第5話
「ここは‥‥?」
急な光で麻痺した視界がだんだんと回復し、辺りを見渡すとそこは今までいた岩だらけの空間ではなかった。綺麗に整備された石畳、回りも岩ではなく様々な紋様な刻まれた壁、何より先ほどまで真っ暗だったのに今ではまるで昼間のように明るい
「?、あれは?」
正面を見ればそこには三体の竜の石像が鎮座していた。
セスはゆっくりと近づこうと足を踏み出した
「!?」
その時、異変に気がついた。
体力の限界だった身体が今はもう穴に落ちる前ぐらいまで回復していた。それだけではない長い距離を歩きボロボロだった靴もホコリまみれだった外套も体力と同じで戻っていた。まるで先ほどまでの苦行がなかったかのようだ。
セスは石像の前で止まり下からその石像達を見上げた。
「すごい‥‥」
よく見れば石像と言ったがクリスタルで形どられたそれはまるで本物の竜のように細部まで作り込まれており今にも動き出しそうな雰囲気を醸し出していた。
そして三体の竜の石像の前、セスが立ち止まった場所にあったのは一本の剣だった。
その剣は地面に突き刺す形で鎮座していた。
セスは剣に「握れ」と言われているような気がし無言で剣の柄の部分に手を掛けた。
「っ!!?な、なんだ!!?うっ、う、ぐぅぅあああっ!!」
その瞬間剣からセスの身体にとてつもなく大きな力が流れ込んだ。その力はセスの身体の中に入り込むと身体中を駆け巡る。それと同時に激しい痛みがセスを襲う。柄を離そうとしても何故か離すことができず絶え間ない痛みがセスの身体中を駆け巡る
「うっ、ぐ、うう‥‥」
余りの激痛に膝をつき意識を手放そうとした瞬間
〝ここまでか?〟
まるでセスを試すような声が頭の中に流れ込んできた。
まだだ!!
こんなとこで死んでたまるか!!
「う、うおおおおっ!!!!」
セスは怒号をあげながら立ち上がり両手で柄を掴むと剣を力一杯引き上げた。
「んのおぉぉ!!ぬけろやぁぁぁ!!のわっ!?」
そして最後の力を振り絞り剣を引き抜いた。
急に支えを失くしたセスは剣を持ったまま後ろに倒れた。そしておもむろに片手で剣を持ち上げ真上にかざし
「はぁ、はぁ、あはははっ!!よっしゃあああっ!!見ろっ!?ぬけたぞっ!?俺でもできたぞ!!あはははっ!!!!」
誰に言ったのか分からない
ただ、ただ、全ての人間に見放され、嫌われた自分が、あの激痛の中でも剣を抜くことができたことが嬉しく、これまでの自分の人生は無駄ではなかった!!と、どこからともなく沸き上がる感情が嬉しかったのだ。
しばらく歓喜の声をあげていたがさきほどのやり取りがこたえたのか、セスは高揚感の中静かに目を閉じた。自身が必死の思いで抜いた剣を胸に抱いて
だが、セスは気づいていない
剣を抜いた瞬間、目の前に聳え立っていた石像達が消えていることに。
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