2.問と解
ーーー7月18日水曜日 夏休みまで後2日ーーー
朝6時30分起床。
枕元で充電してあったスマホを手に取って時間を確認。ゆっくりとベットから起き上がる。今朝は、いつもより早く起きて、夏休みの課題を進めようと思っていた。
「・・・・・・」
どこからとなく感じる視線。ふと、横を向くとぼんやりと人影が見えた。
(まさか、そんなわけないだろ、、、w)
いつもより早く起きて、寝ぼけてるんだと思い、何回か目を擦る。ゆっくりと、朝の陽光に目が慣れていき、段々と視界がクリアになっていくと共に、ぼんやりと見えていた人影がハッキリしたものになっていく。五秒間程お互いを見つめ合う二人。
「・・・・・・は?」
沢山考えた、とても沢山考えた。
今のこの不可解な状況を理解しようとする為に、朝から頭はフル回転だ。それでも、理解出来ずにやっと出た言葉が、沈黙からの『は?』である。もはや、言葉とも言えない。
(いやいやいや!ちょっとまてぃ!え?何で?どういう事ですかぁ?何がどうなれば、朝起きて、目の前に女の子がい居る状況になるんですかぁ!?まじで、意味が解らない。しかも、顔も知らない全くの他人なんですけど!俺、幼馴染みの美少女とかいねぇし!いたら、こんな寂しい高校生活送ってねぇし!)
こんな風に、約一分程の間思案する。その間、目の前にいる少女は何も喋らない。
だから、今一度冷静になり自問自答を始める。
問1、昨日、家に帰ってからずっと一人でいたはずなのに何故、家の中に少女が居るのか?
解、玄関の鍵は、帰ってから閉めていたから、誰かが勝手に入って来ることは不可能なはず。それに、このアパートの部屋の合鍵は俺以外の誰も持ってないから玄関の鍵を開けて入る事は出来ない。その為、何故部屋に少女が居るのかについては、解らない。
問2、仮に、もし仮に、何かの手違いや自分が何か大事な事を忘れてたとして、この少女は誰なのか?
解、自分の通っている高校の同じクラスの女子の顔を思い出してみるが心当たりがない。それに、さっき言った様に、高校は違えど幼馴染みという線もあるがそれもない。ましてや、身内や親戚でも見覚えのない女の子である。
「あぁ、結局何も解らない」
頭の中で現在進行形で起こっている、この不可思議な状況を問と解に分けて考察するが、この状況を打開する答えは出なかった。
『何がわからないの?』
!?
目が合ってから、今に至るまで沈黙を続けていた少女がようやく声を出した。驚くほど透き通る『綺麗』な声に驚き、今度は木葉が固まってしまう。
「・・・何だよ、喋れるんじゃないか」
「まあ、私は他と違って特別みたいだから」
「取り敢えず、君は誰なんだ?名前は?俺の記憶の中に、こんな可愛い女の子の友達はいないもんでね」
何も話そうとしなかった子が、ようやく話始めてくれたので、取り敢えず、名前を聞きいてみる。
「かわっ・・・私は、佳乃。
目の前の少女は、桜ノ宮 佳乃と名乗った。木葉の不意の『可愛い』の言葉に少し動揺し頬を赤らめている姿がどこかあどけなさがあって可愛かった。
「お、おう。宜しく。、、、えっと、、」
「佳乃でいいよ!まあ、君が呼びやすい呼び方で良いんだけどね」
木葉が呼び方で迷っていると、桜ノ宮 佳乃と名乗る少女は、そう言って下の名前で呼んでも良いと言ってくれた。
「そうか、なら、、、佳乃宜しくな!それと、俺は、朱月 木葉だ。そっちも、木葉で構わない」
「うん!よろしくね、木葉」
・・・・・・・・
「って、そうじゃねぇぇぇーーー!!!」
朝早くから木葉のツコッミが盛大に炸裂する。
まぁ、そりゃツッコミたくもなるものだ。
「『宜しくな!』じゃねぇよ!俺!なに普通に仲良くなろうとしてんだよ!」
木葉の乗りツッコミに小首を傾げる佳乃。
「一人で何騒いでるの?」
「うるせぇよ!」
「なによ!
正論を叩き付けられる木葉に、少しのダメージ。
「そうだけど!そうじゃなくて!」
「じゃあ、一体何が違うっていうのよ!」
「今、普通にお互い当たり前の様に自己紹介したけど!、、、」
「そりゃ、初対面なんだから当たり前じゃない!」
「俺の話を遮るなあぁーー!!!まず、何で俺の部屋の中に居るんだよ!そこに居るのが当たり前の様に普通に現れやがって!このアパートの部屋の鍵は俺しか持ってないんだよ!」
「そんなの、窓をすり抜けて入ったからに決まってるでしょ!私には、鍵なんて必要ないの!これでいい!?」
「ああ!そうかよ!じゃあ、、、、」
言葉を続けようとした木葉の口が止まる。
それも、そのはず今現在しれっと会話の勢いに流されそうになったが、聞き捨てならない返答が来たからだ。
んんんんんんん?
(え・・・?今、何て?)
「おい、今何て言った?」
聞き間違いの可能性があると思い、とりあえず、冷静になって聞き返してみる。
「だから!窓をすり抜けて入ってきたんだから、鍵なんて必要無いって言ったの!」
今一度聞き直して、木葉の聞き間違えではなかった事を再認識する。そして、それと同時に唐突に返ってくる解らなかった問1の答え。
頭の中がパニック障害を引き起こす。
(これはきっと夢だ。うん。俺はまだ本当は眠っていたんだ。多分きっとあれだ、俺夏休みの課題頑張り過ぎてちょっと疲れちゃったのかな、あははは。これは、夢の中で寝てしまえば現実で目が覚める的なそんな感じの夢だ。だから、もう寝よう。うん、そうしよう)
そうやって、勝手に頭の中で自己完結させてもう一度ベットに潜り込む。
「おやすみなさい」
「あなた見た感じ学生っぽいけど、今から二度寝なんかして学校の登校時間に間に合うの?」
またもや、正論と現実を叩き付けられてダメージを受ける木葉。
流石に、学校をさぼるわけにはいかないので、取り敢えず色んなものを押し殺して起き上がり、まずは朝の支度を始める。佳乃の方に視線を向けると、自分の家かの様に椅子に座って楽にしている。
・・・・・・
「なによ?」
「ちょっと、向こう向いててもらってもいいですか?着替えるんで」
「別に、私は構わないわよ」
「俺が、かまうんだよ!気になるから少しでいいからあっち向いてろ!」
「分かったわよ。これで、いいでしょ?」
溜息交じりに仕方なく木葉とは、反対方向を向いてくれる。
「ああ。ありがとさん。もう、いいぞ」
「そう、なら遠慮なく」
制服に着替え終えいつでも登校できる支度を済ませ、部屋の時計に目を向ける。まだ、時間に余裕が有る事を確認する。
「取り敢えず、俺の頭の中を整理させたいから、お互い冷静になって話をしよう」
まるで、夫婦喧嘩をして離婚寸前まで陥って、夫の方から弁解を求めているように聞こえる。
「先に冷静さを欠いたのは、木葉の方じゃない」
「ああ。そうだな。それに関しては、俺が悪かった。あまりにも、非現実的過ぎてな、あははは」
「まあ、私もちょっとむきになって叫んじゃったし、、、そこは悪かったわよ」
お互いに先程の非を詫びて、落ち着きを取り戻す。
「俺からの質問攻めみたいになるかもだけど構わないか?」
「ええ、構わないわよ」
「ありがとう。それじゃーーーーーー」
私の記憶をあなたに授けます 夜桜 璃汰 @Rita_yozakura
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