そして、再び日常2
1.一木主催の懇親会(1)
気候の変動が激しい今日この頃。
なんとなく季節の変わり目で疲れていた。
そんなオレを見かねてか、一木が息抜きがてら気を使わないメンバーで飲みにでも行こうと盛り立てている。
そのテンションの格差に余計疲れそうになるが、せっかくだから……
と、疲れていたオレは……
判断を見誤った。
* * *
その日は話も右から左に抜ける感じだったので、すべて一木に任せた。
なるべく落ち着ける店をチョイスするといっていたし、声をかけるメンバーももう脳内で決まっていたようなので、幹事は一木ということになる。
指定された時間に、指定された居酒屋に行く。
居酒屋と言ってもピンキリだ。
その店は、大衆向けではあるがきちんと個室もあって、和室の上がり口にはすでに何人かの靴が並んでいた。
顔を出す、と。
すでに席はほとんど埋まっていた。
「……なんだよ、この面子は……」
帰っていいかな。
疲れていたとはいえ、すべて任せたのが間違いだった。
あぁ、もうどうにでも。
という気分であったことは否定できない。
が。
帰っていいかな(大事なことなので、二回目)。
「何って先輩にとって気の置けないメンバーでしょ? オレも仲間に入れてもらえてうれしいです!」
「お招きいただき、光栄ですわ」
……待て。
確かにオレにとっては定番だ。
が、
いつお前を仲間に入れると言った。
集まっていたのは、幹事である一木、ダンタリオン、忍、なぜか森さん、そして究極に関係性の不明なシスターバードックだった。
「外交官からのせっかくのお声かけじゃしょうがないよな。今日は付き合ってやるよ」
「一木ぃ! お前、自分がお知り合いになりたいメンバーで固めただけだろぉぉぉ!!! しかもオレの名前使いやがったな!」
「だって、先輩にとって気の置けないヒトたちって、オレと直接面識ないし……!」
その通りだ。
世の中には、お前と繋がってはいけない人もいる。
しかし、この面子がホントに気の置けない人たちだと思ってんのか。
シスターとかは、確かに懇親的な意味でいてもいいかもしれないけど、どういう伝手で誘ったよ。
「というかなんで森さんまで……? 忍もこういうの、あんまり得意じゃなかったよな?」
「うーん。でも公爵とかとこういうところで会うことないし」
「私も、話には聞いてたけど面識なかった人いるから参加させてもらったよ」
で、司さんがいないのはなぜだ。
「司さんの妹さんだったんですね。もう顔は合わせてたなんて、すごい偶然ですよね!」
あれは、歌舞伎町でのことだ。
一木は、不知火と、そして一緒にいた森さんに興味を示していたことを思い出す。
こいつ、ひょっとして森さん狙ってないか?
まさかと思うけど……そんな可能性に思い至ってしまう。
わざわざ部外者である森さんを呼ぶ理由が、オレとの共通項目としてもまず見当たらない。
この懇親会としての意味不明の面子……
司さんに見つかったら殺される……!
「秋葉さん、さぁ、いつまでもそんなところにいらっしゃらないで」
シスターバードックが親切に声をかけてくれた。
「わたくし、こういう場ははじめてですので、楽しみにしてまいりましたの」
「そうだな、席以外は今のところ悪くないな」
「わたくし、こういう場ははじめてですので、特定の一部を除いて楽しみにしていましたの」
にこにこにこ。
ダンタリオンの正面の席で、シスターは笑顔で、一部修正して言い直している。
ダンタリオンの表情が一瞬、ひきつったのをオレは見た。
「なんか、良心的な制御役がいないから司くん呼ぼう」
やめて!
いないことが疑問ではあるけれど、この状態でそれは……!
いや、まだ懇親会とやらがスタートしてないこの状態なら、それはありか。
……ありなのか?
座敷に上がって腰を下ろしつつ、判断に窮する。
なぜかオレは、正座になっていた。
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