第2話(リクルド視点)

 ※この話は、第2話のリクルドの視点です。



 俺の名前は、リクルド・フォリシス。

 誇り高きフォリシス家の長男にして、フォルシアス学園の学園長だ。


 この俺と我が妹ルリアが話している途中、もう一人の妹レティが声をあげてきた。


 レティは、この俺の心中を見抜く発言をしてきた。

 それ自体は、評価すべきことだろう。我が心中を見抜けるようになったことは大したものだ。

 だが、それはルリアに知られてはならないことである。よって、俺はこの妹に敬意を持ちつつ、叩き潰すことに決めた。

 もし、レティがこれに耐えられ、自身に意見を曲げることがなかったならば、俺も敗北を認めるとしよう。


「お、お兄様、し、視線が妹に向けるものではないですよ?」

「黙れ、愚かなる妹よ。これの俺に対して、知ったような口を聞いたこと、只事で済むと思うな……」

「ひ、ひい、お姉様」


 俺の視線に、レティはルリアの後ろに隠れてしまった。

 どうやら、俺と正面から戦える力はまだついていないようだ。


「お、お兄様、落ち着いてください。レティも、悪気があった訳ではないと思います」

「……わかっている。だが、そこの妹は、兄に対する敬意というものが、根本的に足りていない。兄として、それを放っておく訳にはいかないだろう」


 そんなレティを心配したのか、優しき妹がフォローを入れてきた。

 しかし、俺も今更出した刃を引く訳にはいかない。ここで、納得できる理由が述べられなければ、俺は納得しないだろう。


「お兄様、レティは決して、お兄様を愚弄するような意味で言った訳ではありません。そ、そんなことないよね、レティ?」

「ふん! ふん!」

「ほう……?」


 ここで、俺の標的が変わった。

 レティは、最早俺に何かを言う気力はないようだ。だが、ルリアの方が俺に理由を言うらしい。

 それなら、そちらの実力を見せてもらおうか。


「ならば、なんだという?」

「きっと、冗談のつもりで言ったのだと思います。お兄様も先程、私に冗談を言ってくれました。要は、兄と妹の軽いコミュニケーションです」

「……なるほど」


 ルリアの言った理由は、俺も納得できることだった。

 先程、俺も厳しいことを冗談として述べたため、これには納得せざるを得ない。

 流石は、我が気高き妹だ。かなり、成長している。


「違いないか? 我が妹よ」

「え、ええ、それはもちろん。もう、冗談です。わかりにくくて、申し訳ありませんでした」

「いや、この俺も少々怒り過ぎた。妹の冗談も見抜けないとは、俺もまだまだということだろう」


 念のため、レティに確認し、俺は刃を収めた。

 こちらの妹は、まだまだ鍛え上げなければならないようだ。


「さて、話の続きをするとしようか」

「あ、そうですね」

「お前には、セント女学院に通ってもらう。それで、構わないな?」

「はい。残念ですけど、仕方ありません」


 そこで、俺は話を戻した。

 本当の理由は明かされなかったが、ルリアは先程の説明で納得したようだ。


「それにしても、お姉様、よくお兄様の学園に通いたいなんて、思いますね?」

「え? レティ、それってどういう意味?」


 その時、愚かなる妹の方が声をあげた。

 だが、その言葉は見過ごせなそうにないものだ。

 ただ、俺の解釈違いの可能性があるため、もう少し話を聞くとしよう。


「だって、お兄様の学園なんて、絶対に厳しいじゃないですか。しかも、学園長の妹なんて、肩身が狭くて仕方ありませんよ。気軽に、サボることもできません」


 どうやら、この愚かすぎる妹の性根を叩き直さなければならないようだ。

 誇り高きフォルシアス学園が、サボるなどということは許されることではない。それは、我が学園であろうと、他の学園であろうと変わらないことだ。


「愚かなる妹よ。今の言葉に嘘偽りはないのだな?」

「え? お兄様? い、いえ、それは……」

「どうやら、お前は誇り高きフォリシス家の娘として自覚が足りないらしいな……」

「も、申し訳ありませんでした、お兄様!」


 レティは、謝罪の言葉を口にしたが、それで俺が許すことはない。

 精神を根本的に正さなければ、この妹はいつか重大な間違いを起こすだろう。

 そうなる前に、道を正すのが、兄としてできることだ。


「気が変わった。お前達姉妹には、我が学園に入ってもらう」

「え? お兄様、本当ですか?」

「ああ、本当だ。俺は兄として、そちらの愚かなる妹の性根を叩き直さなければならないからな……」

「げ……」


 そのために、レティを我が学園に入れなければならない。

 それに伴い、ルリアも我が学園に入ってもらう必要がある。そういった面で、姉妹に優劣をつけないのが、このリクルドの主義だ。


「で、でも、お兄様? 私の年齢では、学園に入学できませんよ?」

「魔法学校に入るには、二つのルートがある。一つは、十六歳になる年に正規入学する方法。そして、もう一つは、特別入学試験を受けることだ」

「と、特別入学試験……?」


 そして、レティには、ルリアと同じ年に入学してもらう。

 魔法学校入学には、特別に試験を受けることで、年齢に達していなくても入ることができる。それを、レティに適用するのだ。


 これには、色々と理由がある。

 一番は、愚かなる妹が、一人で円滑に学園生活を送れないと思ったからだ。ルリアがいれば、この軟弱な妹も普通に学園生活を送れるだろう。


「お前には、その試験を受けて、我が学園に入ってもらう。この俺が自ら採点するが故に、手を抜くことは許さん……」

「は、はい……」


 この妹は、手を抜いてわざと試験に落ちようとする可能性がある。そのため、先に手を打っておく。俺ならば、レティが何を知っており、何を知らないかを判断できる。


 それで、落ちたのなら、仕方がないことだ。最も、神童と呼ばれているこの妹が、普通にやって試験に落ちるなどあり得ないとは思うが。


 そもそも、どうせいずれ入ることになるというのに、何故この妹は拒否しようとするのだろうか。どの道行くならば、ルリアと同じ年の方が、メリットが大きいというのに。その辺りも、未熟ということか。


 こうして、俺と妹達との入学に関する話は終わるのだった。

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