第20話 称賛に値すること

 私とレティは、学園から家へと帰って来ていた。

 今は、あることのために、レティの部屋に集まっている。


「はあ、今日はなんなんでしょうか……?」

「わからないけど……特に、悪いことはしていないはずだよね?」

「そうだと思うんですけど……」


 私達は、今日もお兄様に呼び出されていた。

 まだ呼び出しの時間まで少しあるので、レティと作戦会議をしているのだ。

 今日は、特に悪いことはしていないはずなのだが、一体、お兄様はどうして呼び出しているのだろうか。


「なんだか、ほぼ毎回呼び出されている気がしますね……」

「うん……」


 なんだか、私達はお兄様によく呼びだされている。

 その度に、何があったのかと緊張してしまう。お兄様は、理由もなく呼びださないので、そう感じてしまうのだ。


「まあ、行くしかないんですけど……」

「それは、そうだね」


 お兄様からの呼び出しを断るという選択肢は、私達の中にはない。

 お兄様は、私達の敬愛するお兄様であり、ここでは私達の保護者であるも同然だ。そんな人の呼び出しを、断れるはずはないのである。


 こうして、私とレティは、お兄様の元へと向かうのだった。




◇◇◇




 私とレティは、お兄様の元に来ていた。


「お兄様、今日はどのようなご用件でしょうか……?」

「ああ……」


 私の質問に、お兄様は口の端を少し歪める。

 その様子は、怒っているようには見えない。恐らく、今日は怒られるようなことではないのだろう。


「実は、礼節の教員から、話を聞いたのだ」

「礼節の先生からですか……?」

「ああ……」


 どうやら、お兄様は礼節の先生から、何かを言われたらしい。

 礼節の先生は、私達のことを褒めてくれていた。そのため、お兄様に伝わったのも、いい結果であるはずだ。


「お前達の礼節は完璧だと言われた。どうやら、礼節の授業で、いい結果を残したらしいな……」

「は、はい……」


 そこで、お兄様は笑った。

 その笑みは、嬉しそうな笑みである。

 つまり、お兄様は私達の評価を喜んでくれているのだ。そのことに、私まで嬉しくなってしまう。


「お前達を褒めたのは、一流の教員だ。その者が、完璧だと評した。その事実は、この俺も賞賛しなければならないだろう。よくやった、二人とも」

「お兄様……ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」


 お兄様から、賞賛の言葉を頂いた。

 これは、私達にとって、とても光栄なことだ。

 そのことに、私の心は穏やかではない。こんなに嬉しいことは、中々ないだろう。


「これも、お兄様の教育のおかげです」

「俺は指導をしただけにすぎない。それをものにしたのは、お前達の努力だ。故に、俺のおかげなどという必要はない。これは、お前達自身の成果だ」

「ありがとうございます、お兄様……」


 私の言葉にも、お兄様は嬉しい言葉で返してくれる。

 これは、私自身の成果。そう言ってもらえるのは、本当にありがたい。


「この俺としたことが、思わずお前達を呼び出してしまった。それ程までに、俺はこの結果を喜んでいるということだ」

「お兄様……」

「だが、この結果に油断するな。これからも、このような結果を出せるように、日々精進しろ」

「はい……」

「は、はい……」


 しかし、それだけでは終わらないのがお兄様だ。

 褒められたのは、今日の一回だけ。これからも、評価されるように、精進することが大事なのだ。


「さて、今日はもう一つ話がある」

「はい。どのような用件ですか?」


 そこで、お兄様がそんなことを言ってきた。

 どうやら、今日呼び出されたのは、このことだけではないようだ。

 これは、再度気を引き締めなければならない。一体、どのような用件だろうか。


「もうすぐ、お前達にも休日が訪れるだろう。それに合わせて、父上と母上が来るらしい」

「え!? お父様とお母様が!?」

「ええっ!? ほ、本当ですか?」

「ああ、丁度予定が空いたようだ」


 次の用件は、お父様とお母様の来訪だった。

 二人とも忙しく、中々予定がとれないが、私達の休日に合わせて、ここに来るらしい。これは、一大事だ。


「入学式に来られなかったことを、かなり気にしているようでな。俺から色々と言ってあるが、お前達からもフォローしてやってくれ」

「あ、はい……」

「ああ、そういえば、そうでしたね」


 お父様とお母様は、仕事の都合上、私達の入学式に来られなかった。

 そのことを、かなり気にしており、すごく悲しんでいるらしい。

 私とレティに、わざわざ謝罪の手紙まで送ってきたため、その気持ちは相当なものだろう。そのことは、きちんとフォローしておかなければならない。


 こうして、私達は、お父様とお母様を迎えることになるのだった。

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