第12話 大切な贈り物
私とレティは、お兄様に呼び出されていた。
そこで、今日の入学式での態度を褒められたのだった。
「それで、今日の用件は、これで終わりなんですか?」
「いや、それだけではない」
一通り話が終わった後、レティがお兄様に問いかける。
しかし、お兄様はそれに対して否定の言葉を返した。どうやら、今日は他にも用件があるらしい。
「さて……」
そう言った後、お兄様は机の引き出しを開ける。
そして、その中から何かを取り出し、机の上に置く。
「……今日呼びだしたのは、先程のことを言いたかったのもあるが、もう一つある。それは、これだ」
「え? これって……」
「もしかして、プレゼントですか? あのお兄様が?」
私とレティは、目の前に出された物に驚いた。
その包装された二つの物体は、明らかにプレゼントのように思える。
お兄様からプレゼントをもらえるなど、滅多にないことだ。私は、感激で体が震えてしまう。
「あのお兄様というのは……いや、いいとするか。これは、お前達への入学祝いだ」
「入学祝いですか……ありがとうございます。お兄様……」
「あ、ありがとうございます。お兄様からプレゼントなんて、驚いたので、失礼な言葉を使ってしまいました。申し訳ございません」
「ふ、構わない。今の俺は、機嫌がいいからな……」
私とレティは、それぞれ包みを手に取った。
お兄様からのプレゼントとは、一体どのようなものなのだろうか。
「開けてもよろしいですか?」
「ああ、好きにしろ」
開けてもいいか、お兄様に聞いてみると、快く了承してくれた。
という訳で、私もレティもプレゼントの包みを開いていく。
「これは……ペンですか?」
「あ、私も同じですね……」
私とレティに渡されたのは、同じものだった。
細部の色は異なっているが、デザインも同じように見える。
そして、このペンのデザインには見覚えもあった。私とレティは、同時にお兄様の方を見る。
「ふっ……気づいたか」
「お兄様、このペンは……」
「お兄様が、お父様から貰ったペンと、同じものなんですね……」
「そうだ。それは、俺が父から学園を建てる際に貰ったこのペンと、同じものだ」
そう言って、お兄様は懐から一本のペンを取り出す。
それは、お兄様が学園を建てる際、お父様が贈ったペンだ。
オーダーメイドらしく、世界に一本しかない特別なペンである。それと、同じデザインをしているということは、これのペンもまたオーダーメイドということだろう。
「父に聞いて、このペンを作った職人に依頼したのだ。後二本、このペンと同じものを作って欲しいと……」
「そうだったのですね……」
「まさか、そのようなものをプレゼントして頂けるなんて……」
私もレティも、このプレゼントにはとても驚いた。
お父様からのプレゼントは、お兄様にとって、とても大切なものである。それと同じものを貰えるなど、信じられないのだ。
「そのペンを使い、しっかりと勉学に励むがいい」
「は、はい……!」
「え? 勉学は……いえ、はい」
お兄様の言葉に、私とレティはしっかりと答える。
こうして、私達とお兄様との話し合いは終わるのだった。
◇◇◇
お兄様との話が終わった後、私はレティの部屋に来ていた。
「それにしても、お兄様がこのペンをくれるなんて、驚きですよね」
「うん、そうだね」
私もレティも、お兄様から貰ったペンに、未だに驚いている。
それ程に、この贈り物は衝撃的だったのだ。
「お父様からの贈り物……お兄様にとっては、特別な意味があるんだよね」
「ええ、まあ、お姉様は知りませんが、昔のお父様はかなり厳しい方でしたから、お兄様も大変厳しい指導を受けてきたんです」
お兄様とお父様の関係は、かなり特別なものだった。
今は、とても優しいお父様だが、昔はとても厳しい人だったらしい。そんな人だったため、お兄様への指導もかなり厳しかったそうだ。
それにより、お兄様とお父様は、一筋縄ではいかない関係になったのである。
「そんなお父様から、学園が始まる日に貰ったあのペンは、お兄様にとって、とても大切なものです。お父様に認めてもらえた瞬間、とでもいうべきですかね……」
「うん、本当に思い入れの深いものだよね……」
時は流れ、お兄様の学園が始まる日。
その日、お父様はお兄様に初めて贈り物を送った。それが、あのペンなのだ。
二人の関係は、その時大きく変わった。父と息子が、初めてわかり合えたのだ。
そういう意味で、あのペンはとても特別なものなのである。
「でも、あのお父様が厳しい人だったなんて、私には信じられないな……」
「まあ、あの人はお姉様にはとても甘いですからね……」
「私の本当の両親が、関係しているらしいけど……」
「ええ、厳しかったあの人が変わったのが、お姉様の本当の両親に助けられたからだそうです。あの変わりようは、ある意味異常でしたけど……」
お父様は、私の本当の両親に助けられたことで、変わったらしい。
ただ、私は変わった後しか知らないので、よくわかっていないのである。
そんな話をしながら、私とレティは過ごすのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます