第23話 双子へのプレゼントを買いに行こう②
「あーこれユカが撮影で着た服だー!」
「あ……あっちに……ミカの欲しいガチャガチャがいっぱい……!」
ミカたちとショッピングモールを回ることになったが、二人とも趣味がバラバラなせいで付いていくこっちが大変だ。
しかし双子なのに、本当に正反対な二人だ。
ミカは玩具やゲームのある店に興味を示しているが、ユカは服やコスメといったオシャレな物を見ようとする。
「りょう君……最近のガチャガチャって……現金いらないんだよ……。これで……いくらでも回せる……」
「それって別に金減らないわけじゃ無いからね?」
逆に電子決済の方が金銭感覚分からなくて、浪費しちゃう人もいるんじゃないだろうか。
「ねぇリョウ君ー! この服、ユカに似合うかなー? どう、かわいい?」
「あーうん、似合うと思うよ。ユカはオシャレだなー」
すまん、正直オシャレは専門外だ。まぁユカなら何着ても似合うから、嘘は言ってないさ。
「あれ? 何か目的を忘れてるような……」
三人で店を見て回るのが楽しくて、つい本題を見失っていた。
今日はミカとユカ、二人の誕生日プレゼントの下見に来たんじゃないか。
それなのに、何普通に遊んでるんだ俺は。うっかりさんか、いらんわそんな属性。
「専門店街見てたはずなのに、モール側に来ちゃってるし」
「まぁいいじゃんー! ユカ、色々見れて楽しいよー!」
「ミカも……ネットで買い物するのが多いから……結構楽しい……」
「二人の買い物に付き合ってる感じになっちゃってるし」
気を取り直して、何かめぼしい物はないかな。
専門店街は専門的すぎて駄目だったし、モール側で探すしかない。
「お、これとか良さそうじゃないか」
俺が手にしたのはペアのマグカップだった。
ピンクと水色の二つがセットになっている様で、俺から見ても可愛いマグカップで目に留まるデザインだった。
これ、結構いいんじゃないか? でも、色の感じからして男女のペア想定してるよな、これ。
他の色がないか探してみるけど、薄紫と紺色のセットしかなかった。
「ミカは薄紫の落ち着いた感じが本人のイメージに合ってるなぁ。ユカも可愛くて人気者って感じだし、ピンクがぴったりだ。でも、この二つはセットじゃないのか」
せっかくピンと来た物を見つけたと思ったのに……。
でもまぁ、プレゼントの参考にはなったから覚えておくか。
「あぁ……こ、これは……今大人気のゲーム……! こんなところで売ってるなんて……!」
ミカは家庭用ゲームのパッケージを手に取って、羨ましそうに眺めていた。
「ああ、このRPGすごい面白かったよ。売り切れて買うの大変だったなー」
「りょう君……持ってるの……!?」
「うん。このシリーズ、ずっと買ってるからね。発売日に買って、次の日の朝にクリアした。おかげで授業が眠くてキツかったなぁ」
「そ……それはそれで、ダメな気がする……」
ごもっともなご意見だけど、オタクは学業より優先しないといけないことがあるのだ。
逆に寝る時間を削ってでもゲームを消化しないと、休日がゲーム漬けになってしまう。
「あの……今度、そのゲーム……やりに行って……いいかな?」
「俺んちに来るってことか? わざわざそんな事しなくても、ソフト貸すぞ?」
「うぅん……好きなゲームは……自分で買いたいから……。どんなゲームか……触らせて貰うだけ……」
流石ミカ、まぁ好きな作品は推せる時に推せって言うしな。好きなコンテンツにお金を落とす、まさにオタクの鑑だ。
「じゃあ今度うちに来なよ。他にもおすすめのゲームとか、色々あるからさ」
「う、うん……! また……遊びに……行くね」
今度こそお茶の用意くらいしとかなきゃ。
ミカが来た時には俺一押しの対戦ゲームで、ゲーセンの借りを返してやるぜ。
「うーん」
「なに枕なんて見てるんだよ。年寄りじゃあるまいし」
「あー! ユカのこと年寄り呼ばわりしたー! もう、怒っちゃうんだからねっ!」
「あー悪い、その……マジで悩んでるんだな。まぁ不眠症とか、結構な人が悩んでるらしいから……」
スマホやPCを一日中眺めてるせいで、中々寝付けなかったり、睡眠が浅くなるとかニュースでやってた気がする。
そういえばスマホのせいで眼球疲労とか首のしびれなんかも増えてるらしい。現代病ってやつかね。ま、俺は平気だから関係ないか。
「勘違いしないでよー。別にそういうのじゃないし」
「じゃあ枕にこだわりがあるのか? 変わった趣味してるなぁ」
「だから違うってば-。ほら、この枕『肩こりに効く! 安眠枕!』って書いてるでしょー?」
ユカは商品棚に張ってあるキャッチコピーを指さして言う。
枕には詳しくないが、『これで熟睡確実!』とでかでかと書いてある。
何だかよく分からんが凄い説得力だ。ユカが思わず手に取ってしまうのも分かる気がする。
「ユカ、最近肩がこってるんだよねー。ミカちゃんも同じみたいだし、肩がこりやすい家系なのかなー」
「いや、肩こりの理由ってたぶん……」
十中八九、俺の視線を下げたら映る
言ったら怒られそうだから言わないけどね。本人はあまり自覚無いのか?
「でもこういう枕って信用できないよねー! やっぱり興味ないや」
「うん、俺もこれをプレゼントにしてって言われたら困るしな……」
どこの世界に、女子高生の誕生日に安眠枕を贈る男子がいるというのだろうか。
「で、結局見て回っただけか」
「いいじゃん、気晴らしになったしさー」
「あのなぁ、こっちは真剣に考えてるんだぞ。友達にプレゼント贈るとか初めてなんだから」
「ユカ達へのプレゼントなんて、適当でいいよー。値段より、気持ちが大事なんだからさー」
「気持ちかぁ」
そう言われると、俺はどんな気持ちで二人への贈り物を贈るのだろう。
親愛? 敬愛? 友愛? それとも、恋あ――いやそれはないな。
まだ誕生日までしばらくある。もう一度、よく考えてみるか。
「りょう君……。ミカも……友達に贈り物……したことないけど……。ミカにとって……りょう君が誕生日を祝ってくれるのが……一番嬉しい……かな……」
「ミカ……」
「だから……あまり、プレゼントで悩まないで欲しい……です。ミカ……コンビニのお菓子とかで……十分だから……」
「いやそれはそれで悲しすぎるだろ」
流石にそれを贈るくらいなら、まだコンビニでケーキ買った方がマシだろ。
「あぅ……だから……その……あまり悩まないでね……って言いたくて」
「……うん。ありがとな、ミカ。そうだよな……プレゼントの中身に拘るんじゃなくて、誰に渡すかの方が大事だよな」
「そ、そういう……こと……です」
気持ちが大事。うん、ミカの言葉で初心に帰ったような気がする。
まぁ初心つっても、最近なんだけどな。
「じゃあ帰ろっかミカちゃん、リョウ君! あ、リョウ君、誕生日は楽しみにしてるよー。予定、開けておくからね♪」
「待って……ましゅ!」
「はい……?」
今、何と仰いました?
誕生日、開けておく……?
「嘘、だろ……!?」
まさかの、誕生日独占っ!?
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