おまけ:お姫様抱っこをするその心理(前編)
※定番の雑学コーナーです。それぞれの抱え方には性格が出ているなと思って調べてみた結果。……なんとなく予想は出来ていた。
よくわからない魔界の貴族たちの遊戯は終わった。
魔界ではこんなことは起こらない気がしてならないので、珍しい光景だったのだろうとは思う。
邸内全域で繰り広げられる人間争奪戦。全員にとって軽い運動みたいなものだから、戻って来て何事もなかったかのようにお茶をしている。
「秋葉、結局お前は何もしなかった」
「うん、あの後全員まとまってたしな。でも見てるのも面白かったよ」
いかな理由があったところでオレは絶対に参加はしないだろう。見ているくらいでちょうどいい。
「忍は面白かったか?」
「面白かった。空中戦のリアルシアターみたいで」
シアターじゃないよ、リアルだよ。
「まぁ楽しかったならいいけどさ……オレ見てて気づいたんだけど、それぞれ人間の抱え方にも差があるんですね」
と敬語になったその相手はアスタロトさんだ。司さんの「小荷物扱い」は既に知っていたので。争奪ターゲットの忍の扱いは、場合にもよるのだろうが三者三様だった。
「特に差を付けているわけではないけれど……一番移動しやすいのと、忍が飽きると不測の事態が起きそうだからあんな感じで」
出されたティーカップを手に取って答える。やっぱり忍が飽きないようにという配慮はあったらしい。
「飽きたら飛び降りたもんな……」
「『落ちた』の間違いだろう。せっかく丁寧に扱ってやったのに、なんてことをするんだシノブは」
奪取してから屋根の上に待機していた時の話だろう。
あの時はしゃがんだ膝のに乗せられる形でしばらく過ごしていたっぽい。やはりお姫様抱っこからの崩れ姿勢だろうか。
……女子っぽい扱いされてるのに、全然それらしく見えなかった件について。
「下に司くんいたし、拾ってくれるかなって」
「猫の子じゃないんだから……」
「猫の子は屋根から落ちてこないぞ、秋葉」
司さんは少し、おつかれの模様。水分を改めて補給している。
もっとも魔界の公爵二人相手にして体力というより精神的な疲れの方が、どっと出ていることだろう。
「ダンタリオンは屋根の上でお姫様抱っこしてたけど、あの場合は両手使えないだろ? お前、あれがデフォルトなの?」
「仮にも貴族が、女性という存在を片腕にぶら下げたり肩に乗せたりとかどうなんだよ」
「趣旨は女子を女子らしく扱うゲームではない。実際、公爵はあんな抱え方するから、司くんの攻撃避けるだけで私もすることなかった」
ずっと、することはなかったはずだが。それだけ暇だったということか。
「自分を不利にしてまであんな抱え方をする必要があるんだろうか」
「それな、前も少し話したよな」
お姫さま抱っこは、重い、両手がふさがる、演出以外ではあまり実用的ではない。そんな結論だった気がする。
「抱え方が三者三様だったから、やっぱり性格だろ?」
「司くんはわかる。アスタロトさんもわかる。でも公爵のはわからない」
「お前それ、自分がお姫様抱っこ理由が分からないって言ってるようなものだけど、どういう疑問を抱いているんだ」
男が女の人をそんな苦行を越えてまで、お姫様抱っこをする理由……人間だったらやっぱり、相手が好きだからとかいちゃいちゃしたいとか、男らしく見せたいとかそんな感じだろうか。
滅多にお目にかかる機会はないが、はっきりいって一般人には、体重制限がかかりそうだ。
「男性心理1. 彼女のことが大好きで、守ってあげたい」
いつのまにか忍が端末を広げている。
「ないな。これはない」
「自分でそこまで即答しなくても誰かのツッコミ待ちしたら?」
「大好きというのは異性愛としてだろう。そこは悪魔だから置いといたとしても、守ってあげたいというより守る力は絶大だぞ」
お前は一体、あのケースで何を守りたかったんだ。
「と、いうことは司くんは守ってあげたいという気持ちが私に対して皆無だということ?」
「……そこで本人を見ながら首を傾げないでくれるか? 結果論で言えば守るつもりで抱えて移動するんだから」
「そういえばそうか」
いや、そこ納得するところなの? あっさりと忍は退いた。こいつには嫉妬とか不貞腐れるとかいう感情がないのだろうか。
「男性心理2. 彼女を喜ばせるためのサプライズとしてやっている」
「喜ぶ相手なら、人間の男がするのは普通にありだろ」
「知ってますか公爵。公衆の面前でいちゃラブしたがるカップルほど破局が早いらしいですよ」
「熱しやすく冷めやすい、みたいな感じなのかな」
初期にそんなサプライズをする関係は割と破局が早いのではという暗なる推測が全員に共有された。男女問わずロマンという妄想を見ている内に有効な手立てではある。
「ギャルゲーでも乙女ゲーでも、ターゲットが喜ばないことをしても意味がない。私が登場人物なら、よほど仲良くならないと間違いなく好感度が下がるフラグだ」
「忍は自己分析をよくしているよね」
「待て。その言い方、オレに対する好感度が下がったとでもいうのか!?」
下がってはいないだろう。だが、好感度メーターはプラスにもマイナスにもきっと振れてはいなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます