第4話 同居を知る者

俺の名前は桐谷破魔。

信じられない名前だと思うだろ?

でもそれが俺の名前なのだが.....何というか。


破魔か、って思う。

意味が分からないかも知れないが良い名前なのか悪い名前なのか悩んでいるのだ。

つまりはそうだと思う。


思いながら玄関に行くと、行ってらっしゃい、と母さんが見送ってくれた。

俺はそれに手を挙げながら。

登校する。

そうしていると.....冴島が俺を覗き込んだ。


「今日はその、学校だけど.....平然な感じで居てね。私にあまり接触しないでね」


「.....まあそう言うなら俺はお前に接触を避けるよ」


「うん。この生活に気が付かれたら大変だからね」


そしてニコニコしながら歩く俺達だったが。

何というかその目線がかなり痛かった。

痛いってのいうのが.....なんでテメェの様な奴がそんな美少女を、という感じだったである。

そりゃそうだろうな。

冴島自体がかなりの美少女だ。


「冴島。少しだけ離れて歩かないか」


「え?何で?」


「いや、恥ずかしいから」


あはは、そうなの?

でも私は離れないもん、とツーンとする。

これぐらいなら良いかなって思うから。

とクスクス笑う。

その事に俺は盛大に溜息を吐いた。


「全くな」


「あはは。だって好きだからね」


「.....」


記憶があまり無いのに.....こんなに愛してくれる。

俺は何だか申し訳ない気持ちだった。

だが冴島は気にせずに接してくれる。

その事が少しだけでも嬉しいんだと思う。


「.....冴島」


「何?桐谷くん」


「.....有難うな」


「何が?あはは。おかしな桐谷くん」


何か知らないが。

お礼を言いたくなったから。

思いつつ俺は冴島に苦笑する。

そして前を見据えた。


「勉強、面倒臭いな」


「そんな事じゃ駄目だよ。もう」


「でもな.....面倒だ」


「もー。.....でもそれでもやるのが.....君だからね」


ニコッとする冴島。

確かにな。

言われたらやっちまうんだよな俺。

何だか知らないけど昔からそうだと思う。

昔から.....俺はやるとなったらやるからな。

勉強だろうが何だろうが。


「俺は.....その勢いでお前も救ったのかもな」


「うん。君は.....そんな感じの人だから」


そして俺達はそのまま学校に登校した。

それから.....階段を上げって。

じゃあここからは、と冴島は言葉を発した。

俺はそれに従って別々に教室に入る。



「次は数学か.....面倒な」


数学とか英語を開発した奴は.....最悪だ。

そんなもん誰が喜ぶのか。

数学するぐらいならラノベを読んだ方がマシじゃねーか?って思うんだが。

まあ数学が大切ってのも良く分かるけど。

算数無かったら何も出来ないしな。


「.....」


冴島を見る。

そんな冴島は俺の視線に笑みを少しだけ浮かべた。

本当に他人行儀だ。

俺は思いつつ笑みを少しだけ浮かべて窓から外を見る。

悪い気はしないな、うん。


「数学.....頑張るか」


疲れたら疲れただけまぁ.....頑張ったって事で。

そして俺は教科書を取り出す。

それからノートも、だ。

数学の予習をする。

何もしないよりかはマシだろう。


「アイツの影響かな。俺がこんなになるのは」


思いながら.....俺は黙々と勉強をしようとした。

のだが何か視線を感じたのでノートから顔を上げる。

教室の出入り口。

そこに.....少女が立って居る。

俺をジッと見ている。


「.....???」


「.....」


見ているが.....何だアイツ。

思いながら溜息を吐いて立ち上がる。

それから、何か用か、と声を掛けようとしたが。

少女は近付くと逃げて行った。


「.....何だありゃ?」


集中を損ねる真似は止めて頂きたのだが。

思いつつ直ぐに戻ると。

少女がまた此方を見ていた.....おい!


集中出来ないだろ!

俺は考えながら立ち上がる。

トイレ行こう。


「.....」


「.....」


で、トイレに行こうとしたら。

赤髪のその少女は俺に付いて来る。

マジにナニコレと思いながらトイレに行く振りをして。

踵を返して素早くとっ捕まえた。

赤髪の少女は驚愕する。


「や.....」


「何だよお前。俺に何か用か。さっきから鬱陶しいな」


「止めて下さい。その、女子を家に住まわせている変態.....」


「.....ちょっと待て、オイこら。何でそれを知っている.....」


一年坊主かコイツ。

何でそれを知っているのだ.....。

これはこのまま率直に帰す訳にはいかなくなった。

そして俺はその少女を屋上に誘拐する。

口元を抑えながら、だ。


「ちょっと待って下さい!一体、何をするんですか!」


「お前が悪いだろ!何でそれを知ってんだ!言うな!」


「.....知っていますよ。だって貴方の事も全て知っていますから。私はさやねえの親族ですから.....ね。私は桐生。桐生空子(きりゅうそらこ)です」


「.....は!?」


誘拐して正解だった。

ますます返す訳にはいかなくなりつつある。

どういうこった!?一体.....!?

俺は赤髪の少女を見つめる。

少女は手を差し出す。


「返して下さい」


「.....は?何を?」


「さえねえ、を返して下さい!!!!!その為に転校までしたんですから!!!!!私は!!!!!」


「.....!?」


涙目で絶叫する少女。

それからゆっくりこう呟いた。

帰さなかったら私、バラしますから。

全てを、です。

ますます俺の高校生活が脅かされつつあった。

何だってこんな.....。


「お前。それをやったらマジにマズイ。俺が社会的に死ぬ」


「.....えへへ。良いじゃ無いですか。貴方だけが死ぬなら」


「このガキ!」


俺は頭をぐしゃぐしゃにした。

そして波乱万丈が始まりつつ.....あった。

何でこんな事に。

思いつつ赤髪の少女を見つめた。

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