すれ違い
ゴールデンウイークが明け、学校が始まると同時に悠の部活も始まった。
夜9時まで練習があり、帰宅は10時過ぎ。そこからシャワーを浴び、ご飯を食べると、もう夜の11時近くなっていた。
夏帆からのLINEは確認するが、なかなか返せない。
朝も5時半には起きるので平日は余った時間は1時間ほどしかなかった。
寝落ちする時もあるが、ほぼ無言で、悠はすぐに寝てしまう。
ほとんど連絡が取れないまま土曜日になった。
悠は土曜日も部活に行っている。
夏帆は時間を持て余していた。
悠君は夏帆のことどう思っているんだろう・・・。でも、毎日すごい頑張っているのは伝わってくる。秒で寝ているよね、応援はしたいけど。
スマホをいじりながら、悠の写真を見る。
今日も部活かあ。
朝の11時、夏帆はまだパジャマのままだ。
スマホには悠の写真が5枚になった。
右の角度からの顔がいいんだよな、悠君。などと思いながらニヤニヤしている。
夏帆も何か始めようかな?でもバイトとか禁止だし、部活は今更って言う気もする。
そうだ、と思って勉強道具を取り出した。
東京の大学に行くためには少しでも勉強をしなくてはと思った。
今でも成績は悪くないほうだが、県外の大学に行くためにはそれなりの成績でないと高校も親も説得できない。
文系コースなので、受験対策は英語に比重が置かれる。
リスニング対策に音源を流して、と。さらにテキストを広げる。
昨日買ったばかりの受験用の英語の参考書は新品の匂いがする。
この参考書に全ての知識を書き込んでいくつもりだ。英単語と英熟語は別になるが。
悠君も頑張っているんだもんね、夏帆も頑張らなきゃ、うん。
そう思い勉強を始めた。
夜9時になると悠からLINEが来た。
「待っていたよ、悠君」
「ごめん、なんか全然話せてないよな、今日は練習早く終わったから」
「ううん、大丈夫、今日は夏帆、英語の勉強を1日やっていたよ」
「おお、なんかすごいな」
「もっとほめて!」
「えらい、えらい、いい子だ」
「悠君、優しいなあ」
「そうかな?普通だよ」
「ううん、優しいよ、大好きなんだ」
「あ、嬉しいな、俺も好きだよ」
「ぎゅーって抱きしめて欲しいな」
「ああ、ほんとだ、夏帆を抱きしめたいよ」
「今日調べたんだけど東京から郡山までバスだと5時間くらいみたいだね」
「あ、それくらいで行けるんだ」
「それくらいって、けっこう乗ると思わない?」
「俺、部活の移動でけっこうバスには乗るから、それくらいだったら問題ないかな」
「すごいな、悠君、なんか、色々と経験しているんだね」
「まあ、言われるとそうなのかも?」
「なんかすごい人と付き合っているんだなって」
「え?俺とか全然だよ、先輩とかプロでやっている人もいて、半端ないよ」
「プロかあ、悠君はプロとか考えているの?」
「俺がプロかあ、どうかな、考えたことがないわけじゃないけど、でも、周りを見ていると相当レベル高いっていうか、どうなんだろうね」
「悠君はみっどふぃるだーっていうやつなんでしょ?」
「ああ、そうだね、中盤だよ」
「ちょっと調べたんだけど、一番重要なポジションじゃないの?」
「一番なんてないよ、どこのポジションが機能しなくても勝てないし、俺はまだ、2軍のレギュラーにやっとなれたところだし」
「え、でも、1年でレギュラーってすごいんじゃない?」
「同級生の中では、早いほうかな」
「やっぱりすごいなあ」
「ありがとう、夏帆」
「ううん、時間大丈夫?」
「あ、そろそろシャワー浴びてくるよ、また寝る前にかけていいかな?」
「もちろんだよ!悠君の電話なら何時でも対応するよ!」
「じゃあ、いってくるね」
「いってらっしゃい」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます