第52話 2度目のランクアップ
《迷宮核強化》
俺は今回手に入れた魔力をすべてダンジョンコアの強化に費やす。
【深緑のダンジョン】
管理者:カイン
ランク:C
魔力:4,842/100,000
スキル:ダンジョン創造Ⅲ、魔族創造Ⅲ、魔族強化、交信Ⅰ、遠隔創造(NEW)、転移Ⅰ(NEW)、魔力調整、天変地異(NEW)
「ぃよぉーーーーし!!」
「やったの!?どれどれ!」
「(ランクアップしたか!よかったのぅ)」
念願のCランクだ!
EランクからDランクになった期間を考えると本当に長かった!
「ちょっと……最後のこれ、なによ?」
ダンジョンコアを覗き込み、一緒に喜んでいたはずのティナが、怪訝そうな声を上げる。
「ん?どれどれ?……天変地異?」
おいおいおいおい……。
「(ふぉっふぉっふぉっ、随分と強力な防衛手段じゃな)」
いや、気軽に言ってくれるな、ミズク。
俺達は魔力溜まりにより天変地異が発生するのを防ぐためにこうしてダンジョンを創ったんだ。
それを自ら引き起こしてどうする!?
だいたい、周囲の人間達にも影響はあるだろうが、なにより中心地にいる俺達の方が危ない。
盛大な自爆装置でしかない。
「もしかして、ダンジョンは無事で、外にだけ天変地異を起こす、とか?」
自信なさげにティナが言う。
そんなことあるだろうか?ダンジョンコアを確認する限りでは、スキルの説明は『天変地異を引き起こす』としか分からない。詳細を確認してみたいが、さすがに実験してみるわけにはいかない。
地脈から引き出す魔力量を減らせる《魔力調整》と同じくお蔵入り決定だな。
「(だが、まぁ本当に人間どもにダンジョンコアを渡すくらいなら、天変地異を起こすのもなしではないのかもしれんのぅ)」
……それはそうかもしれない。俺達がみなやられ、ダンジョンコアがなくなってしまったら、またこの地には魔力溜まりが発生してしまうかもしれない。
そうなるくらいなら、天変地異を起こしてやれば、俺達も人間達もこの地から離れざるを得ないだろう。一時的にはひどい状態になっても、魔力溜まりの状態が続くよりはいいのかもしれない。
……いやまさか。
「まさか、これまで起きた天変地異ってこのスキルのせいじゃないだろうな……」
魔力溜まりのある地を放っておくと天変地異が起きると聞いていたが、もしかしたら天変地異は自然発生的なものではなく、ダンジョンコアのスキルによって引き起こされるものなのかもしれない。
そのことに思い当たると背筋が冷たくなり、なにか考えてはいけない事を考えているような気がしてきた。
いや、俺は確かに魔族の村の長から聞いた。ダンジョンを創らず、魔力溜まりを放置し続けると天変地異になる、と。スキルによっても意図的に起こせることは確かなのだろうが、そもそもは自然発生するもののはずだ。
しかし、なぜダンジョンコアのスキルにこんなものが……人間に対抗する手段ならもっといい方法があるんじゃないか……
「ねぇカイン兄ってば!」
ティナの声に俺はハッとする。
「ねぇ、聞いてる?使えそうにないスキルなんてどうでもいいからさ。他のスキルを試してみようよ」
《天変地異》の事はもうどうでも良いとばかりに話を振ってくる。
それが本心なのか、故意にそう努めてなのか……
「ふっ、そうだな。もっと面白そうなスキルがあるもんな」
ティナもニコッと笑う。
「そうよ!《魔族創造Ⅲ》と《迷宮創造Ⅲ》のスキルは分かるけど、《遠隔創造》はどうなの?」
「まぁこれもなんとなく想像はつくけどな」
これまで魔族を創ると、創った魔族はダンジョンコアのそば、つまり目の前にしか出てこなかった。これが離れたところに出現させることができる、ということだろう。
「ついでだ。《魔族創造Ⅲ》のテストを兼ねて、Cランクの魔族を創るか」
「何にするの?」
「まずは……魔法が得意なやつが必要だと思っている」
人間側も魔道具を使って魔法を使ってくる以上、こちらも魔法を使えるやつがそろそろいるだろう。……ランニングコストが痛いから、避けたかったのだが。
「《遠隔創造》《魔族創造》カーバンクル」
俺は《遠隔創造》を使いながら、カーバンクルを創り出す。
「……なんにも起きないわね」
「そりゃ遠隔地に創造したからな」
一応、遠隔といっても、この洞穴の近くにある池のあたりをイメージしたんだが……。
俺は魔力を探ると遠くの方からこっちの方にやってくる馴染みのない魔力を感じる。
あっちからやってきたかな?
「キューイ」
森の中から、カーバンクルがやってくる。
どうやら、《遠隔創造》は離れた場所に魔族を創造するスキルで間違いないらしい。人間との戦いのど真ん中にいきなり魔族を創り出すようなことができるわけだ。
カーバンクルは緑色のふわふわとした毛並みのリスのような魔族だ。だが、額にひし形の赤い宝石があることから、普通の動物とは明らかに違うことが分かる。魔力を探ってみても、明らかに他の魔族より魔力の保有量が多い。
カーバンクルを見て、ティナが両手を広げて飛び出していく。
「きゃーーーーかわぃ……」
「(おんどりゃ、なんてとこに創造してくれてんねん!いきなりぼっちでえろー寂しかったやないかい!)」
「い?」
ティナが固まる。
抱きしめようとしたのだろう、両手を広げて、引きつった笑顔で、ピタリと動かなくなる。
「いまの声って……」
「悪かったな。ちょっとテストをしててな。俺がこの深緑の森のダンジョンの管理者、カインだ。よろしくな」
「(まぁかまへんけどな。あんさん、なかなか見どころありそうやんか。ワイはルビーや。よろしゅーな」
「ちょっと待って!!なんでよ!なんで、その可愛らしさでその喋り方なのよ!」
「「ん?」」
「《交信》がちゃんと働いてないんじゃないの!?翻訳間違ってない!?明らかにおかしいでしょ!」
「(なんや、さっきからうっさいのー。ワイがどう喋ろうと勝手やろ)」
「そうだな。何も問題ない。さっそくだが、ルビー、おまえのステータス見せてもらうぞ」
「(ええで~)」
「やめて~~~~」
【ルビー】
種族:カーバンクル
所属:深緑のダンジョン
ランク:C
レベル:1
スキル:魔力節用
ほほぅ。魔法主体の魔族なのでランニングコストが気になっていたが、なにやら良さげなスキルを持っているじゃないか。
「ワイのスキル《魔力節用》は魔法を使う時に消費する魔力を抑えることができるんや。魔法が得意なワイにぴったりやろ」
「いいな。ルビーには魔法を期待してたからな。どんな魔法を使えるんだ?」
「(わりかしなんでもいけまっせ。でも得意なんは風系やな)」
そう言うと、ルビーは森の方に向き直る。
「《ウインドカッター》」
ルビーから発せられた風の刃が木の幹に命中し、スパッと横一文字に切れる。
キレイな切り口を残し、その木はずずんという音をたてて、倒れる。
「(な?)」
「(……魔法ってのはやはり違うのぅ。ワシより随分ちびっこいのにとても勝てそうにないわい)」
「(へへん。そうやろ、すごいやろ?小さいからってナメたらあかんで!)」
ミズクが素直に感心する。
だが……、
「今のは許すが、好き勝手に魔法を使ってくれるなよ?いくらスキルがあるといっても魔力は無限にあるわけじゃないんだからな?」
「(分かってますって、旦那~)」
なんだか、軽いな。大丈夫か?
だが、頼もしいのは確かだ。やはりCランクともなるとレベル1でも十分に戦力としてカウントできる。あとはCランクのランニングコストがどんなもんかだな。実はこれが結構気になっている。
というのも、ルビーを創造するのになんと1000もの魔力を消費したのだ。Dランクのミズクやヘッジの創造時は100だったから、なんと10倍だ。もし、ランニングコストも10倍だとすると、1日あたり1体で100も消費することになる。
地脈から引き上げられる魔力も増えているはずではあるが…ちょっと怖いところだ。
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