おまけ:お姫様抱っこをするその心理(後編)
「日本人の場合、やりすぎな感じするしふつうに恥ずかしいしな」
「男性心理3. 独占欲が強く、周りに見せびらかしたい」
「確かにゲームの仕様上、そういうのはありかもしれない」
「アスタロトさん、見せびらかしたら争奪されやすくなるんじゃないですか」
「そういうところが甘いのがダンタリオンだ」
「ねーよ。独占欲っていうか、独占するゲームだっただろ」
忍の考察は続く。
「男性心理4. ”お姫様抱っこをする自分 = カッコいい” と思っている」
「それだ!!」
「躊躇なく同意してんな! お前は誰もお姫様抱っこもしたことないくせに!」
「……日常生活で、そんなことするシーンがそもそもないんだよ。あと、腕力的にたぶん無理」
言っておいてなんだけど、オレ、けっこう現実的だ。女性の体重は50㎏くらいと聞いたことがあるし、それ抱えろってけっこう腕力いると思うんだよ。
「……」
「ツカサもツカサで、何黙ってんだ!」
同意しか感じられない沈黙だ。アスタロトさんが、端末をのぞき込んで先を読んだ。
「『自分のことをかっこいいと思っている、ナルシストな男性もお姫様抱っこをしがち』か」
お姫様抱っこ余裕のかっこいい自分。大抵の女性が喜んでしまうそれを余裕でやってしまう自分。
そんな自分がかっこよくて、大好き。
「これ以上先は見なくてもいいかな」
「なんでシノブまで納得してるんだ……?」
「いや、次も割と的を射ていると思うよ」
そして再び読み上げるアスタロトさん。
「心理5. 自分のパワーを見せつけてアピールしたい」
「絶対ある」
「それ4とけっこう共通してませんか。というか、司くんもアスタロトさんもそれくらい余裕でできるだろうし」
「だからそこは、性格差なんだろ?」
「お前らな……」
司さんが何もない時にそれをする……全然想像できない。ここまで全てに当てはまっていないからだろう。アスタロトさんの場合……ふつうに昏倒して丁寧に運ぶときとかはしてくれそうだが、やっぱりどれとも違う気がする。
しかし、ダンタリオンだけしっかり納得できる理由がみつかってしまうわけで。
「『顕示欲や相手によく思われたいという心理もここには働いている傾向にある』……確かに君は女性におだてられたら調子に乗ってやりそうだよね」
「相手くらい選ぶわ。まぁせがまれれば断る理由はない」
異世界人がここにいる。
「男性心理6. 彼女の体重を確認するためや『太らないでね』のサイン」
「わたし的にはこれでやられるのが一番怖い」
「体重確認か? ……そんなことわざわざする彼氏いるの……?」
全然想像できないが、しいて言えば司さんがやるときはこれ、みたいなイメージが勝手に湧いたので、とりあえず振り払っておく。それはそれで相手に失礼だろう。世の中知らない方がいいこともあるし。
忍はさすがに体重測定はご遠慮したい様子。
「男性心理7. お姫様抱っこをやってみたいという、単純な好奇心」
「オレ、それかも」
あるとすればの話。
「単純な好奇心で持ち上げられんのか?」
「だからそこまでやりたいって言ってるわけじゃないの。お前のお姫様抱っこは自己主張の塊だってことはよくわかったよ!」
「お姫様抱っこは非常に負担の大きいもの、やり方を間違えると怪我につながる危険性もあるから気をつけてください、だって」
……。
「そんな危険度の高いものがなぜ、気軽にマンガや小説の中ではバンバン出ているのか……」
「女子にだってしてもらいたい願望があるからだろ? 例外は置いといたとして」
「今度二次元でそういうシーンを見かけたら、そのキャラはなぜわざわざそれをするのかを考えてみることにする」
忍が新たな娯楽本に対する視野を広げてしまった。
あのな、戦闘シーンの時に横から助けに入るときは
単にかっこいい演出
だからだと思うぞ? そういう世界の人は、両手がふさがるとか実はすごく重い持ち方だとか、関係ないんだ。いや、バトルの最中両手がふさがるのは致命的だけども。
「うん、性格差であることはよくわかった。というかわかってた」
「じゃあなんで調べたよ……」
「情報をシェアしようとか、確認の意味もあり」
この女をお姫様抱っこで喜ばせる男はまずいないであろう。結局、ゲームの中で一番忍を楽しませていたのはアスタロトさんのような気がした。何にせよ、気のせいで済ます程度の話には、違いなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます