第43話 お昼休みの話し合い
私とレティは、いつも通り学校に来ていた。
今は、お昼休みで、レティと話している。
「お姉様、今日もおいしいお弁当でした」
「あ、うん……」
昼食を食べ終わり、レティはそう言ってくれた。
だが、私はその言葉に、短く答えることしかできなかった。なぜなら、他のことを考えていたからだ。
「お姉様? 具合でも悪いんですか?」
「あ、ごめん。少し、考えごとをしていて……」
「考えごと?」
そんな私を、レティは心配してくれた。
これは、申し訳ないことをしてしまった。
レティと話しているのに、別のことを考えるべきではない。
「もしかして、プリネさんのことですか?」
「うん……」
私の考えたことを、レティは見事に当てた。
といっても、昨日からの流れを知っているレティにとって、この予想は簡単だったかもしれない。
「お姉様も、大変ですね。色々と悩んで……」
「あ、今は別に暗く悩んでいる訳ではないよ。まず、どうやって声をかけたら萎縮しないのかを考えていただけで……」
「いや、明るい悩みってなんですか? そもそも、元気がないように見えるので、まったく説得力がありませんよ」
レティに心配させないように言った言葉だったが、あまり効果はなかった。
確かに、明るかったら悩みとはいえないかもしれない。
「私ね……今まで、こういうことで悩んだことがなかったら、結構考えているのかも……」
「悩んだことがないですか?」
「うん。私が、元々いた村では、こういう身分の差で仲良くなれないというのは、なかったから……」
「ああ……」
こんなにも悩んでいるのは、今までこういう経験がなかったからだと、私は考える。
お父さんとお母さんがまだ生きていた時、私は領地の村で暮らしていた。その村では、身分の差など特に気にしていなかった。
例えば、トルカなどもそうである。
「トルカとか他の村の友達とは、そういう悩みはまったくなかったな。普通に会って、普通に仲良くなれた」
「へえ、そうなんですか」
「うん。お父さんもお母さんも村の人も、身分の差というのをそこまで意識していなかったのだと思う」
私のお父さんとお母さんは、自身の領地の人達ととても親しかった。
そのため、かなり距離感も近かったのだ。
「領地の人と仲がいいというのはいいことだと思います。でも、距離感が近すぎるのも考えものですよ?」
「うん。でも、領地もとても狭い範囲で、皆顔見知りだったから、ほとんど友達という感覚だったのかな?」
「友達感覚ですか……」
フォリシス家に来てから、私は二人と領民の関係が少しおかしいものだと知った。
普通の貴族は、領民と一緒に畑を耕したりしないし、領民に頼まれて家の屋根を直したりしない。
二人の領民への関わり方は、かなりすごかった。ただ、それで別に失敗だったという訳ではないはずだ。
「でも、いいこともあったよ。例えば、私達が困っていたら、領民の人達は絶対に助けてくれたからね」
「なるほど、信頼関係がかなりあったということですね」
「うん。なんというか、もう皆家族みたいな感じだったのかな……」
「まあ、それも一つの統治なんですかね」
私達家族と、領地の人達は家族のような者だったのかもしれない。レティと話している内に、私はそんなことを思っていた。
だが、今の私は、その時とまったく違う立場にある。
「それに比べると、フォリシス家は全然違うよね……」
「まあ、そもそも、同じ貴族でも規模が違いますからね。どんなに頑張っても、全員と顔を合わせて親しくなるのは、無理だと思います」
「そうだよね……」
フォリシス家は、公爵家という地位に位置しており、その領地の規模もかなり大きい。
そのため、領民と友達になるということは、絶対にできないことである。
もちろん、特定の親しい領民はいるかもしれないが、それは別の問題だろう。
「まあ、とにかく、今回はもっと気楽にいきましょう」
「あ、うん。そうだよね……」
そこで、レティは話をまとめてくれた。
話がかなりそれてしまったが、そもそもプリネさんと仲良くなる話をしていたのだ。
とにかく、もっと気楽にすればいいのである。
そんな話をしながら、私とレティはお昼休みを過ごすのだった。
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