2.ある少年の夏日記(1)

8月16日 雨

 犬をひろった。大きな犬だった。

 家につれてかえったら、お母さんは元いた場所に捨ててきなさいと言った。

 けど、雨の中でたおれていたから、そんなことできなかった。


 なんだかげんきがないから、げんきになるまでってお願いして、家におくことになった。

 でも、うちにはおとうさんもいないし、げんきになってもずっといてくれたらいいな。


8月17日 はれ

 きのうの雨がうそみたいに晴れた。

 暑かったけど、犬のために、小屋とかえさいれを用意した。

 

 犬はまえに飼っていたことがあるから、さんぽのひももあるし、よかった。

 わんちゃんは、かわいたところから来て、雨とかしっけ?がひどすぎて倒れたんだって。

 目をさまして、ごはんをたべると、すこし元気になった。


8月18日 はれ

 きょうもあつい。

 なつやすみなのに、あつすぎて外に出たくない。

 でも、わんちゃんをさんぽしなくちゃいけないからがんばってでることにした。

 お母さんは、犬って呼ぶのもおかしいからぽちという名前を付けたみたいだ。


 なんで犬はぽちなんだろう。


8月20日 はれ

 ぽちは げんきになってきた。

 でもぼくは、また、犬をひろってしまった。

 

 なんか頭がみっつある。

 まちの中でもさいきん、あたまがおおい人とかいるし、これが普通なのかな。


 その犬はおなかをすかせてたみたいだった。

 ぐーぐーお腹がなっていたので、つれて帰ってごはんをあげた。


8月21日 くもり

 犬小屋に、犬がふえていたことにお母さんが気づいてしまった。

 ぽちは元気になってきたからもう、もとの場所に戻してきなさいって言われて、みっつのあたまのわんちゃんのことも怒ったので、けんかになった。


 でも、ぽちは もう うちの犬だよ。

 だって、ちゃんということも聞くし、おつかいもしてくれるんだ。

 すごく、おりこうなんだよ。


8月22日 くもり

 くもりでもあつい。

 おととい ひろった犬はみっつあたまがあるから、みつまめってつけた。


 お母さんとは口をきいていないけれど、勝手にしなさい、っていうからぽちもみつまめも同じ場所につないである。


 二ひきは 犬小屋のまえでなかよくしてる。よかった。

 


8月23日 大雨

 台風みたいなのが一日中ふっていた。

 そういえば犬小屋は、ふるいから屋根に あなが開いていたんだ。

 風もすごくて、ぽちとみつまめのことが気になってぼくは外に出た。


 ぽちもみつまめもいなくなっていた。

 お母さんがすてちゃったの!?


 ぼくはお母さんに聞いたけど、知らない、としか言ってくれなかった。

 すぐに家を飛び出してぼくは二匹を探した。



8月24日 はれ

 外はやっぱりあつい。

 なんだかぼくもあっつい。


 あたまが痛くて、熱が出て、苦しい。

 ぽちとみつまめはみつからなかった。

 いっしょうけんめいさがしたけど、みつからなかった。

 

 雨はやんだはずなのに、ぼくの目から雨がふっていた。



8月25日 はれ

 きのうより、あつくない。

 お母さんは仕事で、ぼくは布団でねっぱなしだった。


 気がつくと、ぽちがぼくのあたまにのったタオルを代えてくれていた。


 あれ? ぽち?


 きくと、おかあさんが裏のものおきに ひなんさせてくれてたんだって。

 なんで、おかあさんは知らないなんて言ったんだろう。


 おかあさん、ありがとう。

 勝手に決めつけて、怒ってとびだして、こんなふうになってごめんなさい。


8月26日 くもり

 ぼくはやっとまたそとで遊べるくらい元気になった。

 ぽちとみつまめと遊びたかったけれど、なつやすみが終わる。


 どうしよう!

 宿題もポスターも全然やってないよ!!


 時間がかかるのを、あとまわしにするのはよくないってぽちがいう。

 みつまめが一番時間のかかるポスターを描いてくれた。


 ぽちもほかの宿題を手伝ってくれた。



9月1日 はれ

 少しすずしくなってきたかな。

 なつやすみが終わった。


 宿題をせんせいに出すと、なぜかおおさわぎになった。


 びじゅつコンクールのしゅってんがどうとか。


 二学期から図工のせんせいの てつだいにくるって言っていた えをかく人が、そういってぼくのポスターを手に、おどったりはねたりしていた。


 ……おどるほど楽しい絵だったかな。

 ぼくには何がかかれているのかよくわからなかったけど。



9月2日 くもり

 朝から外がうるさかった。

 まだ起きたばかりでねむいけど、犬小屋の方でさわいでいたからぼくはがんばって そとにでた。


 たくさんのおとなのひとがぽちとみつまめを取り囲んでいた。

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