第5話 桐生空子という人間
何だか面倒臭い事になった。
桐生空子という名の1年の転校して来たばかりだという少女が俺に対して接触してきたのだ。
この桐生空子という名の少女。
俺と冴島が同居している事を知っていた。
だから厄介だという事だ。
俺は盛大に溜息を吐きながら桐生を見る。
そして目の前のニコッとしているが全く目が笑ってない冴島を見る。
何だこの状況は.....。
丁度、昼休みの中庭の話。
そこで俺と桐生と冴島と俺と。
その3人で集まって飯を食っていた。
冴島からは凄まじい威圧で有る。
「しかし何故、貴方がこの場所に居るのかな。空子ちゃん」
「私はさえねえを追いかけて来ました。さえねえが好きだからです」
「良いかお前ら。一旦、落ち着け」
落ち着いてるよ?私。あはは、と笑顔を見せる冴島。
しかし目が笑って無いんだよ。
怖いってばよ。
思いながら俺は盛大に溜息を吐いた。
そして俺は桐生を見る。
「桐生。お前さ.....冴島に逢う為にこの場所まで引っ越したのか?」
「何ですか?変態」
「いや~。言うね。お前.....でも俺は手出しをしてないからな」
「変態は変態です。手出しをしようがしまいが、です」
俺は額に手を添える。
だが次の瞬間、冴島が桐生に威圧をした。
そんな事言わない、と、だ。
目が据わっている。
その、コイツはヤンデレか何か?
相当に怖いんだが.....。
「そんなさえねえも好きです」
「好きとか嫌いとかどうでも良い。私のはーくんをイジメない」
「はい。分かりました」
仲良くする事、と威圧で言い聞かせる冴島。
それをひらりひらりと躱しながらも話を重々に聞く桐生。
こんな感じなのか、お嬢様ってもんは。
俺は顔を引き攣らせながら思う。
「じゃあ仲良くして下さい。変態」
「お前さ、その変態を取れ。いい加減にしろ」
「取りませんよ。だって貴方は.....変態ですから」
「空子ちゃん?」
目が笑ってない笑顔を見せる冴島。
そして言い淀む桐生。
それから、じゃあ桐谷さん宜しくお願いします、とニコッとした。
偽りの笑顔でぎこちない。
俺は、分かった宜しく、と握手を求めたが否定された。
「こうなっちゃったものは仕方が無いから空子ちゃんも宜しくね。はーくん」
「.....まあ仕方が無いか」
「私はさえねえさえ居れば良いですけどね!」
ベーだ、と舌を出す桐生。
そしてイーッと頬を引っ張る。
マジに可愛げが無い。
俺は苦笑いを浮かべながら冴島に抱き付いた桐生を見る。
そしてまた盛大に溜息を吐いた。
この先どうなって行くんだろうか.....。
☆
「バラされたくなかったら諦めて下さいね。さえねえを」
「.....お前、絶対に地獄に落ちるぞ本気で」
「へへーんだ。私は正義を遂行しているだけですから」
「.....」
そしてそのまま教室に帰って行った。
俺は額に再び手を添えながら冴島を見る。
冴島は、でも空子ちゃんも苦労しているから仲良くしてあげて、と呟く。
俺は?を浮かべながら冴島を見る。
冴島は複雑な顔をする。
「.....あの子、かなり.....苦労しているから。末っ子だから相当に嫌われ者なの」
「.....そうなのか」
「うん。.....あの子は.....それでも生きているから、って.....頑張っているけどね」
「.....どいつもこいつも大変だな。お嬢様ってのは」
そうだね、あはは。
じゃあ教室に戻ろうか、と冴島は弁当箱を持つ。
俺はその姿に、弁当美味しかったぞ、と言葉を発した。
目を丸くする冴島。
「えっと、お前が作ったんだろ?それ」
「.....そ、そうだけど.....そう言われるとは思わなかったから。ビックリ。あはは」
「いや、美味しかった。御免な。言うの忘れてた」
「そうなんだ。うん。大丈夫だよ。美味しかったならそれで良いんだ」
冴島はきょとんとする。
それから柔和になって俺に、うん、と満面の笑みで頷いた。
そして俺の腕に自らの腕を絡ませてくる。
途中までこれで、と言う。
俺は、オイオイ、と思いながらも。
苦笑で済ませた。
そして俺達は途中で離れながら教室に帰った。
花束の様に咲き誇る優しい君へ アキノリ@pokkey11.1 @tanakasaburou
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