第12話 双子の姉と打ち上げをした
「テスト終わった~! イエーイ!」
「お……おつかれ……さま」
中間テストも無事終わって俺の気分は最高に晴れていた。
ミカとユカと一緒に勉強会をやった甲斐もあり、中々手応えのある感触だったしな。
まぁ一年の中間テストで躓いてたらやばいけど。
テスト最終日の今日は午前中で学校が終わった。
俺は今、ミカと二人でお疲れ様会をしている。とは言っても、お菓子を買って俺の部屋に集まってるだけなのだが。
どうしてユカはいないんだろう。さっき学校で見かけたはずなんだが。
「ユカちゃん……クラスのみんなと……打ち上げ……。ミカは……クラスの打ち上げには……呼ばれなかった……」
「う……実は俺もなんだよな……」
教室で『これから打ち上げ行く人ー!』とかリア充が盛り上がってたけど、俺は一度も声をかけてもらえなかった。
もっとも、そこで誘われるのを待ってるから友達が少ないんだよ、と言われたら反論出来ないが。
だけど俺が参加しても喋る相手もいないし、変な空気になったら悪いしな。ああ、言ってて悲しくなるな。
「ま、まあ気にするな! 友達が少ない者同士、仲良く打ち上げしよう! ほ、ほらお菓子とかジュースいっぱいあるぞ!」
「わぁ……! ミカ、いつもお菓子禁止されてるから……今日はいっぱい食べる……!」
「お菓子食べちゃいけないって、ミカの両親って結構厳しいのな」
「ううん……ユカちゃんから……スタイルが崩れるからダメって……言われてる……。ミカ、ユカちゃんほどスタイル……よくないのに」
「いやそんなことは無いと思うが……」
少なくとも俺からすれば二人ともスタイルはいいと思うんだけどな。
というかミカもユカとほとんど同じように見えるんだが。
二人とも細い体に似合わず、出るとこ出てるし。口に出したら訴えられそうだから言わないけどさ。
「うん……おいしい……!」
ぱくぱくむしゃむしゃとお菓子を口に運ぶミカ。その姿はまるでハムスターみたいで、見ていて癒やされる。小動物を見ている時に加護欲が湧く感覚に似ている。
「かわいい……」
「……っ!? けほっ」
「ちょ、大丈夫かミカ!」
咳き込むミカの背中をさすってやる。う、細い体……。つーか柔らか……。俺とは別の素材で出来てるんじゃないかと疑ってしまう。同じ人間だからそんなわけないはずなんだが。
「だ、大丈夫……。りょう君……いきなり変なこと……言うから……びっくり」
「変なことって、俺何か言ったか?」
「むぅ……」
ミカは何故か不機嫌そうに頬を膨らませている。益々ハムスターのようだ。
俺、何を口走ったんだろう。自分では意識していなかったけど、ミカを怒らせるようなこと言ってしまったんだろうか。
「そういえばテストどうだった?」
「手応え……あった……よ。ユカちゃんと……りょう君が……勉強……見てくれたから……」
「そっか、とりあえず全員大丈夫そうだな」
俺もたぶん赤点はないだろうし、ユカも大丈夫だろう。これで少なくとも期末テストまでは平穏に過ごせそうだ。
「りょう君には……いっつも……お世話になってばっかり」
「何言ってるんだよ。俺、何にもしてないぞ?」
「ううん……りょう君と知り合ってから……毎日……楽しい」
そういう恥ずかしい台詞は禁止だって! 何でこの姉妹は素面でこういうこと言ってくるかなぁ。
いや俺だって二人には感謝してるさ。でも面と向かって言うのってこう、照れが入るだろ?
それとも普通の人ってこういう言葉を惜しげもなく言えるんだろうか。
しかしミカの言葉をただ受け取るだけでは駄目だ。俺も自分の思ってることを口にしないと。
コミュニケーションは相互の意思疎通で成り立つんだ。こっちにボールを投げられたなら、相手に返球しないとな。
例えそれが恥ずかしい言葉でも我慢しようじゃないか。
「そ、そうか。でもそれを言うなら、俺もミカと出会って毎日充実してるよ」
「そ、それって……どういう……?」
「ミカ見てると面白いし。なんか小動物みたいで」
「あぅ……ミカ……ペット?」
「じ、冗談だからな!?」
「ほっ……よかった……」
ミカと一緒にいて面白いって思ったのは、本心だけどな。
それからも俺たちは互いのテストの感触を話して、お菓子やジュースを飲んで盛り上がった。
まぁ盛り上がったとは言ったものの、陰キャ二人しかいないから部屋の中はごく静かなのだが。
「あの……勉強見てくれたお礼……何かさせて……ください」
「そんな! 俺なんて大して教えてないし、お礼なんていらないよ」
「えっと……ミカがしたいの……ダメ?」
「駄目じゃないけど……あのお礼って具体的に何?」
「それは……ミカの……お……お弁当……」
「ん?」
ミカが何かを言い出そうとした――その時
玄関からインターホンが鳴った。その後、外からユカの声が聞こえてきた。
「お待たせ二人ともー! 遅れてごめんねー、クラス会早めに切り上げてきたよー!」
「ユカちゃん……!」
玄関にいるユカに、ミカは抱きついていった。やれやれ、相変わらず仲のいい双子だ。
この姉妹もすっかり我が家にいるのが珍しくなくなってしまったな。
あれ? そういえばさっき、ミカは何て言おうとしたんだ?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます