第2話 クレアリンゼの略式・お茶会講座
そして「まずは」と口を開く。
「今日のお茶会は出席者も多いようだから、純粋なお茶会というより『そういう名前のパーティーだ』と思った方が良いと思うわ」
そんなクレアリンゼの言葉に、セシリアがコクリと頷く。
純粋なお茶会では、基本的に席は決まっているし、立って歩いたりはしない。
それは初歩的なマナーの一つである。
対してパーティーとなると、交流のための席移動はOKだ。
そして立ち話も、基本的に「良し」とされる。
しかし挨拶の際には必ず一度起立する必要がある。
この様に、形式によって守るべきマナーが微妙に異なるのが社交場の面倒なところだ。
(形式によるマナーの違いは全部頭に入ってるし、会場に着けばどの形式で行われる社交かは分かっただろうけど)
それでも事前に知っていれば、慌てずに済む。
ソレについてはクレアリンゼに感謝すべきだろう。
「それと、貴族の社交場では主催者側の方が頃合いを見て招待客達に挨拶回りをします。私達の番が終わるまでは、きちんと位置が把握出来た方が良いでしょうね」
今度の声は、どちらかというと確認……というか、意思のすり合わせに近い。
彼女の声に、セシリアは頷いて『同意』を示す。
「貴方と同年代の子は、おそらく社交開始早々に庭へと遊びに行ってしまうでしょう。しかし折角の社交の場です。無駄にする手はありませんよ?」
前にも言いましたが、今日の社交は実に効率がいいですから。
そんな彼女の言に、セシリアは更に頷いた。
すると「貴方の年で真剣に社交をしている子はほぼ居ないでしょうから目立つとは思いますが」と言いながら、クレアリンゼがほのほのと笑う。
言葉とは裏腹に、その顔は「目立つのは、むしろ顔を売るチャンスだ」などと思っていそうだ。
確かに、悪目立ちでなければ注目を集めることは良い事だ。
だって社交場とは、顔と名前を打ってナンボなのだから。
「貴方が相手に粗相するなんて事はないでしょうしね」
と安心顔で言う。
そして。
「後は、そうね……キリルやマリーシアと同年代の子達の話を聞いてみるのも、中々面白いかもしれませんよ?」
そんな言葉に、セシリアは「なるほど」と独り言ちる。
今の今まで社交相手と言われて連想していたのは、成人後の大人たちだった。
しかし少し年上の子達と今の内からコミュニケーションを取っておくのも良いかもしれない。
そう思った時だった。
(あぁ、そう言えばアレはきいておかなくちゃな)
ふと聞きたかった事を思い出して、セシリアが口を開く。
「他の参加者への挨拶はどうされますか?」
先日の王城パーティーで挨拶をした人がもし今回もさんかしていれば、今回も挨拶をしておこうと思っている。
しかし。
「もし『この方にも』という方が居らっしゃれば教えて欲しいのです」
そんなセシリアの問いに、クレアリンゼは少しかんがえるそぶりを見せた。
そして「そうね……」と答えてくれる。
「今はパッと思い付かないけれど、もしもそういう方がいらした時はポーラに呼びに行かせる事にしましょう」
「分かりました」
そういったセシリアのしっかりとした肯首を確認すると、クレアリンゼは視線をその隣へとずらす。
そこに居るのは、ゼルゼンだ。
「という事ですので、なるべく見えやすい所に居る事。もしもセシリアがこちらから見えにくい場所に居る場合は、ゼルゼン。貴方が代わりの目印になるのですよ?」
「かしこまりました、奥様」
ゼルゼンの執事然とした返事に、クレアリンゼが満足げに「よろしい」と頷き返す。
そして。
「……あぁ、それと」
忘れる所だったわ。
そう言いながら、こう言葉を続けた。
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