょっと赤くなったような気がした。


 ドリーの【成長促進】も結構チートに思ったけど、フレイアのスキルも十分ずるい。

 もしかして、武器を作ってもらわなくても大丈夫かもな。


 まあ、念には念を入れよう。

 こういう勝負ごとには、真剣に取り組むエヴノスだ。

 何か飛んでもない隠し球を用意してくるかもしれない。


「さて……。次はメーリン……。君たちの出番だよ」


 俺は振り返る。

 精霊の登場、その力に圧倒されていたメーリンは、ハッと我に返った。


「仕方ないアルね。ドワーフの技術、とくと食らうよろし」


 ニヤリ、と笑うのだった。


~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~ ※ ~


さーて、何を合成させて、あの魔王様をいじめてやろうかなwkwk

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