第13話 面白そうなコミュニティー
セシリアが次に訪れた先にあったのは、とある子供達のコミュニティーだった。
とは言っても、流石にセシリアと同年代の子達はその中には居ない。
居るのは2〜5歳ほど年上の子達である。
2〜5歳上となると、年齢的でいう所の12〜15歳だ。
丁度貴族達が通うことを義務づられた『学校』在学中の年齢にあたる。
「この頃になると子供達は皆一様に、社交の大切さを痛感し始める」というのは先日兄・キリルから聞いた話だったが、どうやらそれは事実の様だった。
適度に散らばっている大人達とは違い、子供達は何故かみんな会場の一角に集まり、その上で幾つものコミュニティーを作っていた。
どうやらそれぞれに話の花を咲かせている様だが、大人達よりもぎこちなく社交の真似事をする姿が随所に見受けられる。
『学校』への入学まではまるで社交に興味のなかった子供達が、入学した途端に社交に勤しみだすのは一体何故か。
その答えは簡単だ。
学校生活というものが集団行動だからである。
入学前は、親に連れられてくる子供達の中から好きな相手を選んで遊んでいれば事足りた。
だから親の真似事よりも目の前の楽しさ優先でいられた。
遊び相手も、家同士で仲の良い者、同じ派閥の者、気の合う者を自分たちで選び、その中でのやりとりだけあれば、それで十分だった。
しかし学校に通い始めるとそれも変わってくる。
親元から離れ、子供達は要所要所で互いに協力しなければならなくなる。
時には特段仲が良い訳ではない相手とも、共同作業をする必要性が出てくるのだ。
そうなって初めて、子供達は今まで積み上げてきた物の、周りとの差を明確に感じる事になる。
『仲が悪い』という相手の数は、案外少ない。
しかし『顔は知っているが殆ど話した事がない』者の人数は意外と多い。
そう、気が付くのだ。
その事に気がつく時期はまちまちだが、気づけば皆一様に焦るのは同じである。
そしてその結果が、今の目の前のぎこちない真似事の正体だ。
「顔の広さは、一種の武器だよ」
とは、過去のキリルの言だ。
マリーシアも
「社交の開始は10歳だというのに、2年もの間皆さん一体何をしているのか」
と呆れ気味に言っていた。
しかしその後に、こんな言葉のオマケ付きである。
「入学後に自分の怠慢を自覚して慌て始めた時が好機です。もしも何か同年代の方との交渉事がしたい時は、この機を狙えば簡単ですよ」
そう言って、マリーシアはコロコロと笑った。
しかしその実、目は全く笑っていなかったし言葉はひどく辛辣である。
どちらかと言えば良いカモを見つけた時の目だったから、マリーシア自身その手で見事に幾つかの実績を上げたのだろう事が推察されのだが。
(あのお姉様を敵に回すなんて事、絶対にしたくない)
妹にそう思わせるには十分な笑顔だっただろう。
まぁそんな訳で、12歳以上の子供達が今正に切磋琢磨しているのが、お茶会会場の中でもこの区域だった。
そしてそんな中でセシリアが探すのは、過去の怠慢という自業自得に焦る不特定多数ではなく、一部のまともな、きちんと練習台として相応しい集団である。
大人顔負けとは言わなくても、ある程度の社交は出来ているコミュニティー。
それが今回のセシリアの中の選定基準だった。
そしてそのコミュニティーは、すぐに見つける事ができた。
(……あそこだけ、明らかに違う)
一目見てそうと分かるくらいに、周りと格別して安定した交流が成されているソレを、セシリアは注視する。
子供達の中でも、比較的年齢層が高そうなコミュニティー。
そしてその顔ぶれは。
(……面白い)
そんな気持ちがセシリアに最終決定を下した。
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