第3話

「はぁ、なんでこうなった‥‥」


ガロンを追放すべく暗躍し、追放宣言まではよかった。だがその時に俺の味方だと思っていた他のパーティーメンバーも出ていき、なにが起こったが考える間もなく冒険者ギルドを追放された‥‥

さらに今まで虚偽の報告に関する罰金としてパーティーホームも取り上げられホームに置いてあった一級品の装備やアイテムも没収、殆ど身一つで追い出された。

今俺の手元にあるのはポケットに偶々入っていた小銭と昔から愛用していたポケットナイフのみ、これでどうしろ?

さらに追い討ちのように町の人々は掌を返したように態度が急変した。


何も無さすぎてやばいと考えた俺は昔から利用していた馴染みの商店に行ったが


「お前のような屑に売る商品なんてない!!消えろっ!!」


と石を投げられながら追い返され、

ホームを手に入れるまでよく利用し、ホームを手に入れてからも毎日必ず食堂を利用していた食堂兼宿屋に向かえば入り口に俺そっくりな似顔絵が書いてありその下には


『入店お断り』


とあり、がっくりと肩を落として引き返した。ならばとよく酒を交わし、一緒に冒険に行ったことがある冒険者仲間がよくいる酒場に行けば


「どちら様ですか?」

「誰だよ?」

「あ~あ!!ゴミがいるとか気分最悪だぜ」


と他人のふりをされ汚い者扱い、最後には店長から無言で帰れジェスチャーだった。


どうやらこの町に俺の居場所はもうないらしい

何も考えられなくなった俺はふらふらと町を出ようと防壁に向かった。すると町を出入りできる門の所に人影があった。

門に近づくにつれてだんだんとその人物が誰かはっきり見えるようになった。

今俺がもっとも会いたくない男

戦士ガロンが両腕を組み壁に寄りかかり目を閉じて立っていた。


俺はガロンを無視することにした。

正直今は何を言えばいいのか分からない。

だが、いざガロンの前を横切ろうした時


こんな惨めな俺を見て満足か?

笑えよ?

お前を追放して一時も待たずにこんな姿になった俺を笑えよ!!

お前がいなければこんなことにならなかった、お前さえいなければ!!

消えろ!!

消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ

俺の前からいなくなれ!!


段々とガロンに対する怨みが込み上げて俺は足を止めた。ガロンは相変わらず動く気配はなく壁に寄りかかったままだ。

それがさらに気にくわなかった

俺は振り返りガロンの顔目掛けて拳を振り上げた。


「え?」


拳はガロンの顔面左頬に当たるがガロンらピクリともしない。

そしてガロンはゆっくりと目を開くと同時に


「軽いな」

「は?ふごっ!!!?」


ガロンが何かいい返答しようとした瞬間俺は右側から強烈な衝撃を受け一気に町の外にぶっ飛んだ。

しばらくして顔の右側から痛みを感じそこで漸く自分は殴られたのだと理解した。

痛みを我慢し上半身のみ起き上がるとガロンがまるでゴミ屑を見るような目で俺を見下ろしていた。


「よっわ!?まじで?今ほんのちょっとしか力入れてないよ?ぷ、ぷあはは!!傑作だ!!」


ガロンは急に笑いだし俺は何がなんだか分からなかった。あのガロンが?俺を殴った?

俺を見下した?

ガロンは気にくわなかったが俺はどこかでガロンを尊敬していた。

ガロンは誰にでも優しく謙虚だった

こんな人を見下したり嘲笑ったりするような奴ではなかった。ガロンはひととおり笑うと未だ呆然とする俺を見下ろし


「ふ~、笑った笑った!!こんなに笑ったのは久しぶりだな!!あ~、それでセス、これをやるよ」


そう言うやガロンは巾着を俺に投げ渡した。

巾着はチャリチャリ音を鳴らし俺の前に落ちた。


「今までありがとうなー、それはせめてもの情けだ大事に使えよ、それじゃな~」


そう言うやガロンは踵を返して町の中へと消えていった。


あれは誰だ‥‥‥

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