第3話 冴島夢とは

試験勉強をする事になった。

俺は静かに勉強道具を広げていく。

そして冴島も俺を見ながら勉強道具を広げた。


自室で自宅にいきなり現れたしかも俺の許嫁?とされる女子と勉強会ってどうなっているのだ。

考えながら冴島を見ていると冴島はニコッとした。

そして教科書を見る。


「因みに、はーくん。私、勉強得意だから言ってね」


「.....やっぱり勉強は得意なのか?」


「そうだよ。こう見えて私、頭良いからね。無駄にだけど」


触ってみる?と頭を差し出してくる。

冗談で言っているのだろうけど女子の頭を触る?

いや、勘弁して下さい。

かなり良い香りがしてクラクラする。

俺は咳払いなしながら冴島を見る。


「そうだな、冴島。俺は数学が苦手だ。教えてくれないか」


「勿論教えてあげる。.....あ、どうせならそっちに行くね」


「いや、そこからでも教えてくれることは出来.....オイ!?」


寄って来た。

その唇といい柔らかそうな胸といい。

俺の元にやって来る。

恥ずかしくないのか?こんな事。

思いながら冴島を見る。


駄目だな、美少女過ぎるだろ。

考えながら冴島をあたふたしながら見つめる。

冴島はニコニコして俺を見てくる。


「あ~。はーくんドキドキしてるんだ。嬉しいな」


「お前.....からかうなよ.....」


「あはは。可愛いな。はーくん」


そして俺の頬に指を立ててくる。

ツンツンしてきた。

俺は真っ赤に赤面しながら俯く。

恥ずかしいというか.....胸が苦しい。

本当に有り得ないよな。


「.....冴島。お前の家ってどんな家だ?」


「私の家?どうしたの?」


「いや。俺の家に来るのを許すぐらいだから相当な家だなって思ってな。だからな」


「.....私の家はお金持ちだよ」


え?と俺は驚きながら冴島を見る。

簡単に言えば私の家は社長の家だから。

豪勢なんだよね、と苦笑いする。


でも私はお金よりも大切な物を見つけた。

君というね、と満面の笑顔を見せる。

俺は.....その言葉に、そうなのか、と返事した。


「私は遺産とかは要らないよ。10億円ぐらい有るらしいけどね。君と一緒ならもうそれで良いんだ。君はお金には代えられないからね」


「.....お前は強いんだな」


「強いんじゃないよ。私は.....強くない」


と少しだけ寂しげな顔をする冴島。

俺は首を傾げながら見る。

でもそれ.....良く許してくれたな。

俺の家に行く事を。

だって普通、金持ちの家ってこんな家に嫁がせたりしないだろ。


「冴島。お前の家.....俺の家によく嫁がせる目的で送る事が出来たな。普通は有り得ないだろ俺の様な一般人の家に嫁がせるとか」


「.....実は半分、逆らっているからね。お父さんに」


「.....え?」


「君に会いたい。だから.....半分逆らってこの場に居るんだよ。お父さんは.....怒っていると思うけどね。というか呆れていると思う」


俺は驚愕した。

その言葉に、だ。

冴島は.....話を続けた。


私には兄が居るの、だけど.....この世界って男が重要視されるよね。

次期社長兼.....遺産相続人かな。

私は要らない子だと思う扱いを少し受けたからねそのせいで。

と拳を握る。


俺は.....複雑なんだな、と思ってしまった。

この世界は確かに女に甘くない。

だから.....か。

と思っていると顔を上げた冴島。


「君さえ居ればもう何も要らないんだ。私。だから二人で一緒に歩んでいこうね」


「.....正直、お前を見る目が変わった。今の説明で」


「.....え?じゃあキスしてくれる?」


「話が別ですけどねそれ」


冴島は相当に苦労しているんだな。

俺はそんなには苦労してないからな。

痛みが分からないけど。

でも.....。


「冴島。お前がこの家に来た目的が分かったよ」


「そうかな?えへへ。嬉しい」


「ああ」


その様に会話しながら。

俺は少しだけ笑みを浮かべた。

そして目の前のノートを見つめる。

そう言えば。


「進路希望調査が有るだろ。お前、夢とか有るのか」


「え?私?.....そうだね。将来の夢か~。私ははーくんのお嫁さんになって.....はーくんを苦労させたくないかな」


「.....そうなのか」


「うん。私.....将来の夢は専業主婦だけど.....みんなに苦労させる大人になりたくは無いからね」


また少しだけ悲しげな顔でその様に言葉を発した冴島。

俺はその姿を見ながら頬を掻きつつ、そうか、と呟いた。

それから俺達は勉強を始めた。


冴島が教科書を指差したり自らの纏めているノートでしっかり教えてくれる。

最早、抜け目が無かった。

流石は天才と言えるような.....そんな感じだ。


「もー。はーくん勉強してる?駄目だよこれじゃ」


「す、すまない」


「ライトノベルも良いけど勉強をしっかりしてね」


「は、はい」


怒られた。

物珍しく、だ。

俺は盛大に溜息を吐きながら勉強をする。

そして1時間が経った。


「はーくん。休憩しよう」


「ああ、そうだな」


「やっぱり勉強って難しいよね」


「だな。俺は好きじゃない。勉強は」


本当に昔から嫌いなのだ、勉強は。

だけど冴島に教えてもらう度に。

なんだか自らが成長していっている気がした。

冴島は教えるのが上手いな。


「すっげぇ分かりやすかったよ。流石は天才だな」


「無駄に教えるのも上手いからね。昔から」


「.....教師を目指したらどうだ。そんなに上手いし」


「あはは。考えとこうかな」


言いながら冴島は部屋を出て行ってそしてお菓子とお茶を持って来る。

奇妙な生活はまだ始まったばかり。

これから先、どうなっていくのだろうか。

その様に.....思う。

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