6.そんな日常に結局落ち着く

議題6:終わらないテコ入れ


「終わってないんだ、まだ何も。忍の転移召喚で制約はずれるオレの活躍が……!」

「だからもう次行こうな。主人公とかそういうの、あとでスピンオフでやってもらえよ」

「とりあえず、キミカズの話と司くんの武装警察24時はやりたいらしいよ」

「全力でやめるように言ってくれ」


テコ入れはともかく、スピンオフやら完全ギャグ編やら、季節話はたくさんあるという、割れ具合。異世界転移も気になるから、日帰りクエストなんて案もある。


世界は膨張し続けている。


「あとは、割と最近気づいたんだけど、配色の問題があり……」

「配色?」


新たなる問題が発生しているようだ。


「護所局の制服カラーって青系+白でしょう?」

「それ、制服だからしょうがないよな?」

「そう、そして天使のカラーは大体白だ」


……かぶっている。


「だから何?」

「イラストにすると戦闘シーンが映えないらしく」

「これ小説だから! そういう問題はスピンオフより問題外だから!」


膨張した世界観の更に外の世界の話である。

ビッグバンが起きてしまう。


「なので、魔界編とか、全世界まで巻き込んだ話も生まれてきているようだよ」

「……鎖国が解除されんの? ってか、魔界とか誰が行くの?」

「戦闘組かな。配色の問題だから」


……それは小説には全く関係ございません。


「やめてくれるか? 出張経費が半端ないことになるぞ」

「司は派遣される側だから、経費は和さんが落とすのでは」

「そんなことしたらまた司の方が主人公っぽいとか思われるだろうが! オレは魔界行ってまで面倒見ないからな」

「面倒見てもらった覚えはありません」


人には役割や相性というものがあり。

多くは追及しないが、司は主人公には向いていないようだ。


「魔界編……ドラゴンとか見られます?」

「ふつうに闊歩してんだろ! サファリパークを自転車で散歩するより危険だから!」

「いや、サファリパーク自転車も危険だよね、猛獣エリアでたぶん死ぬよね」


忍もサポートに徹した方がよいらしい。


「こういう人間関係とか見てるとさ。やっぱり秋葉くんが主人公かな、って思う」

「森さん……」

「消去法で」


………………………………配色の問題は?


「巻き戻ってる、3マス進んでスタート地点へ戻れのマスに止まった……!」

「あー、人生ゲームか?」

「人生ゲームって振り出しに戻るとかないんじゃないですか。異様に子供たくさん増える人とかいるみたいですけど」

「一マスも戻れない……まさに人生ゲームだね」

「やったことないけど、このメンバーで桃鉄やったらすごく面白そう」


例よって、話が散らかり始める。


「魔界編は? 鎖国解除は?」

「んなことより、当面の問題だよ。今がすべてだ!!!」

「じゃあ初めから問題でもないことを問題発言すんな!」


人間(ひと)は、問題でもないことを問題にしてしまう、ややこしい生き物である。


「思いつきだから。やるとは全く言ってないし、思いついただけだから。魔王倒したら後ろに大魔王いました、犯人逮捕したらほかに黒幕いました。みたいな展開になるのはお約束だよね」

「思いついただけなのか、やる気満々なのか、どっちだ」


どっちもである。


「結末は神のみぞ知る、か。はたまた、悪魔が知るべきことかな」


その様子を見ながら、アスタロト。

彼は強力な時間見の能力の持ち主であるが、だからこそ、この国では未来(あす)は見えない。


それが面白くもあり、だからこそ時々、傍観だけでは物足りなくなることもあり。


「とりあえず、せっかく集まったんだから何かゲームでもしようか」

「公爵、人生ゲーム」

「ねぇよ」

「ボクはすごろくやってみたいかな。この国の文化的なゲームだろ?」

「オレもやったことないけど、すごろくなら他人を蹴落とす要素はないからよさそうだな」


秋葉は知らない。

分岐点に「在宅コース」「施設コース」なんてものが存在する、超リアルな認知症456なるすごろくすら高齢化社会には存在する。


その内終活すごろくなんて出た日には「遺産分割を誰にする?」でその後のコース、ひいてはエンディングまで分かれそうなものである。


「いたストしよう、最大4人までだけど端末に入ってる」

「お前、何公共物にゲーム仕込んでんの? って、テレビにつなぐな」


いたスト。それはその名の通り立ち並ぶ店などのストリートをいただくという、結局運と頭脳戦の買収ゲームである。

間違ってもいたみいりますストライク等の略ではない。


「司くんはやる気ないだろうから誰かと組んだらいいよ。公爵単独でしょ? 森ちゃん、私と組む?」

「お前、俺を一体誰と組ませようとしてるんだ? そこで組まれると消去法になるんだけど」

「ボクと秋葉が残り? なんならボクが誰かと組んでもいいよ」

「じゃあアスタロトさん、私と組んで。……森ちゃん以外のメンバーを完膚なきまでに叩き潰すのを目標に」


待て。


「ゲームでそういうことして面白い!? 叩き潰すってどういうこと!?」

「ゲームだからこそ使える言葉だよね。ただのゲームだし」

「じゃ、私左回りのコースで行く。忍ちゃん右から行ったら?」

「森さんまでサポートはいらないで!」


そんなわけで。



……今日も、人と神魔は、仲良しです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る