れんあい

 サユリが参加している、スマホの通信アプリの各グループチャットでは、夏祭りを境に、色恋沙汰の話題でログで溢れるようになった。


 一番の話題は、シノブとキョウヤが破局して、キョウヤがハズキと付き合い出したことだ。美男美女の究極の高嶺の花カップルとして、グループに参加している女子たちの話題の中心になっていた。しかも、関係者は気まずい雰囲気にもならず、とても仲良しなままだった。略奪愛とか円満破局というキーワードが飛び交っていた。


 エリは、テニス部のキタガワと付き合い始めた。

 ミサキは、何故かバレー部のモトハシと付き合い始めた。

 アヤネは、何故かバスケ部のシモオカと付き合い始めた。


 エリは順当だったが、ミサキとアヤネ達に何があったのかは謎だった。



 しかし、彼氏ができようと、破局しようと、女バス同好会はいつも通りだ。

 練習後、いつものようにファミレスでおしゃべりに興じていた。


 ハヅキが質問した。

「エリは、わかるけど、ミサキとアヤネ達には何があったの?

 すごい番狂わせじゃない?」


 ミサキが答える。

「それ、ハヅキには言われたくない。

 恋愛モードじゃないって言ってなかった?

 なんでシノブからヒラタ君を略奪愛してんのよ?」


 ハヅキが答える。

「シノブ的には友達以上になれなかったみたいで、合流した時あまり良い雰囲気じゃなくてさ、なんとなくキョウヤ君と話してたら意気投合しちゃったって感じ?」


 エリが言う。

「高嶺の花は、やることがえげつないってことはわかった。

 それでどうして円満破局になるのか不思議でならない。

 本当にシノブは大丈夫なの?」


 シノブが答える。

「うん。私からは切り出し辛かったし、正直助かったのよ。

 当分は恋愛モードにはなれないかな。

 それより、ミサキとアヤネ達のことはどうなの?

 私も気になる」


 アヤネが答える。

「大したことじゃないの。

 なんとなく話してみたら気が合った的な感じ。

 ミサキもそうだったみたい」


 ミサキが返す。

「そうなのよ。

 イメージと実物は違うて言うか、勝手に妄想しすぎていたっていうか、そんな感じだったの。

 それで、なんとなく話してみて気が合ったのが、モトハシ君だったの」

 

 ハヅキが質問する。

「そういえば、キバ君はどうしたの?」


 ミサキが答える。

「食べ物にあたったみたい。お腹の具合が悪くなって、すぐ帰っちゃった」


 ハヅキが返す。

「運がなかったのね……」


 ミサキが答える。

「だねー。優良物件ではあったけどね。

 サユリ仲良いんでしょ?

 付き合ってみたら?」


 サユリが答える。

「うーん。私のこと女としてみてないからね」


 ミサキが答える。

「まじで? サユリ超可愛いじゃん」


 サユリが答える。

「私はシノブと仲良くしてる方が楽なんだよね……。

 イメチェンは続けるけどさ」


 ミサキが返す。

「それな。

 二人とも仲良すぎるんだとおもうよ。

 もう付き合っちゃえば?」


 サユリが答える。

「そうしようかな」


 シノブが答える。

「そうだね。その方が楽だし」


 ミサキとアヤネとエリが笑う。 

「「「あはは。超受ける」」」


 シノブとサユリは椅子の上に載せていた手を握り合った。

 それを見たハズキはニヤニヤしていた。

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