第4話
ガロンが町の中へと消えてしばらく俺は呆然とガロンが消えたほうをただただ眺めることしかできなかった。
それからどれ程の時間がたったか分からないが俺はおもむろに立ち上がりガロンが投げた巾着を拾った。
中を見ると金貨が10枚ほど入っており、所持金も殆どない俺は巾着をポケットに突っ込んだ。
悔しい
この俺がガロンの施しを受けなけれなならないなんて‥‥
気づいたら手から血が出るほど拳を強く握っていた。
たしかに悔しい
だが、悔しいという気持ちよりも今の自分が情けなく腹立たしい!!
俺は踵を返して歩きだした
別に目的地などない
ただ、惨めな自分を見たくなくて、逃げるようにただただ歩いた。
☆☆☆
町から離れ今は森の中にいる。
この森にはダンジョンが存在する。
出現モンスターは弱く、よく初心者冒険者の初陣として使われるダンジョンだ。
そしてなぜ俺が手持ち、小銭とポケットナイフだけでそんな所にいるのか?
理由はない、ただ、通りかかっただけだ
この森を抜けた先にある村、そこが俺の故郷なのだ。両親はもういないがなんとなく足が向いたから行くことにした。
「ふ、村に帰ったら何するかな?畑でも耕すか?」
いいかもしれない
俺はもう冒険者にはなれない。
一度資格を剥奪された者は剥奪理由によるが二度と資格を発行してもらうことはできない規則がたしかあったはず、かと言って今さら違う職種につくのも気乗りしない、村に戻るついでにそのまま隠居して畑でも耕して過ごすか?
そんな考えが頭をよぎった時だ。
カチャ
「ん?わっ!!」
突然地面に穴があき俺はそのまま落ちた。
☆☆☆
「う、ここは‥‥?」
気がつくと辺りは真っ暗だった。
左右前後全てが黒一色の闇の世界、セスは掌に魔量を集めヒートボールを生成する。
掌サイズの火の玉のおかげで今自分がいる場所の確認を行うことができた。といってもあたりは岩、岩、岩だ。
セスはとりあえず前に進むことにした。
自分が穴に落ちたところまでは記憶がある。
ということはここは地下だ。
どこか上に繋がる道があればいいのだが、残念ながら今セスが見渡せる範囲にはそれらしきものは見つからない。
それから途方もなく歩いた。幸いこの地下は縦に長細くでており、右往左往せずにひたすら真っ直ぐ歩けばいい、いつの間にかセスは今までの自分を省みながら歩いた。
あの時もっと違う対応をとっていれば
あの時の自分は傲慢だった
あの時は、あの時は、あの時は、あの時は、
思考の渦に呑まれセスは無言で歩いた。
魔力がつき彼が生成したヒートボールは消えていた。
そして遂にセスの体力に限界がきた。
足に力が入らなくなり、立つのもやっとだった。セスは近場の壁に背中を預け地面に座り込んだ。
俺はどうやらここまでらしい‥‥
最後はなんと情けないだろう。
仲間を見下し邪魔扱いし追い出した。
そんな小さな器しか持たない自分に対して神が天罰を与えたのではないか?
味方だと思っていた仲間に見捨てられ、友人だと思っていた友人達も自分から離れていった。そして最後は一人、誰にも見つからないであろう地下洞窟での孤独死
俺の今までの人生は無駄だったのだろうか?
「‥‥ちきしょ‥‥く‥‥そっ‥‥う、くぅ‥‥」
自然と目から涙が溢れる。
こんな所で死にたくない‥‥
まだだ、まだ生きたい
セスは拳を強く握ると立ち上がりまた歩きだした。すでに限界を迎えていたセスを動かすものそれは命への執着、それだけだった。
だが、気力が復活してもすでに彼の身体は限界だ。十数歩あるくと彼は前のめりに倒れた。
まだだ、まだ、死、にたくない‥‥
セスは右手を前に付き出した。その時だ
「うっ!?」
セスの前方から目映い光がおこった。
セスの視界は白く染まり、余りの眩しさに彼は目を閉じたのだった。
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