第17話 滑稽な『劇』の幕が上がる
その後、セシリアたちは幾つかの世間話をした。
その中には未知の領域・『学校』についてのあれこれも含まれていた。
セシリアにとっては実に有用な情報だ。
たまに訪れる遊撃の存在があるお陰で、色々な人と話をする事が出来、聞けた話はそのどれもが面白かった。
例えば学校内で行われる年間行事について聞くと、行事の内容やその運営方法等の表側の情報だけでは無く、彼らは裏方としての苦労話や突発的なトラブル発生について教えてくれる。
あの時はヤバかった。
あれは笑った。
そんな会話を聞いていると、2年後には訪れる貴族の義務も『面倒』ばかりではないのかもしれないと思えた。
そんなこんなで、この場所での時間は実に有意義だった。
しかしそんな時間は、唐突に終わりを告げたのだ。
とある不躾な声によって。
「おい、お前っ!!」
明らかな不機嫌さが乗ったその声には、確かに聞き覚えがあった。
主語はなかったが、その声がいったい誰に対して向けられたのかという事は、この場にいた誰もが分かった事だろう。
『招かれざる客』という言葉は、きっとこういう人の為に在るんだろう。
思わす内心でそんな悪態をついてしまうくらい、その声はこの場所にひどく似つかわしくなくて。
(―― もう少し待ってくれれば良かったのに)
そんな名残惜しさがセシリアの後ろ髪を引く。
しかし、いつまでもその余韻に浸ってはいられない。
「……何でしょうか? クラウン様」
そう言いながら当人へと視線を移した時、セシリアの表情からは、つい先ほどまでの朗らさが全て消え失せていた。
社交の仮面フル装備のセシリアと、『招かれざる客』の視線がかち合う。
正しくそれは、滑稽な『劇』の幕が上がった瞬間だった。
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