第3話「山賊、討伐!!」

――相手、山賊――

――想定戦力、FE2機――


 という、正直ここまで相手の戦力が解る依頼というのも妙な物だなとは思いつつも、それがゲームという物であるとは俺も思う。


「セツナ、準備はいいか?」

「……も、もちろんでござる」

「?」


 何か、コクピットの中で声を震わせているセツナの様子を俺は訝しげに思いながらも、俺はそのまま自機「ハンターフォックス」のコンディションを確認する。


「俺の装備はロングソードにミディアムシールドっと……」


 恐らくはセツナのハンターフォックスも同じ装備であると思われるが、先ほどそのセツナに訊ねた所によれば、どうやら彼女は「機械の館」に売っているカタナが欲しかった模様。


「けど、初心者にとってあれは高嶺の花らしいからな……」


 結局、未だにレベル1かつ領土が四畳半である俺達には、この一般的な剣と盾がお似合いだと言うことだ。


「セツナ、お前は右の奴を倒してくれ」

「……あの、ゲイル殿」

「ん、何だ?」

「先に二人掛かりで、一機を仕留めないでござるか?」

「えっ?」

「い、いや……」


 今の俺にはセツナのその姿が見えない。それでもやはりコクピット越しに聴こえてくる彼女の声は震えている。ようだ。


「せ、拙者はゲイル殿の事を信用しておらぬ!!」

「ひでぇ言われようだな、おい」

「過信は止める事だ、ゲイル殿!!」

「いや、何も過信していないし」

「まずは一機ずつ、そうするでござる」

「まあ、良いけど……」


 俺はそのセツナとの会話も程々に、そのまま目の前の洞窟、それの入り口前にとそびえたつ山賊達の機体を確認する。


「機体名、ヘルドーマ……」


 設定上では王国軍の型落ち品である。少くとも俺達が乗っている「ハンターフォックス」と比べて、その性能は約半分であるということ。


「よし、ではセツナ」

「は、はひっ!?」

「……まずは右から狙うぞ」

「わ、解ったでござる」

「三、二、一……」


 その俺のカウント・ダウンと共にFE、フレームエレメントのエンジン出力が上がり始める、そのまま俺は自らの機体に握らせている剣に、操縦桿を通して「力を」込め。


「ゴー!!」


 ダァ!!


 そのまま、洞窟前にというヘルドーマに向けて機体の脚を運ぶ。戦闘ターンの始まりだ。


「よし、イニシアチブを取った!!」


 とはいえ、別に接敵していない以上イニシアチブを取っても何も良いことはない。そのまま、ひたすらハンターフォックスの両脚をガシャガシャと動かす俺とセツナ。そしてそのまま第二ターン。


「えりゃ!!」


 再びイニシアチブを取った俺達、そのまま俺はハンターフォックスを敵のFEに接近させて、そのまま剣を振るう。相手は回避しようとしたが、俺の剣はそのヘルドーマに対して何とか打撃を与える。


「ひやぁあ!!」


 何か悲鳴のようなセツナの攻撃、あたかも直立した騎士のようなセツナ機ハンターフォックスは、妙な声を上げながらもどうにか、そのまま赤く一つ目であるヘルドーマにその刃を滑らす。


「お前は死肉の塊だぁ!!」


 続いて攻撃が始まる山賊たちのヘルドーマ。上半身がやけに太いトップヘビーなゴリラみたいなその機体は、ぎこちなく動きながらもその手に持った斧をもってセツナの機体にと攻撃を加え始めた。


「た、助けて~!!」


 そのセツナ機から放たれる情けない悲鳴…… はいいとして、二機がかりでのセツナ機への攻撃、それをセツナはかわしきれず、そのまま相手の斧による衝撃をもって、彼女の機体は片膝をついてしまう。


「助けて、ゲイル殿~!!」

「あー、はいはい」


 第三ターン、今回は敵のイニシアチブだ。


「頭ねじきって、オモチャにしてやる!!」


 何やらよく解らん怒声をはなってのヘルドーマからの攻撃、その攻撃が向かう先はまたしてもセツナ機だ。


 ガシャア!!


「おい!?」


 セツナ機中破、何か全く攻撃を避ける気配を見せなかったそのセツナに対して俺は苛立った声を上げながらも、そのまま相手の内一機に対して「強打」のスキルを発動させる。攻撃力を強化させるスキルだ。


 グゥア……!!


その「強打」は見事にクリティカルを発生させ、ヘルドーマのその歪な機体は音を立てて地面にと崩れ落ちた。残りは後一機。


「セツナ、何をやっているんだ?」


 セツナのハンターフォックスはその脚をバタバタとさせ、まるで遊んでいるかのよう。その光景を俺は呆れたように見つめながらも、そのまま残ったヘルドーマにと剣を繰り出した。




――――――




 呆れた事に俺が山賊達と戦っている最中、セツナはコクピットの中で気を失っていたらしい。


「すまないでござる、すまないでござるー!!」

「あーもう泣かないで……」

「拙者、本当は意気地無しで、ソロなんかが全く出来なくて、それで……」


 そのまま俺の胸の中で涙を吹き出している、白と黒のセパレートで構成されたパイロットスーツ姿のセツナ。そのピチピチの服装のままである彼女の言葉を耳に入れながら、俺は下り始めた夕陽に向かってその目を瞬きさせる。


「ゲイル殿、貴殿を始めて見た時にこの人なら安心出来ると、そう思ったでござる~!!」

「な、何で?」

「拙者がいくら失敗しても、笑って許してくれると、そう思って……!!」

「そして、俺の仲間になったわけかあ……」

「うわーん!!」


 セツナはこの場でいつまでも泣き続け、その彼女に少しうんざりしてきた俺は、そのまま彼女セツナの顔を自分のそれと正面から向き合わせた。


「ゲイルどの……?」

「いいか、セツナ」


 そのまま俺は静かに声を潜めながら、確かどこかのテレビドラマで聴いたような台詞を舌にと述べ始める。


「人間は誰だって弱い」

「……ゲイル殿」

「弱いからこそ、強くなれるんだ」

「ゲイル殿!!」


 確かこんな台詞だった気がする、うん。


「拙者は、強くなりたい!!」

「行こう、セツナ!!」

「どこに!?」

「あの夕陽に!!」


 沈みかけた美しい夕陽、このゲームのグラフィックを作ってくれた人に感謝しながら、俺は最後の台詞を思い出す。


「あの夕陽に向かって、ジャンプだ!!」

「ゲイル殿~!!」


 その胡散臭い台詞を吐く俺に力強く抱きつく、美しき黒髪の女サムライセツナ、俺はその間にそっとヘルドーマを倒した事によるドロップ品を回収した。


――ハンドアックスの残骸<劣悪>×2――

――FE用筋組織<低質>×1――

――土のコア<劣悪>×1――

――セツナの涙<上質>×1――


「……悪い男になったかな、俺も?」



■ゲイルの領地


――広さ、畳四畳半――

――収入、銀貨100枚――

――兵力、フレーム・エレメント2機――

――住人、2人――

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